2022年 09月 29日
ロービジョンケア講習会 (1213)


わかっていてもなかなかハードルが高く、苦手な分野の一つが、ロービジョン。
視力が悪いといっても、全体的に感度が落ちていることもあれば、中心暗点や虫食い状に視野欠損があったりと、状態は様々。どんな場合に、どのようなツールが有用なのか、どこに行けば現物を見たり試用することはできるのか。補助はどうして受けるのか・・・など、ハードルは多いし高い。何度も講演を聴いているうちに、ちょっとだけ身近になってきたかな・・・
身体障害者手帳を持っている視覚障害者数は、33万人(2018)。
疾患別には、①緑内障、②網膜色素変性症、③糖尿病網膜症、④黄斑変性、⑤網脈絡膜萎縮・・
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press30/press-180927-6.pdf
『ロービジョン』は、失明状態(それに近い状態)だけを示しているのではなくて、もっと大きなくくりで、見えにくくて困っている人の多くを対象と考えていいかも。
※そうなると、普通に通院している様々な疾患の患者さんで、該当する患者さんは膨大な数になりそう・・
- 1) 視野狭窄(求心性)
- 2) 虫食い状視野欠損(緑内障)
- 3) 中心暗点(加齢黄斑変性)
・・・
読み書き不自由への対応
拡大&コントラスト拡大
印刷物を読むために必要な近見視力
活字の大きさ⇒ひらがなを読む⇒漢字を読む
- 教科書:3号・5号 ⇒ 0.1・0.2⇒ 0.2・0.3
- 新聞 :9ポイント・8ポイント⇒0.3・0.4⇒0.4・0.5
- 辞書 :6ポイント ⇒0.5⇒0.6
※新しい新聞の文字は、縦が8.6ポイント(約3mm)横10.8ポイント(約3.8mm)
・市販の拡大鏡は、2倍ぐらいまで。それ以上は、ロービジョン用のものが必要? 例えば、近見視力0.3の人が、辞書を読もうとしたら、0.6は必要なので、0.6/0.3=2.0なので、倍率2倍の拡大鏡でもいいが、0.1の人なら0.6/0.1=6.0で、倍率6倍ぐらいの拡大鏡が必要。近見視力を測定して、必要な倍率の拡大鏡を用意する。
・大げさな器械だが、拡大読書器なら、最大50倍まで拡大可能。白黒反転もできる。0.08の視力でも新聞読める。
・高齢者には難しいかもしれないが、スマホの拡大鏡も使えそう・・
・コントラスト拡大:白黒反転文字は、見やすい。
・ハイパワープラスレンズ眼鏡:老眼鏡だと、通常+3.0DぐらいがMaxだが、+4以上の強い加入度数にして、近づけて見る。3Dなら33cm、4Dなら25cm、10Dなら10cm。ただやり過ぎると、両眼視不可能。
症例
- 1, 97歳女性。FCDで片眼失明。片眼(0.3☓S+2.5D)。+4.0Dのハイパワー眼鏡を処方。距離20cm。
- 2, 92歳女性。RAP。視力0.3/0.04 右眼に+10.0Dのハイパワー眼鏡処方。距離10cm。
- ・リーディングスリット(タイポスコープ)
- ・様々なロービジョンエイド(視覚補助具)
- ・偏心視(の獲得):視線をずらして、視機能が残っている網膜で読み書きする。
- ・羞明に対する対応:遮光眼鏡(グレアの軽減、コントラストの改善、暗順応の補助等を目的として装用する光吸収フィルタを用いた眼鏡)。有名なのは、網膜色素変性症に対するコーニング社や東海光学の眼鏡。様々なタイプのものがある。
補助が支給される眼疾患にしばりがあったが(網膜色素変性症・錐体杆体ジストロフィ・白子症・先天無虹彩)、2010年4月からしばりがなくなった。
対象者:以下の要件を満たす者。
- 1) 視覚障害により身体障害者手帳を取得していること。
- 2) 羞明を来していること。
- 3) 羞明の軽減に、遮光眼鏡の装用より優先される治療法がないこと。
- 4) 補装具費支給事務取扱指針に定める眼科医による選定、処方であること。
※この際、下記項目を参照の上、遮光眼鏡の装用効果を確認すること。
(意思表示できない場合、表情、行動の変化等から総合的に判断すること。)
- ・まぶしさや白んだ感じが軽減する
- ・文字や物などが見やすくなる
- ・羞明によって生じる流涙等の不快感が軽減する
- ・暗転時に遮光眼鏡をはずすと暗順応が早くなる
※遮光眼鏡とは、羞明の軽減を目的として、可視光のうちの一部の透過を抑制するものであって、分光透過率曲線が公表されているものであること。
症例
- 88歳男性 右眼義眼、左眼輪部疲弊角膜混濁⇒遮光眼鏡+ライト付きルーペ処方
- 62歳男性 SJS⇒遮光眼鏡、+8Dのハイパワー眼鏡(14cm)、ライト付きルーペ(10、20、38D)
- 75歳女性 網膜色素変性症、夜盲+求心性視野狭窄⇒遮光眼鏡、タイポスコープ、拡大読書機、暗所視支援眼鏡、日本網膜色素変性症協会を紹介。
暗所視支援眼鏡
なんとなくだが、ロービジョンケアが必要なのは、高度の視力・視野障害がある場合と思っていたが、
ロービジョンケアが必要な目安は、もっと低くて、①良い方の矯正視力が0.4以下、②視野に暗点や欠損がある。③コントラスト感度悪い。
読み書き不自由対策
- l 点字
- l 音声
- l 拡大読書器
- l 拡大鏡
- l ハイパワープラス眼鏡
視野狭窄・羞明対策
- l タイポスコープ
- l 遮光眼鏡
- l 白黒反転
- l 視野拡大レンズ
移動不自由対策
- l スマートフォン、ガイドヘルパー
- l 白杖・盲導犬
- l 遮光眼鏡・強力ライト