NHKスペシャル 超近視時代 (1246)
2021年 01月 29日

影響力のあるNHKスペシャルという番組で、近視が取り上げられました。この世界の超大物眼科医が出演しているし、視能訓練士として知り合いのN君も一瞬出ていたので、何かと問題の多いNHKですが、好意的なスタンスで視聴しブログにまとめてみました。
今まで近視進行抑制に関する話を聞くたびに、その都度ブログにしてきました。最近のものはこの3つぐらいかな・・
https://takeganka.exblog.jp/31326952/
https://takeganka.exblog.jp/29969271/
https://takeganka.exblog.jp/14973512/
この番組で違和感を覚えたのは『眼軸近視』なる言葉。軸性近視ではなく、眼軸近視なんて、妙なネーミングを持ち出したのは何故なんでしょう。よりインパクがあるからでしょうか。
ある小学校での調査では、0.7未満 の児童が17%(2019)⇒23%(2020)と急激に増加したそうです(視力低下の中身はブラックボックスですが・・)。番組ではある子供のメガネに注視している物まで距離を5秒間ごとに測定する装置を装着し、近業の程度・時間・割合を調査すると、近業が一番多く集中しているのは、学校ではなく、帰宅後のゲーム・宿題・読書の時でした。先進国の現代人のライフスタイルは、子供から大人まで近業主体でしょう。近視が発生する幼小児期においても近業時間が増加しているのは避けられない?
Oculus社のMyopiaMasterという器械を用いた検診のようでした。この器械を使うと
l 1台でオートレフ、ケラトメーター、眼軸長の測定が可能
l 年齢別正常眼データとの比較、進行予測
l トレンド解析により治療効果の可視化
などが可能なようですが、要するにレフケラ+眼軸長測定というありふれた器械に、データベースとの解析がプラスになった感じです。
https://www.ophthalmic.nsl.nikon.com/products/myopia_master/
これ用いて小学校で眼軸測定を含む検診を行い、眼軸延長している子供の割合が増加を調査。番組では、ここで、近視発生メカニズムとして、近業時の調節ラグ(遠視性ボケ)をとり上げています。(もしこれが主原因なら遠近両用眼鏡がもっと有効の筈だが、その効果は小さいことが証明されたのでは・・?)
また、1年生23.5、2年生40.4、3年生52.1、4年生64.6、5年生70.5、6年生78.3%・・と眼軸近視が急激に増加としているらしい(よくわからない定義だったが(眼軸長/角膜曲率半径)>2.99の割合のようです)。チョット論文検索すると、『角膜曲率半径は1970年代生まれまでは眼軸長の伸長とともにフラット化がみられたが、それ以降の年代はみられなかった・・』とする論文があるが、このデータを裏付けているのかも・・。昔の近視と、現代の近業時間の急増がもたらす眼軸延長(近視)は、ちょっと異なるのかもしれません。
1950~1990年代生まれの世代間の眼球形状の比較(原著論文)
Author:深澤 真美(道玄坂糸井眼科医院), 吉尾彩, 上田 栄子, 一ノ瀬 千絵, 深澤 広愛, 田川 玲聖, 渡辺有希子, 糸井 素純 Source: 日本コンタクトレンズ学会誌 (0374-9851)61巻4号Page149-153(2019.12)
番組中、視力低下(0.7未満)23%だが、実は眼軸近視55%もあると、ちょっと簡単には理解できないデータが提示されました。番組内では眼軸近視が見逃されている・・・・と指摘していましたが、そもそも学校の視力検査は、あまり信頼できないし、視力低下の全ての原因が近視ってわけでもないし、比較する意味を感じないような・・・。問題は、現代のライフスタイルにおいて、近業時間の多さはどうしようもない・・というか、近視増加は目的にかなった身体の対応と言えなくもないのでは?私がいつも楽しんでいる珈琲豆の産地ンゴロンゴロ(タンザニア)の子供と東京の子供の近業時間は大きく異なるはずです。
また成人の近視について。以前は大人になったら止まると思われていた近視進行だが、意外に眼軸延長は続いている?一般的には20-25歳で止まるはずだが・。(この話はこれで終わり)
再び調節ラグの話に。近業での調節ラグが眼軸延長の引き金なのは間違いない。連続20分、2時間/日以上の近業は危ないと・・(大野教授)。
2,メガネの問題
この話は特別な問題ではなく、メガネ処方の一般常識の気がする。
※調節機能測定装置が紹介され、これで、調節力に過剰な負荷がかかっていることを画像表示可能。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjvissci/32/2/32_32.41/_pdf/-char/en
過矯正のメガネは調節に過剰な負荷を与え、それが調節ラグを招き、子供なら眼軸延長を招き、成人なら強い眼精疲労の原因となるので、適正な眼鏡を処方しましょう・・って話のようですが、そんなに過矯正の眼鏡を装用している人が多いのだろうか・・。
3,近視が万病の元
よくありがちな脅し文句のような気もするけど、緑内障で失明に至る患者さんの中に眼軸延長が大きく関わっているケースがある?それって、緑内障性視神経障害(GON)+近視性視神経障害(MON)じゃないの?当然重なれば予後不良ですよね。それに高度近視によるMONと緑内障によるGONが合併している場合に、GONの程度評価は非常に難しい。提示された症例は眼軸33mmの患者さん。大きく視野欠損しているが、その異常のどの部分がGONによるものかどうかなんて、判断可能なのだろうか?
https://www.nhk.or.jp/kenko/atc_1086.html
近視と認知症も関係あり?ここで、なんと今や雲の上の人となった緒方先生登場^^; 認知症と視力不良の関係を調べてはるようで、視力が悪いと認知症の割合増加するらしいです・・・。ボケないように適切な眼鏡つくりましょうね。また、高度近視があると、白内障 5.5倍、緑内障3.3倍、そして網膜剥離21.5倍・・・・恐ろしい?よく使われる脅し文句?
パソコン・ゲーム機・タブレットは普及し、今スマートフォンが急増しつつある。これに何か対策あるのだろうか?とりわけスマホは過剰な近業を強いることになるはず。中高年は年齢に応じた(調節力の低下を考慮した)眼鏡(必要があれば累進屈折力レンズ)を使用すればいい訳で、これは超近視時代とは関係のない、中高年眼鏡常識であって、特別な器械が必要なわけじゃないです。ただ、スマホ使用年齢が下がってくると、過剰な近業が近視発生の強烈な引き金になる筈・・。
近視進行抑制について
1,アトロピン点眼は有名になったが、ATOM1では副作用が大きかったし、ATOM2も0.01%の抑制効果は50%程度で、眼軸抑制効果はないのでは?日本のATOM-Jはまだ結果発表されてないし、LAMPでは0.05%が有望など・・まだまだ、適応や至適濃度も定まってない気がするのだが、もう始めていいのだろうか?薬事法上の問題はないのだろうか。女優さんに自分の子供に点眼している・・なんて言わせてたけど、いいのかなあ・・・
2,多焦点SCLやオルソケラトロジー
オルソケラトロジーに眼軸延長抑制効果はあるらしいが、この『将来近視になりそうな子供』という膨大な数を対象に、オルソケラトロジーをやれば、新たな大きな問題が発生しないだろうか・・。
それ以外に近視進行抑制のためにできることとして、
1,屋外活動をして、光を浴びる事(1000ルクス2時間以上)が重要らしい・・・・。ドーパミン分泌を促すから?台湾のこの活動が奏功して、近視人口が遂に減少に転じたらしい?台湾てつくづく素晴らしい国だと思う。
2,近業時間抑制
ゲームをするなら大画面で行い、少し距離をおいてする。
3つの20?近業を20分したら、20フィート(6m)遠くを見る。近業は2時間/日以内に・・
※簡単に言えば、子供は屋外でしっかり遊んで、スマホや読書は休み休みやりましょう・・