第448回大阪眼科集談会 特別講演 その1「緑内障手術最近の進歩」(井上俊洋先生) (1255)

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梅雨空の下のジャズ


「緑内障手術最近の進歩」 井 上 俊 洋 先生(熊本大学)

熊大卒97

ありがちなタイトル・・・。何度こんな話を聞いたかなあ・・

まずは、熊本の紹介から。九州に計7年ほど暮らしていたので、少しは知っているのだが、長崎の地形の理解は非常に難しく、天草は長崎だと思ってる人も多いんじゃないかなあ・・・。熊本城はほぼ修復が終わったのかと思っていたら、石垣は100%完全に元通りにする予定で、完成予定は、なんと2037年らしい・・。

話の内容は、この順番⇒ 1,レーザー手術 2,流出路再建術 3,濾過手術 4,未来

※その前に緑内障ガイドラインについて。もう第5版となり、かなりしっかりしたものになってきた。我々のような古い世代は、ガイドラインなどなかった時代から緑内障治療に携わっていて、このガイドラインができる過程、そして版を重ねて変化する過程を見ているから、おおよそは頭に入っているし、若干絵に描いた餅的な部分は、大人の対応をしているのだが、若い世代の医師は、これを覚えるところから始まるのだろうか。大変やなあ・・

1,選択的レーザー線維柱帯形成術(SLT

LiGHTtrial:無治療のPOAGにいきなりSLT3年間フォローした結果は、SLTの方が追加手術も少ないし、コストも低い。

Lancet2019 Apr 13;393(10180):1505-1516.

Selective laser trabeculoplasty versus eyedrops for first-line treatment of ocular hypertension and glaucoma (LiGHT): amulticentre randomised controlled trial

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC6495367/ 

現実には、なかなか踏み切れないなあ・・・。それに日本ではもっと眼圧の低い緑内障が圧倒的に多いだろうし。平均2年で眼圧再上昇するらしいし、再上昇したらもう1? 2年で戻るのなら、10年で5回、20年で10回やってもいいのだろうか? 点眼処方しないと、受診されなくなることもあるだろうし、他院に移ったとして、隅角にSLTの痕跡はない。数年という期間を区切ったスタデイならわかるが、実際は、10年、20年と経過を診るわけで・・・。様々な理由で患者さんが点眼ができないか場合でないと、する気になれないような・・

2,マイクロパルス波を用いた毛様体光凝固(MP-CPC

昔の毛様体冷凍凝固、少し前の毛様体光凝固に比べて、MP-CPCは毛様体組織を破壊しないらしい。房水産生抑制がメインだと思うが、房水流出も促進?組織破壊じゃないので、繰り返してもいいらしいが・・・個人的にはかなり心配。短期の成績がいいのはわかるが、長期的には怖い気もする。難治緑内障で、他の手段(流出路手術や濾過手術)をチョイスしにくい時ならわかるが・・・

SLTMP-CPCも、組織破壊がなく、繰り返してもいいというが、適応をしっかり見極めて使ってほしい。悪魔に魂を売った医師が使わないことを祈る。

※提示された症例は、94歳アルツハイマーの悪性緑内障。手術できず、MP-CPCを行うと、前房が深くなり、隅角も開放して、眼圧下降。驚くべき素晴らしい結果だが、これが、もし房水産生抑制だけじゃなく、毛様体の形態の変化を引き起こして、房水の流れを変えた結果だとしたら、MP-CPCって本当に組織破壊がないのだろうか・・。

悪性緑内障に対するマイクロパルス経強膜毛様体光凝固術が奏効した1症例  あたらしい眼科37(10),2020


3,PACSをどう扱うか

昔は、さかんにLaser iridotomyが行われたが、その角膜内皮に対する危険性の報告が多くなり、今ではそう簡単にやってはいけない雰囲気になっている。雰囲気じゃないか・・。

呼び名については、ただ前房が浅い・隅角が狭いだけのPACSPASが発生したり眼圧が上昇してくるとPAC、視神経にダメージが出てくるとPACGと呼ばれる。全体としては、PACDと呼ぶらしい。なんだかややこしい時代になったなあ・・。このPACSをどう扱うか。PACSと言ってもピンキリだと思うのだが、例えば前房深度が1.6mmで、虹彩の膨隆度が強ければ(0.3mm以上)、怖くて経過観察なんかできないだろうし、前房深度が2.0mm近くあって、虹彩膨隆度がわずかなら、あまり怖くない・・・。チン小帯が緩ければ、安心してると、突然急性発作なんてこともあるかもしれない。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30878226/ 

この権威ある論文(ZAP Trial)では、PACSからPACの発症(各群889眼)は、LI vs 経過観察で、0.419%vs 0.797%APAC1vs 5眼。LIの効果ってそれほどでもないので、積極的にやる手技ではないと・・・。他の大規模スタデイでもほぼ同じ結果。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34453952/

これを受けて、我々はどう判断すればいいのでしょう?PACS全体に対して、積極的に治療介入するな・・・とうのは理解できるが、我々が直面している 個々の症例に対して、どうするのかは全く別問題。前房深度が、虹彩の膨隆度(瞳孔ブロックの強さ)、虹彩根部の形状などから急性発作への移行リスク、慢性型への移行リスクなどを判断して、治療介入する目安を提示していただきたいなあ・・(大体わかってるけど・・)。

※前房深度(角膜の厚みを含まない)が2.5mm以上あれば、通常何も問題ない筈。前房深度が2.2mm以下になってくると無視できなくなる(PACS)。急性発作を起こす前房深度の平均は、1.6mmぐらいなので、それに近づくとハイリスクなのは間違いない。加えて、虹彩膨隆度(iris convexity)が0.2mm以上あれば更にハイリスクだと思う。虹彩根部の形状によっても隅角閉塞リスクは異なるだろうし、チン小帯の脆弱性も瞳孔ブロックの変動要因になるだろう。

そして、超ハイリスクの眼は、レーザー虹彩切開術は簡単でも、白内障手術はそれなりに難しいし、発作起こしたら、更に難しい。

※レーザー虹彩切開術は、隅角閉塞に関わる様々な要因の中の瞳孔ブロック要因のみを解除するだけだが、水晶体再建術は、隅角閉塞要因のほぼ全てを解除してしまうので、比較したら、当然差が出てくる筈。だからといって、レーザー虹彩切開術を封印してしまうのは、患者さんにとってどうなのだろう・・

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27707497/ 

4,流出路再建術

MIGSが増えている。iStentが増えているのは気に要らないけど、トラベクロトミー(interno)も増えていて、多分今どきの若い医師は、外から行うトラベクロトミーを見たことがないかもしれない。externoからinternoへ、短期間で一気に入れ替わった感がある。internoのトラベクロトミーには、トラベクトーム、Kahook Dual Blade、谷戸式フックの3種類があり、コスパ抜群の谷戸式が一番普及しているのかな。Kahookは、線維柱帯が切除できるので、病理組織を確認したい場合は、これかな。

iStentも急速に普及しているらしい。改良型が出てきたり、2個入れるとそれなりに有効だとか・・。ただ、トラベクロトミーも昔のexternoに比べて、internoは、切開範囲が広範囲になっていて、sLOTにいたっては360度近く切開する手技。線維柱帯は広く切開したほうが有効という話がある中で、このiStentはどれほど意味があるのか、ちょっと心配。長期成績が早く知りたいな。


by takeuchi-ganka | 2022-06-19 09:27 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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