SJS から霰粒腫 (第4回大阪眼疾患セミナーから) (1239)
2022年 01月 31日

3,生体反応という視点:スチーブンスジョンソン症候群
長い長い前フリのあと、やっと眼の話に。
スチーブンスジョンソン症候群もサイトカインストームであると・・。この疾患の急性期において、涙液中に大量のサイトカインが出現する(IL-6, IL-8, MCP-1など)。したがって、ステロイドパルス療法が有効。何故そんなことが起きるのか。
眼表面の常在菌に対する炎症を制御する自然免疫機構
https://takeganka.exblog.jp/14262096/ ⇒10年以上前に聴いた自然免疫の話。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――
2010のスリーサム 眼表面上皮細胞の自然免疫 府立医大(上田)
・獲得免疫:抗原提示細胞が抗原提示 ⇒抗原特異的T細胞が誘導、Th1細胞は、マクロファージ、Killer細胞に指示、Th2はB細胞に指示を、そしてTh17も関与。
・自然免疫:マクロファージや樹状細胞などの免疫担当細胞は、病原体固有の構造(PAMPs:リポ多糖、リポ蛋白、核酸など)を認識するパターン認識受容体(PRRs)を持っていて、TLRはPRRsとして機能している。このTLRは、1-11まであり、1.2.5.6のように、細菌・原虫感染に関わっているもの、 3.7のようにウイルス感染に関わっているもの、4.9のようにその両方に関わっているものに分けられる。常に常在菌と接している角膜・結膜上皮における自然免疫は? 常在細菌(表ブ・アクネス)に対しては炎症が生じないので、制御する機構がある筈。
l TLR3 :dsRNA(virus) (⇒ds-RNAアナログのpoly(I:C))
l TLR4 :LPS(bacteria グラム陰性)
l TLR5 :Flagellin(bacteria 細菌の鞭毛)
スチーブンスジョンソン症候群においては、この自然免疫システムに異常をきたしている?常在細菌に対する異常な免疫応答が?
http://eye.sjs-ten.jp/doctor/research
http://eye.sjs-ten.jp/system/cms/files/files/000/000/109/original/dr_figure_09.png
⇒『感冒薬SJS発症とHLA-A*02:06の間に大変強い関連をみとめた』
⇒『発症素因がある人に、何らかの微生物感染が生じると、異常な自然免疫応答が生じて、その上に、感冒薬が加わって、異常な免疫応答がさらに助長され、SJSを発症する。』
4、細菌への生体反応という視点:マイボーム腺炎角膜上皮症、霰粒腫
ここで話は、やっと本題へ?
ここからが更に興味深い話に・・
1,眼サルコイドーシス
2,マイボーム腺炎角結膜上皮症、霰粒腫
まず、眼サルコイドーシス。サルコイドーシスとPアクネスとの関係は?病変部位(病巣・リンパ節)でPアクネスが検出されている。これがどこまで、この疾患の本質に関わっているのか?
「アレルギー性内因性感染症」という概念。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/10408488/
https://www.jmedj.co.jp/journal/paper/detail.php?page=1&id=13341 :サルコイドーシスにPアクネスが関与
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15948792/ :サルコイドーシスのぶどう膜炎にPアクネス(+)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/15948792/ :サルコイドーシスの網膜にもPアクネス(+)
血行性に運ばれたPアクネスが、肉芽腫を作り、ぶどう膜炎が発症するのなら、原因のPアクネスに対するアプローチがサルコイドーシスの治療にならないか?提示症例:66歳女性は、硝子体手術後、網膜に滲出斑散在していて。クラリスロマイシンを長期に内服することで消失した。1例だけ?
次にマイボーム腺炎角結膜上皮症
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S000293940500262X
https://takeganka.exblog.jp/29784232/
『マイボーム腺分泌低下・MG開口部周囲異常所見・MG開口部閉塞所見に加えて、マイボーム腺炎症所見(+)(炎症性MGD:霰粒腫・マイボーム腺炎)に関連した角膜病変をマイボーム腺炎角膜上皮症(MRKC: meibomitis-related keratoconjunctivitis)と呼ぶ。フリクテン型(角膜上に結節性細胞浸潤)と非フリクテン型(SPKのみ)。どちらもMGDの重症度と関連している。非フリクテン型は、高齢者にもみられ、その場合性差なし。フリクテン型は、圧倒的に若い女性に多く、原因はPアクネスに対する遅延型アレルギーとされている。高齢者は、ブ菌やCNS?』原因菌に対する治療(除菌)として、Pアクネスなら①フロモックス、②クラリスロマイシン、③ベストロンが効く可能性あり。提示された25歳のMRKCは、もう瘢痕病巣にしか見えないが、粘り強く長期に除菌治療を続けて、3ヶ月後にはかなりキレイな角膜に。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1542012415000038?via%3Dihub
マイボーム腺機能不全 ⇒ ①霰粒腫 ②マイボーム腺炎 ⇒ MRKC
※霰粒腫はマイボーム腺のmeibumがうっ滞して、異物反応が生じ、巨細胞を含む肉芽腫組織だが、Propionibacterium acnes抗体(PAB抗体)陽性のケースもある。霰粒腫には2種類ある?異物反応の場合と、Pアクネスが関与したTh1反応の場合がある。サルコイドーシスもMRKCもPアクネスが原因で、Pアクネスに対する直接のアプローチが有効なこともある?
※若者はPアクネスだが、高齢者は表皮ブ菌が原因。
※なかなか治らない霰粒腫。何度も何度も再発する霰粒腫には、Pアクネスと念頭において治療してみようかなあ・・・
※『Th1反応:Tリンパ球等の細胞が異物を攻撃する細胞性免疫反応。Th1細胞から産生され、免疫細胞の機能を調節する蛋白質のひとつであるインターフェロンγの産生を特徴とする。同じくサイトカインのひとつであるIL4の産生を特徴とするTh2反応とは排他的に生じる。』