2020年 12月 15日
第34回日本緑内障学会(オンデマンド)シンポジウム12-2 (1240)
S12-3 点眼以外の薬物投与治療法の未来
[演者] 柏木 賢治:1
1:山梨大
薬物治療は緑内障治療の中核。非常に多くの点眼が存在する。近い将来(?)Sepetaprost(FP+EP3受容体作動薬)ってのも登場するらしい?
高齢者の緑内障患者の増加。高齢者の身体的特徴だが、高齢になると点眼が徐々にうまくできなくなる・・。頭部を後屈できない。うまく手が使えない。認知症の増加・・・など。長期の点眼継続は意外と困難。点眼以外の治療アプローチ?様々な投薬ルートあり。キャリアも様々なものが考えられている。(実用的とは思えないものも多いけど・・・)
①コンタクトレンズ型DDS
②パンクタルプラグを使用(OTX-TP) ※あまり有効でなかった。
③円蓋部挿入型DDS 異物感・脱落・流涙・・
④結膜下注射(リポソーム包埋ラタノプロスト)
⑤ロッド型前房留置インプラント(トラボプロスト)
⑥ロッド型前房留置インプラント(ビマトプロスト)(ARTEMIS 1 study) 4-6ヶ月有効で、点眼と同レベルの眼圧下降。12Wまで、チモロールに非劣勢。FDA承認されたが課題多そう・・
https://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(20)30555-8/fulltext
※一般論として、薬物放出のコントロール、有効期限、安全性、副作用、コスト・・・など課題多い。
その他の治療として、手術と薬物のhybrid治療
⑦脈絡膜上腔にドレナージインプラント(MMC又はパクリタキシル含有)
⑧濾過路インプラント(パクリタキシルコーティング)
⑨iPS細胞線維柱帯細胞による隅角再生治療
まだまだだが、今後点眼だけでない、様々な治療が出てくるに違いない・・
S12-4 急性緑内障発作後の神経保護治療の可能性
[演者] 津田 聡:1
1:東北大
①,緑内障治療における課題と神経保護治療
②,急性緑内障発作に対する神経保護治療
③,緑内障の神経保護治療の課題と対応
緑内障治療は、眼圧を下げることが唯一の治療だったし、眼圧を下げることで、その進行を抑制できることは明らかになっているのだが、その一方で、いくら眼圧を下げても進行する症例がある。この部分にどう対応するのか。そこに視神経保護治療の需要はどの程度あるのだろうか。
緑内障の急性発作の場合、急激な眼圧上昇によるダメージと組織の虚血が生じ、眼圧下降すると虚血後再灌流(による障害?)が起こる。急性発作が緩解された後も、視神経障害が進行することが問題となっている。発作が解除された後も、視野欠損・NFLの減少、cpRNFL,GCCも減少し、これらは、発作持続時間に影響するらしい。発作で、篩状板が深くなり(後方偏位)、これがその後の視神経障害・進行性の血流障害に関わるのだと。
LoGTSで、ブリモニジンには、視野進行抑制効果が、チモロールよりあることが示された。ブリモニジンに神経保護効果あるらしい。東北大でも同様の効果を確認した。つまりチモロールと眼圧下降同等でも、0.1%ブリモニジンの方が視野進行抑制効果あり。ラットの視神経切断実験では、BDNF(神経保護効果を持つことで知られる脳由来神経栄養因子)発現を介した神経保護作用らしい。
急性発作後の視神経障害に対する神経保護効果:
①ブリモニジンは東北大でのスタデイでは、チモロールと差がなかった。効果(-)?
②MSの再発予防薬のCo-1:これも視野進行抑制効果(-)
③カルパイン阻害薬(SNJ-1945):現在CRAOに対する神経保護薬として治験中
https://www.crieto.hosp.tohoku.ac.jp/release/press/7115.html
③VCPmodulator (KUS121):この薬剤もCRAOの神経保護薬として治験中で、一応有効らしい・・
この中で、将来APAC後の視神経障害の神経保護効果のある薬剤が生まれるかも・・
塩酸メマンチン:アルツハイマー治療薬として使われていて、緑内障神経保護薬としても期待されて大規模スタデイが行われたが、効果はなかった。これは、緑内障が多因子疾患で、グルタミン酸障害だけではないから・・・。緑内障に関わる因子として、①加齢②近視③家族歴(遺伝子)④生活週間⑤高眼圧⑥血流(虚血・乳頭出血)⑦酸化ストレス⑧角膜ヒステレシス⑨篩状板欠損・菲薄化など。
コンパニオン診断薬を用いたカルパイン阻害薬の開発:カルパイン活性検出蛍光プローブを投与することで、カルパインが活性化している患者を検出できる(動物実験では可能)。検出できたら、カルパイン阻害薬が有効・・・な筈?