2022年 09月 20日
上皮型角膜ヘルペス (1212)

初孫と魅入られて、ブログ更新が滞ってるので、気合入れて、ちょっと角膜のお勉強。
そもそもヘルペスウイルスは、100種類ほどいるらしいが、ヒトに感染するものは、8種類と言われている。
- 1. 単純ヘルペス1型(HSV-1)
- 2. 単純ヘルペス2型(HSV‐2)
- 3. 水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)
- 4. サイトメガロウイルス(CMV)
- 5. ヒトヘルペスウイルス6(HHV-6)
- 6. ヒトヘルペスウイルス7(HHV-7)
- 7. Epstein-Barrウイルス(EBV)
- 8. ヒトヘルペスウイルス8
ここで問題にするのは、HSV-1が引き起こす上皮型角膜ヘルペス 。私のような普通の開業医でもしばしば経験する角膜疾患です。HSV-1は、口唇ヘルペスの原因にもなる。ほとんどの人は幼児期に初感染(多くは無症状)した後、三叉神経節に潜伏感染し、ストレスや発熱や紫外線暴露などがきっかけで、潜伏していたウイルスが再活性化して、上皮型ヘルペスが発症する(教科書的記載)。このメカニズムは、角膜ヘルペスも口唇ヘルペスも同様らしい。再活性化の原因については、ストレスや発熱や紫外線暴露がきっかけ・・と書かれているが、経験上は、きっかけと呼べるほどのものがないことも多い気がする・・・。もちろん再発はしばしばありうる。
※眼瞼・眼周囲・顔面にできるヘルペスは口唇ヘルペスと同じようなもの。角膜ヘルペスも含めて、潜伏感染部位は三叉神経節らしい。性器にできるヘルペスは、何故かHSV-1と2の両方があり、初感染後、主に腰仙髄神経節に潜伏感染して、何らかの刺激で再活性化するようです。要する、三叉神経節と腰仙髄神経節の違い。
角膜病変:ターミナルバルブをもった典型的な樹枝状病変を呈することも多いが、何だか怪しげなものも多い。専門病院なら、PCR検査ということもあるでしょうが、一般的には見た目で判断するか、抗ヘルペス薬に反応するかどうかで診断している。角膜知覚の低下は有名だが、まだCochet-Bonnetを使ったことはない^^;
治療は、アシクロビル(ACV)軟膏を5回/日から開始して、漸減することがほとんど。軟膏いれていると、樹枝状病変が徐々に不明瞭な感じになり、軟膏の副作用なのか非特異的なSPKが増えてくる。軟膏の使用感はあまり良くないので、文句言われることも多いが、励ましつつ漸減中止へ持っていく。

※提示症例は、左眼がヘルペスの実質型で既にほぼ失明していて、右眼角膜ヘルペスで初診。その後、右の三叉神経第1枝領域に眼部帯状疱疹や左眼の瘢痕病巣に樹枝状病変が発症。
※ウイルス性疾患ではあるが、性器ヘルペスと異なり、角膜ヘルペスが他眼に感染ったり、他人に感染したりすることはない。