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第442回 大阪眼科集談会 その4 特別講演 (1270)

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最近カメラマンが多いなあと思ったらこの鳥の仕業(^^)


<特別講演> 

「流出路研究の立場から考えるこれからの緑内障薬物治療」  本庄恵 先生(東京大学)

https://takeganka.exblog.jp/23545645/ 

0、房水流出路(とROCK阻害薬)研究

この話は、この先生のお箱?

房水流出路はヒトの場合、主経路(線維柱帯経由)が80-90%で、副経路(ぶどう膜強膜経由)が10%ほど。POAGの眼圧上昇は、主経路抵抗上昇(巨大空胞減少、線維柱帯の細胞外マトリックス上昇、線維柱帯細胞減少、線維柱帯間隙減少・・・・)が原因。この主経路に作用する世界初の薬剤がROCK阻害薬(グラナテック)。この薬剤は当初、線維柱帯細胞骨格を修飾。細胞外マトリックスの相互作用に関わると考えていた。

Rho/ROCKシグナル活性化で、細胞外マトリックス増加し、眼圧上昇する(緑内障モデル作成可能)。そしてROCK阻害で、細胞外マトリックス減少。ヒトにおいても、ROCK阻害薬で眼圧下降するが、長期に使用していると(2年以上)更に眼圧下降するこれは初めて聞いた気がする。効きが悪くても、我慢して使うべきなのか・・・^^;。これは細胞外マトリックス減少効果なのかも? ROCK阻害薬は、①シュレム管内皮細胞、②線維柱帯細胞、③細胞外マトリックス、この3つに作用して、主経路流出抵抗下げる。①②は点眼してすぐ効果がでるが、③は数ヶ月後から徐々に

※例えばステロイド投与すると、線維柱帯細胞が筋線維芽細胞様になり、細胞外マトリックス増加

POAGでは房水のTGFβ2値が高いが、PEや続発では高くない。そこで(何故かわからないけど)LPAに注目してみた。これはRhoアゴニストのひとつ。LPAはすぐに消えて測定困難なので、産生酵素であるATXを調べたら、やはり上昇していて、同時にLPAも上昇していたらしい・・。しかも眼圧が高いと、その数値も高い。このATXは、線維柱帯細胞にデキサメタゾン刺激を与えると産生。

※「脂質メディエーターリゾホスファチジン酸(LPA)の産生酵素であるオートタキシン(ATX)がLPAを産生するメカニズムを分子レベルで解明」 ⇒ https://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/press/2011/02.html  

※ https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-19K09965/ 

LPA⇒『多岐にわたる細胞応答を引き起こすことで、正常な発生過程における血管形成に必須な酵素タンパク質』 緑内障においては、線維柱帯の線維化に関与するLPAに注目された。

1,今後の高齢化社会に向けての緑内障診療

眼圧上昇機序と流出路研究の立場から考察

まず緑内障の進行速度を把握。余命を頭において、超高齢化社会において、患者さんが最後まで不自由のない生活を遅れるかどうかを考慮して、眼圧をコントロールしていくことが重要(建前のような本音のような・・・・・・)。50歳女性なら、平均余命38年以上。中でも、PEは進行速度が速いことが多くて、要注意。次に速いのが眼圧高めのPOAG。それとNTGでも治療開始時に、6B以上進行している症例は、要注意(特に若い人)。日本人無治療NTGの平均進行速度は-0.33dB/Y。つまり進まない人も多いが、進行が速い人もいることに注意が必要。0.5dB/Yでも障害部位によっては(年齢によっては)、要注意。

 OCTの普及によって、極早期から治療開始される機会が増加している。例えば、30歳で発見されたら、100歳まで70年間点眼して大丈夫なのだろうか・・・(という薬物治療に対する根本的な疑問が提示)。また、どの程度眼圧を下げるべきなのか?1mmHgでも下げれば、それだけレスキューできるのだとする報告もあるが、そのために失うものはないのだろうか・・・。高眼圧・近視・高齢・家族歴・DH・薄い角膜・・・は要注意。

 加齢とともに眼圧は減少することが多いが、緑内障眼では上昇することが多い。それじゃ、ベースラインも変わってくる訳で、数年に1回取り直すことが必要なのだろうか?少なくとも5年に一度は??房水流出流量、隅角の加齢性変化は?長期にわたる点眼の影響は?

※緑内障薬物治療を根本から混乱させてしまうような話^^;


 かつてレクトミー、ロトミーしかなかった緑内障手術だが、様々なMIGS、毛様体レーザー、SLKなどが普及してきたし、白内障手術だけでも、23mmHg下がる報告あり。白内障手術にMIGSを追加する機会が増えてきたが、注意すべきケースあり(例えば高度近視)。ロトミー(interno)は、SLTと同程度??ROCK阻害薬はSLTと同程度??ROCK阻害薬が有効な症例は、ロトミー効きやすい?360ロトミー後、ROCK阻害薬で眼圧下がる・・(これは集合管より後方にも薬が効いている証拠?)。

 ※BACの話:SPKは有名だが、線維柱帯には?実は、角膜上皮だけじゃなく、虹彩・線維柱帯・毛様体にもダメージあり?なるべく、BACが少なくなる組み合わせを・・

 ここで、再度ATXの話。ステロイドが線維柱帯からATXを産生させるので、MIGS術後はステロイドフリーにすべき?マウス、培養細胞においても、ステロイド+スクラッチで、ATX上昇。ヒトの術後でもステロイドで増えていたし眼圧スパイクも多かった? 線維柱帯を触る手術では、ステロイドしないほうが・・・・いいかもしれない。術後点眼もBACフリーがベターかもしれない・・。

 主経路を良好に保てるように努力する(流出路手術、SLKROCK阻害薬、ステロイド(-)BAC(-)・・・)。特に若いヒトにおいて・・。緑内障の治療は長期にわたるが、ケースによっては早めの介入(レーザー、流出路手術、濾過手術・・)が必要かもしれない。(うまく介入しないと取り返しがつかないことも多いでしょうがね)

 ROCK阻害薬の話再び。CMV陽性のポスナーシュロスマン症候群患者さんで、緑内障をきたしている場合、ATXTGFβ1が高く、特にATXは眼圧との相関があった。培養線維柱帯細胞にCMV感染させてみると、すぐATX増えてきて、あとでTGFβ1が増えてきて、これらはROCK阻害薬でキャンセル可能。ATXが関わる眼圧上昇には、ROCK阻害薬有効かも。つまりぶどう膜炎、ステロイド緑内障に有効な理由?
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7156668/ 

※ここで登場したCMV陽性PSSという用語に違和感が・・・・。CMV陽性なのにPSSなのか・・?

 角膜内皮にCMV感染させると角膜内皮障害が有名だが、この感染で上昇するTNFα上昇を抑え、内皮アポトーシスを抑制する効果がROCK阻害薬にある。

 ATX-LPAは眼圧をすぐに上げるが、TGFβ2はかなり後になって・・。メカニズムが異なるらしい。緑内障の種類によって異なる。病型診断に使えそう・・。

 TGFβ2とATXは互い影響し合う可能性。TGFβ2があれば、ATX低い・・・・

※基礎研究の話でほぼノックアウト状態・・・・^^;

2,緑内障薬物治療のアップデート

 主要6成分、配合剤を駆使しながら、治療。

1,副流出路促進:PG、α1、α2、αβ

2,房水産生抑制:β、αβ、α2、CAI

3,主経路促進:ROCK阻害EP2阻害

PAPDUES)に注意しながら治療:濾過手術成績悪い可能性、眼圧測りにくい・・・

でもファーストチョイスは、通常PG(或いはEP受容体作用薬)

セカンドチョイスは、下記からチョイス。

l 日中房水産生抑制⇒β(呼吸器・循環器系に対する影響が気になる)

l 夜間も房水産生抑制⇒CAI(イマイチ眼圧下降が弱い気がする)

l 神経保護⇒ブリモニジン(アレルギーで脱落症例が多い)

l 主経路⇒ROC阻害(やはり最後の手段になってしまう)

・・・

PG+β」+「CAI+ブリモニジン」で2ボトル4成分。これにROCK阻害加えると3ボトル5成分がフルメディケーション。

EP受容体作動薬(オミデテパグ)も、ROCK阻害薬と同じで、あとで流出路に効いてくることがあるので、反応悪くても、ちょっと長めにみて判断した方がいいのかもしれない。


by takeuchi-ganka | 2021-06-27 09:41 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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