第437回 大阪眼科集談会 その5 (1228) 「低濃度アトロピン点眼による近視進行抑制」

第437回 大阪眼科集談会 その5 (1228)  「低濃度アトロピン点眼による近視進行抑制」_f0088231_17323081.jpg

伊根の船宿


<特別講演> 

「低濃度アトロピン点眼による近視進行抑制」

稗 田   牧 先生(京都府立医科大学)

 

アトロピンの薬理作用:アセチルコリンのムスカリン受容体を競合的阻害して、散瞳・調節麻痺、心拍数増大・・・このアトロピンの点眼で近視進行を止めることが可能!大規模スタデイ⇒

ATOM612歳の子供に、1%アトロピン点眼(眠前1回)を2年間続けるという・・ものすごいスタデイだが、ほぼ完全に近視抑制可能。近視度数も増えなければ、眼軸も延長しない。ただ点眼中止するとリバウンドして、その後1-2年で元の木阿弥?

ATOM0.5%、0.1%、0.01%と3種類の濃度のアトロピン点眼でスタデイ。濃度依存性に近視抑制するが、その効果は少し弱い。ただ0.01%でも、生食点眼と比べると明らかに抑制効果(+)で、この濃度ならリバウンドもない。抑制効果は50%程度で、眼軸長抑制効果はない?

COMET:近視は、68歳で発症して、156歳まで年間0.5D進行

 

昨年2月までの世界中の近視抑制スタデイの論文を評価。5000本の論文を選別して、41のスタデイと74の進行中の研究を評価。(※フォレストプロット)

①低矯正と完全矯正の比較では、完全矯正の方が近視抑制効果(+)。そうでない論文もあるが・・・

②単焦点眼鏡と多焦点眼鏡の比較。効果は弱いが多焦点の方が抑制効果(+)

③コンタクトレンズと眼鏡の比較は、効果ばらつきあり。評価できない

④オルソKと眼鏡の比較は、オルソKが近視(眼軸延長)抑制効果明らか。

アトロピンは近視抑制効果明瞭

ピレンゼピン・サイプレジンも抑制効果あり。

 

近視発生メカニズム

①網膜のボケ像が眼軸延長を・・(幼若サルの瞼瞼縫合)。※サルの種類によって異なる・・

②ひよこの実験:一部視野制限すれば、対応部位のみ眼軸延長・・。遮蔽程度が強くなると、より眼軸が延長する。

※幼い頃に角膜混濁をきたす疾患を患ったヒトの眼底に高度近視変化を見ることはしばしばありますね。

③ボケ像は、遠視性ボケ像が原因に・・

④近業の時の調節ラグ(遠視性ボケ)が原因なら遠近両用眼鏡が有効の筈・・・・と思いきや意外と効果は小さい。

⑤後極部だけじゃなく、軸外の周辺部でのボケ像も関与⇒それを考慮したのが近視進行予防眼鏡

軸外屈折が遠視になるのは、近視眼だけ。

以上から、近視進行予防に効果があると確認されているのは、1)オルソK2)低濃度アトロピン、3)軸外屈折を考慮した(周辺度数付加)ソフトコンタクトレンズ

ATOM-J(現在論文投稿中らしい・・)

0.01%アトロピン点眼眠前1回を2年間。全国7施設で171例が登録。一応、近視進行は抑制されて、眼軸延長も小さくなったが・・・結果の数値だけみると僅か?ただ、サブグループ解析で、暗所瞳孔経が小さい(<7.1mm)と有効。

※現時点では未承認薬なので、勝手に処方すると薬事法に触れます。点眼してみて、瞳孔経が小さければやってみたいけど・・

 

LAMP Study( Low-Concentration Atropinefor Myopia Progression)

LAMP10.050.250.01%のアトロピン点眼の比較では、0.05が一番効果あり

LAMP20.050.250.01%のアトロピン点眼を割り振り、2年目プラセボは0.05%へチェンジ。やはり0.05が最も有効。0.01%の近視進行を半分にできる。ただ0.05%は2年目の方が効果弱い。

 

非常に大きな期待をもたせた低濃度アトロピン点眼だが、0.01だと効果あるものの、その程度は僅かだった。0.05なら、少し期待できる?副作用は?

 

近視による失明(一番多い原因)

 近視性黄斑変性症(MMD Myopic macular degeneration):近視性網脈絡膜萎縮、黄斑円孔、網膜剥離・・・。関係論文のメタ解析では6D以上になりとリスク増大。剥離・白内障・緑内障なども含め、眼軸延長により、明らかに視覚障害リスク増大している。

l  https://iovs.arvojournals.org/article.aspx?articleid=2765517

 

小学校3年以降に進行する近視が、後部ぶどう腫を伴うような病的近視になることだけは避けたい。発症年齢が早いほど、強い近視になりやすい。5歳以下ならハイリスク?

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27350183/

何とか病的近視を予防するために何ができる?小学生で25mm以上の眼軸の子供は、26.5以上になりやすい。25mm以上は何らかの介入が必要。(「Kyoto ChildhoodRefraction Error Study (KCRS)」)

或いは、近視全体の人口をへらす努力が必要。かつて近視人口が激減したのは、第二次世界大戦を含む10年間。この間、近業どころじゃなかったから?再度激減させるのが不可能ではない?環境をそこまで激変させることが可能かね。


by takeuchi-ganka | 2020-08-19 17:33 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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