Keep the Visual Field 2022 その2 (1223) 緑内障治療の最適化
2022年 12月 26日

442年ぶり??
緑内障治療の最適化 海谷眼科 山本哲也
学会に行く度に、もう30年以上前からお見かけしているが、今でも、海谷眼科でバリバリ緑内障手術されているらしい・・。岐阜大学から第一線の眼科に移られて、感じられたことは、『患者さんが重症感に乏しい』、『いつまでも、目が見えると思っている』ことらしい。諸事情あって、緑内障の大家がおられる大学病院に紹介される患者さんと、第一線の眼科を受診される患者さんとでは、違うだろうなあ。
『患者さんの重症感が乏しい』と言われるが、小さなクリニックの院長としては、本当に厳しい症例を除いては、いきなり厳しいことは言いにくいのが現実。あなたの緑内障は重症で、遠くない将来失明するかもしれないと言われることの恐怖は非常に大きいと思う。徐々に見えにくくなって、それに不自由を感じつつも、その見えにくさに慣れつつ受け入れることができるのだと思う。
初診時眼圧が20以上あって、視野変化も少し出始めていたら、点眼加療で、20以下になるとしても、流出路手術を受けてもらい15前後、点眼追加して10近くまで下げる事ができて、緑内障の進行が止まれば、流れとしてはベストなのだろうが、しばしば経験するのは、ある程度緑内障が進行していて、点眼加療で眼圧が10-15ぐらいにコントロールされている症例。ただ、徐々に悪化している(悪化速度が問題なのだが)。点眼が、既にPG剤+βor/and CAIが入っていたら、次に何ができるだろうか。勿論、濾過手術して、全く副作用なく眼圧を10以下にできればいいのだろうが、なかなか実現困難で、現実問題としては、
- ① 神経保護も目的でブリモニジン点眼を追加
- ② 白内障が進行してきたら、白内障手術と同時に流出路再建手術を併用
- ③ 濾過手術
選択肢はこの程度かな。①②は簡単にチョイスできても、③濾過手術のハードルは高い。勿論、進行速度がかなり早くて、近い将来重大な視機能障害が確実であれば、③をお勧めするが、判断は非常に難しい。緑内障は、視神経障害程度の客観的判断としては、かなり厳しい状況であっても、自覚症状が殆どない事も多い。そんな状況で、濾過手術をして、色々あって視機能が低下すれば、患者さんにしてみれば、手術したから見えにくくなったと感じざるを得ない。勿論、最重症で近い将来中心視野が失われるリスクが高ければ、当然厳しいムンテラとなるが、緑内障は非常にゆっくりしか進行しない疾患なので、重症感はその間に徐々に理解してもらうしかないのだと思う。
良好な経過を辿った濾過手術後の患者さんを見ていると、この手術をもっと早期に、もっと多くの人が受ければいいと思うのだが、そうでない経過をたどる濾過手術も多いのが現実。一発で決まった濾過手術はいいが、何度も濾過胞再建術を行うことになった場合、その後長期に渡って良好な経過をたどるケースって多くないような気がする。視野変化が軽くても、実は緑内障患者さんの視神経障害レベルは軽くないことはわかっていても、なかなか早期に濾過手術を進めにくい現実がある。