令和4年関西医大眼科同窓会 秋の勉強会 (1219)
2022年 11月 06日

令和4年関西医大眼科同窓会 秋の勉強会
2022年11月5日
今年は秋の勉強会が、久しぶりに現地開催されて、枚方まで足を運びました。長い期間続いているコロナ騒動のせいか、若干集まりが悪く、寂しい雰囲気の勉強会でしたが・・ 仲間内の勉強会なので、真剣な討論もありつつも、もう少し和やかな雰囲気がでないものかなあ・・
少し遅れて、枚方病院に着いた。受付で久しぶりに秘書さんや懐かしい先輩後輩同期の顔を見ると、やはりWEBよりは現地開催がいいなあと思いつつ会場内へ。西村先生の特別講演はもう始まっていました。
私が入局した時、多分助手だった西村先生は、講師・助教授・教授をへて今は理事長特命教授という、ドラマ相棒にでも登場しそうな肩書になっていました。その昔、なんでこの先生は手術がこんなに簡単そうにできるのだろう・・と思っていたら、宇山先生が、なにかの折に、彼は天才だから・・・とおっしゃっていたのを聞いて、だから、真似をすると失敗するのかと、納得した事がありますが、この天才的な眼科サージャンは、今でも心底手術が好きで、70歳前とは思えないほど前向きの講演でした。皆さん手術を依頼したいなら、あと数年はチャンスありますよ。
会場で、話されていたのは、硝子体手術器械の話でした。今どきの硝子体サージャンにとっては、常識なのかもしれませんが、一介の開業医にとっては十分新鮮な内容でした。
詳細な内容は、例えばアルコンならコンステレーションのHPを見ればいいのかな。
https://professional.myalcon.com/jp/ja-JP/vitreoretinal-surgery/vitrectomy-and-platforms-probes/
※HYPERVITデュアルブレード プローブ:コンステのカッターがこれで、とんでもない速さで駆動するようです(1000rpm×2)
ついで手術補助剤(ブリリアントブルー、トリアムシノロン、抗VEGF・・)の話のあと症例提示。
まあ、今でも大変なのかもしれませんが、48歳で手つかずの増殖糖尿病網膜症+NVG。不幸な転記をとることが多いのですが、PEA+IOL+vit+レクトミーといった手術でも、アイリーアを併用することで、術後フィブリンでどろどろになったりしないようです。
次が、デジタル支援硝子体手術(Digitally Assisted Vitreoretinal Surgery :DAVS)の話。アルコンで言えば、NGENUITY® 3Dビジュアルシステム。
https://ngenuity-jp.myalcon.com/
手術にはお金がかかるなあ・・。このシステム一体どれくらいの値段なんでしょう。相当頑張って手術件数こなさないと、ペイできないのだろうなあ。ただ、アナログの顕微鏡では、逆立ちしても到達できない領域に達している。詳細は上のリンクで解説してあります。勿論デジタルということは、解像度や処理速度の問題も抱えているようですが、時間とお金がやがて解決してくれる筈。
また、OCTを撮りつつ手術することも可能で、面としてみているだけでなく、断層像を確認しながら手術できるので、ワンランクアップ可能。詳細は下のリンクを・・
この後各論に・・
1、糖尿病黄斑症
これはなかなか手強い相手。様々な要因が複雑に絡んでいて、硝子体手術だけでも、ステロイドや抗VEGFだけでも、簡単にはいかない。特にERMや牽引があると更に・・。その昔硝子体手術だけをやっていた時代は、改善効果が出るのに、半年から1年ぐらいかかったが、即効性のある方法の紹介。
① BSS網膜下注入
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26220819/
『び漫性糖尿病性黄斑浮腫(DME)に対する通常の硝子体切除術と組み合わせた新しい外科的手技の治療効果について検討した。DME患者18名の20眼を対象とした。対象の眼の最良矯正視力(BCVA)は、最少視角対数値(logMAR)が0.301から1.221で、中心網膜厚(CRT)は275μm超であった。硝子体切除術後、網膜下腔に38G針を用いて50~100μlの平衡塩類溶液を注入して黄斑の網膜をわずかに剥離させた後、液空気置換を行った。その結果、術前に554.6±152.7μmであった平均CRTは手術の1週間後には295.6±92.5μm、6ヵ月後には185.8±67.4μmまで減少し、18眼のCRTは250μm未満となった。術前に0.706±0.348であった平均BCVAは、手術から6ヵ月後に0.431±0.392まで改善され、13眼では0.3logMAR超の改善が認められたが、6眼が不変、1眼で悪化が観察された。手術から2ヵ月後に、1眼において黄斑浮腫の再発が認められた。以上より、本中心窩剥離技術はび漫性糖尿病性黄斑浮腫の迅速な改善を促進し、視力の改善に有効であることが示された。』
改善に半年以上かかっていた事を思えば、画期的。
② 嚢胞内壁切開・フィブリノーゲン塊摘出
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32732609/
https://www.nature.com/articles/s41598-021-88149-z
黄斑部のCMEが長引いて、OCTで内部反射が強くなってきた場合、グミ状になったフィブリノーゲン塊を切開して取り出せば有効らしい。こんな事をするようになったのか・・・
※このような新しい術式を組み合わせて、DMEの治療が行われている。
1)ステロイド 2)抗VEGF 3)網膜光凝固 4)硝子体手術:硝子体切除・ERM除去・BSS網膜下注入・嚢胞壁切開フィブリノーゲン塊摘出・・・
2,黄斑円孔
ILM剥離+ガス注入が基本だが、ステージ4になると難治。こんな場合、Inverted ILM flapテクニックが使われた(上に被せるだけ)が、それでも治りにくいケースに、自家網膜移植が有効(移植後、パーフルオロカーボン⇒SO)。
3,CRVO
① 抗VEGF薬:CRUISE(ラニビズマブ)・GALILEO(アフリベルセプト)
② 放射状乳頭切開:専用のナイフで勇気を持って乳頭を切開。うまく行って血流が回復することもあるが合併症多い。
③ 血管内治療:先端に48G(50μm)のマイクロニードルを装着したツールで、tPAを注入。tPA使用は色々問題があるので、BSSを使って、3分間(長ーい!)洗浄したら、再開通したと・・。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/29358594/
写真を見せたいその気持、2ヶ月前に突然二人の孫が誕生した私には理解できますよ(^^♪