2022年 04月 29日
ちょっと気になる疾患 その1 SLK (1249)

強い異物感を訴える中年女性。一見するとサイレントな眼。眼瞼にも結膜にも異常がなさそうで、眼脂も流涙もあまりないなのに異物感は強い。このような何も異常所見がないのに、異物感を訴えることは、よくある。やな感じだ・・^^; 異物もなければ、ドライアイもない、睫毛乱生もない・・・。何も異常ありませんね・・・と開き直ることもあるが。長い間開業医していると、困ることしばしばなので、これに関する記事を書いたことがある。
https://takeganka.exblog.jp/29795689/
https://takeganka.exblog.jp/29801985/
記事の中に、「軽微に見えるドライアイでも、慢性的な角膜表面への障害によって、神経密度の低下や走行異常があり、痛みの侵害受容器の感受性は興奮が継続しているだけでなく、中枢側も過剰興奮状態が継続している。『眼がゴロゴロする、乾く、くしゃくしゃする、痛い・・・・』ってのに、何も異常がないドライアイ(?)に出会ったら、非常に軽微でも、ドライアイの治療を継続しつつ、このメカニズムについてお話をするしかない?しっかり治療すれば、侵害受容器の感受性興奮はおさまる?」・・こんなことを書いた事がある。
そんなことを思いながら、そっと瞼を挙げてみると、時々上方結膜にCPS、角膜上方にSPKが併存(両眼とも・・)。結膜の充血・肥厚が明瞭であれば上方輪部角結膜炎SLK (Superior Limbic Keratoconjunctivitis)の診断は容易だが、そうでなければ、「何これ?」って感じがする。昔、同僚だったD先生が発表された記憶があるが、もう30年以上前のことだ。当時は、謎の疾患ってイメージだった。
https://webeye.ophth.uiowa.edu/eyeforum/cases-i/case245/Fig1c-LRG.jpg
https://webeye.ophth.uiowa.edu/eyeforum/cases-i/case245/Fig1d-LRG.jpg
※フルオレセインよりは、リサミングリーンの方がわかりやすいかも。
この謎の疾患の原因は、ホルモン異常・ビタミンA欠乏・アレルギー・自己免疫疾患・・・などいろいろ言われたが、今となっては、結膜が緩んで、瞬目時に瞼結膜との間の摩擦が原因と言われている。なんや・・・って感じ。SLK以外何も異常がないこともあれば、ドライアイや瞬目異常が合併していることもある。
摩擦が原因とわかってしまったら、治療は、それを軽減することや、結果としての炎症を抑えるしかないわけで、人工涙液・ヒアルロン酸・ジクアス・ムコスタなどと低力価のステロイド点眼。重症例ではコンタクトレンズや結膜弛緩の手術することもある(と書いている本もある)。