2020年 11月 01日
第438回 大阪眼科集談会 その3 (1237)
<ミニレクチャー>
「糖尿病黄斑症」 山田晴彦(関西医科大学)
糖尿病の治療の進歩、糖尿病網膜症治療の進歩によって、1970年代の失明原因トップから3位になったらしい。それでも男性ではトップで、年間3000人失明らしい・・・・。レクチャーのテーマは糖尿病網膜症の中の黄斑症。これがあると、単純型でも視力が低下してしまい、なかなか戻らないことも多い。
病態生理は、血管内皮細胞の基底膜にAGEが蓄積して周皮細胞が離脱して、バリアが破綻して水漏れ・・。血栓ができて血管閉塞が起こると、虚血となってVEGFが産生されると、本格的なバリア破綻に・・。
治療:
①網膜光凝固:様々な方法があるが、有効なのは微小血管瘤があって、そこからの漏出が原因であることが明らかな場合に、そこをピンポイントで光凝固する方法。ただし、その後のAtrophic Creepに注意。
②ステロイドのテノン嚢下注射(STTA):ポジションは微妙。最初だけちょっと効く(20%)。抗VEGFが効かなくなったケースで少し効く?
③硝子体手術:海外よりも日本でよく行われると。半年以上かかって、改善50%ほど・・微妙な成績。
④抗VEGF療法:2008年以降の主流となった治療。簡便な手技だが、再発が多く、何度も行う必要があり、最終的に高額にもなり、年3回以上するなら、手術の方が安価かも。また脳卒中のリスクのある患者には使えない。
【大阪府医師会指定学校医制度認定事業】
<特別講演>
「子どものロービジョンケア」
仁科幸子先生(国立成育医療研究センター)
子供のロービジョンケアにおける眼科医の役割
1. 早期診断して、家族へ説明し理解を得る。
2. 最新機器での正確な評価
3. 屈折矯正をして、感受性期には保有視機能を伸ばせるだけ伸ばす
4. 年齢に応じた病像の変化の診断、その説明
5. 福祉・療育・教育機関との連携
6. 患者本人への説明・サポート
7. 最新情報の提供
大人相手ではなく、そう簡単に十分な検査が行える状況でない子どもが相手なので、どれ一つとっても、簡単な事ではない。専門知識・技術をもったスタッフが充実していて、その関連施設・機関との連携も十分に行われているような場所の必要性を再認識。
子供の視覚障害の多くは先天性で、0歳発生している。(先天素因・ROPが原因の多くを占め、前眼部より、網膜・視神経の障害が多い)。そうなると、0歳児の異常を見逃さず、専門施設に送れるかがポイントになるのかもしれない。3歳時検診では遅い・・(若干非現実的?)。残念ながらロービジョンケアが必要になった場合、①その家族に対する支援は非常に重要で、②患者の障害の程度の評価をしっかり行ってケアをしていくことになる。原因疾患としては、先天異常(FEVR・小眼球・白内障・視神経低形成・・・)やROPが多いが、原因・重症度は多種多様で、個別に対応を考える必要性あり。また35%の患者で、重複障害がある(眼だけじゃない)。ケア内容は年齢によって異なり、大きくなってくると、補助具選定・教育就学相談が重要になってくる。
症例 3歳女児 CHARGE症候群 視神経・網脈絡膜コロボーマで、視機能期待できそうにないと思われるが、OCTでは黄斑が何とか形成されているようで、アイパッチと眼鏡装用で(0.8)まで出た・・。
※しっかり検査して、視機能がありそうなら頑張ることが必要。
症例 2歳11M男児 FEVRで高度近視・視神経蒼白。ERG反応あるものの黄斑局所ERGは消失。ただ、近見に合わせた眼鏡装用で、何とか(0.4)/(0.2)まで・・
※保有視機能の評価が必要で、OCT(手持ちOCT)、黄斑局所ERGなど
※黄斑低形成の評価。先天無虹彩・眼白皮症など様々な眼疾患に伴うらしいが、OCTがあればその程度が確認できる。
症例 8ヶ月女児 レーバー先天盲 後極部網膜変性、ERGも非常に悪いけど、近見に合わせた眼鏡装用・遮光眼鏡で、何とか(0.1)/(0.1)まで・・。高度求心性視野狭窄。補装具は、遮光眼鏡、拡大鏡、CCTVなど・・。視覚特別支援学校と連携へ。
※レーバー先天盲(Leber Congenital Amaurosis :LCA)の遺伝子治療が開始:RPE65両対立遺伝子変異患者に対し、Luxturna(voretigene neparvovec-rzyl:アデノ随伴ウイルスベクターベース遺伝子療法)を直接網膜下へ投与する遺伝子治療で、効果(+)。ただ、日本人においては、LCAの原因としてRPE65異常は稀。
https://www.mixonline.jp/tabid55.html?artid=59422
⇒ただ、この治療は両眼で1億円?
近視を伴う小眼球・扁平角膜・先天網膜分離・・・。遠視を伴う球状角膜・FEVR・ROP・・・などがあっても、諦めたりしないで、保有視機能を伸ばす為に、まず積極的に屈折矯正眼鏡を。遠視はゼロ歳から、近視は2歳から矯正始める。先天性の障害があっても、しっかり屈折異常を検出して矯正することが重要。通常の弱視治療と同様に、感受性期には頑張って弱視治療を行う。非常に大変だと思うが、障害を持った乳幼児の屈折異常の程度を正確に把握することが重要。通常の弱視治療同様に、感受性期の間に弱視治療を頑張る。
※使用補助具としては、遮光眼鏡・拡大鏡・単眼鏡など
アイサポート教育相談:視覚特別支援学校のコーディネーターと連携が重要。
症例:両眼矯正視力0.1以下のレーバー先天盲に5歳からアイサポート⇒絵本読み聞かせ、近づけてでも見る工夫。特別支援学校との連携・・など。
※環境を整えたり、身体障害者手帳を発行したり、視覚特別支援学校と連携をとったりしながら、継続してサポートを行う。
早期に正確な診断を行って、家族にも十分な説明をして、感受性期には弱視治療をしっかり行い、その後、療育・教育機関との連携を図る・・・。最新情報の提供も。