第448回大阪眼科集談会 特別講演 その2「緑内障手術最近の進歩」(井上俊洋先生) (1256)
2022年 06月 21日

5,濾過手術
古い歴史をもつ濾過手術。1900年ぐらいに全層濾過手術、1960年にはトラベクレクトミー。その後、代謝拮抗剤(5FUやMMC)が併用されるようになり、2000年以降エクスプレスが登場した。日本ではなかなか普及しなかったGDDも徐々に普及するようになってきた。トラベクレクトミーはシンプルな術式だが、きれいな濾過胞ができて、低い眼圧が維持できて、感染のおそれもあまりない状況を長期間にわたって維持することは、なかなか難しく、多数手術を行っている熟練した術者なら、術後管理の様々なテクニックを駆使して、好成績を収めているのかもしれないが、それでも、長期にわたる良好な経過が予測可能とはいいにくい面がある。
海外の良好なスタデイの結果もあって、ようやく日本でもアーメドやバルベルトといったGDDが使われるようになり、それなりの成績が出てきた。まだ日本では、いわゆる難治症例に対して行われるだけのようだが、それでも、かなりいい成績が出ている。
TVT study
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/22245458/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24531027/
PTVT study
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31727428/
※初回手術として、バルベルトとトラベクレクトミーの比較。ほぼ同等?
プリザーフロマイクロシャント (以前InnFocus MicroShuntと呼ばれていたツール)
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35277663/
https://www.info.pmda.go.jp/downfiles/md/PDF/300237/300237_30400BZX00044000_1_01_01.pdf
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26766400/
PRESERFLOⓇマイクロシャントを用いた日本人原発開放隅角緑内障に対する低侵襲緑内障濾過手術の1年経過 日本眼科学会雑誌第124巻第9号(2020):良好な成績・・
※『従来の線維柱帯切除術との手技の違いの特徴は,結膜テノン囊切開およびスリットナイフと25 G針によるトンネル作製のみの侵襲で,強膜弁作製,強角膜ブロック切除,虹彩切開の手技が一切ないことにある』
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34051211/
※長期成績次第では、レクトミーに取って代わるかも・・
XEN
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28555256/
http://premiumvisionsc.com/xen/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8246811/
※濾過手術も、初回手術は、バルベルトのような巨大なツールではなく、プリザーフロやXenのような非常に小さなツールが選択されそう。レクトミーに比べたら、あまりに簡便で、一旦普及したらもう戻れないかな。プリザーフロでも簡便なのだが、Xenにいたっては結膜を切開しない。失敗しても、簡単に再手術できそう・・
未来の治療
※プリザーフロやXenも個人的には、結構未来の治療なのだが・・・
1,ビマトプロストの徐放ツール
昔、ピロカルピンを徐放するOcusert Pio-40/20という結膜嚢内に留置するツールがあったが・・使用感の悪さが原因なのかあまり使われる事なく消えていった印象があります。あれからもう35年以上・・
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31884564/
2,薬剤自動投入システム?
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4356354/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4356354/figure/i2164-2591-3-3-8-f01/
3,GDDで濾過量が調節可能?
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31048640/
4,CNTFインプラント
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/30292541/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8365464/
5,ゲノム手術の臨床応用
CRISPR-Cas9。何度聞いても理解が進まないが・・・
以前ブログに書いた記事から
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https://answers.ten-navi.com/pharmanews/19918/ から転記
2020年ノーベル化学賞:ゲノム編集技術「CRISPR-Cas9システム」の基礎研究
CRISPR(clustered regularly interspacedshortpalindromic repeats):細菌などの原核生物が持つ獲得免疫システムの一部。細菌はウイルスから身を守るため、侵入してきたウイルスのDNAを切断するタンパク質を持っています。細菌はそうして切断したウイルスのDNA配列の一部を自身のゲノムに取り込み(取り込んだDNA配列を保存しておく場所がCRISPR)(免疫記憶)、それを使って特定のDNAと結合する「ガイドRNA」を作成。再び同じウイルスが侵入してきた時には、ガイドRNAが目的とするDNAと結合し、それを目印に誘導された切断酵素の「Cas9」がウイルスのDNAを切断します。⇒噛み砕いて説明してもらってもよくわからないけど、結局この細菌がもつ機能を応用したゲノム編集システムを、『CRISPR-Cas9』と呼ぶようです。
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『CRISPR-Cas9』は、遺伝子治療にブレイクスルーをもたらしたようで、益々期待は膨らみます。
『第119回 日本眼科学会総会 評議員会指名講演III』から・・⇒TGFBI遺伝子R124H変異のAvellino角膜ジストロフィ患者の手術サンプルから角膜実質細胞を培養。その細胞の遺伝子編集をして、正常な遺伝子に修復できた。この細胞を患者さんに戻せばいい?
https://www.cira.kyoto-u.ac.jp/hotta/research.html
この技術とiPS細胞を利用すれば、筋ジストロフィー治療も夢ではない・・
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/25434822/
https://crisp-bio.blog.jp/archives/24212707.html
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31981492/
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC7054720/
https://livedoor.blogimg.jp/crisp_bio/imgs/b/6/b6ecacae.png