第5回大阪眼疾患セミナー その3(1226) オキュラーサーフェス疾患アップデート
2023年 01月 21日

講演Ⅲ オキュラーサーフェス疾患アップデート 堀裕一 東邦大学大森病院
1,マイボーム腺機能不全MGDについて

かなり前からこの診断基準は一応知っている。マイボーム腺開口部の異常所見や閉塞所見はしばしば遭遇するのだが、関連して強い自覚症状を訴える患者さんが、それほど多くない印象があるのと、この異常所見を改善する簡便な方法がないことで、講演で話を聴くことは多いものの、徐々に興味が薄れていった。
この論文によると、MGDは加齢に伴い増加するが(経験と合致)、若年者では女性が多く、高齢になると男性の方が多くなる。ドライアイは、圧倒的に女性に多く、高齢になると男性も同じぐらいの比率になっている。ホルモンの影響、加齢性変化、コンタクトレンズ装用などが大きく影響しているらしい。

- 1,眼瞼縁の制式 Lid hygiene:アイシャンプー ⇒ https://eyeshampoo.com/
こまめに化粧や洗顔を行う女性には勧めてもいいが、男性にはちょっと無理っぽいなあ・・
- 2,温罨法:ホットアイマスク⇒例えば花王の『めぐりズム』や小林製薬の『あずきのチカラ』など。
- 3,油脂蓄積の予防:専用の圧迫鑷子で圧出・・と言ってもキリがないような気がする。
- 4,薬物治療:マイボーム腺常在菌によるリパーゼ・エステラーゼが、マイボーム腺由来の脂質を分解⇒これが刺激症状、閉塞の原因に・・。テトラサイクリン系・マクロライドは、リパーゼ活性抑制するらしいが、症状が重篤で、治療に即効性がないとやりづらいなあ・・
https://www.lime.jp/public/newtreat.html - 5,その他:IPL、Lipiflow
※美容皮膚科で、シミ・そばかす、ニキビ・・・などに使われている器械が有効らしい。
※Lipiflow 『熱(41-43度)および圧力を瞼に与えること』で閉塞しかかっているマイボーム腺の機能を回復させるらしい。片眼1回2-3万円、両眼で5-6万はするようだが、どの程度効果があって、どれくらいの頻度で行う必要があるのか・・が興味ある。そんなに需要があるのだろうか・・
※Thermo-mechanicalablasion (Tixel)
- https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S1367048422001965
- https://jrct.niph.go.jp/latest-detail/jRCTs032220286
- https://www.novoxel.com/index.php?todo=products
※Novoxel社のHPでの説明:『先端部は9×9の81個の小さなピラミッドで構成され、400℃に加熱されています。チップの移動に伴い、ピラミッドの頂点で皮膚を突出させることなく短時間接触します。これにより、半球状の凝固ゾーン(深さ250μ、幅500μ)が形成され、表面焼灼が行われます。』
マイボー腺炎角結膜上皮症 meibomitis-relatedkeratoconjunctivitis(MRKC)
フリクテン性と非フリクテン性のものがある。後者はSPKが主体。ドライアイのようだが、治療に抵抗するSPKの中にMRKCがあるかもしれないと思って日常診療にあたる必要があるかも。
マイボーム腺閉塞所見(MGD)+眼瞼縁・結膜の炎症
- フリクテン性は、若い女性に多くてPアクネスに対するアレルギー:結節性細胞浸潤、表層性血管侵入。レーザースペックルフローグラフィーでは、眼瞼の温度が高く、血流も多い。治療で減少・・
※処方:クラリスロマイシン2週間、アジスロマイシン点眼2週間 ⇒フルオトメトロン点眼、ムコスタ点眼 - 非フリクテン性は、高齢者に多く、細菌毒素による角膜上皮障害が主体:SPK、充血
繰り返し講演で聴いた影響もあって、以前は謎の疾患だったフリクテン性のMRKCはやっと理解できつつあるが、非フリクテンのMRKCは特徴に乏しくて、見逃している可能性がある。無症状のMGDは高齢者にしばしば見られるし、SPKや軽度充血もありふれている。ドライアイとはちょっと異なる特徴的なSPK(ダークスポットを伴う)を見極めて治療できればランクアップできるかな。
処方:クラリスロマイシン内服(1ヶ月以上)、フルオトメトロン点眼、オフロキサシン眼軟膏
2,治療に苦慮するオキュラーサーフェス疾患
症例1:74歳女性 10年前から結膜炎、徐々に眼瞼も腫れてきた・・
ドライアイは間違いないが、瞼球癒着が見られた⇒眼類天疱瘡
処方:治療用CL、涙点プラグ、人工涙液、フルオトメトロン、レボフロキサシン点眼
※急性増悪時(時々あるらしい・・)は、リンデロン点眼、プレドニン内服
症例2:73歳男性 左眼緑内障で失明?右眼白内障術後SPK遷延。角膜周辺部から結膜侵入。
この症例も眼類天疱瘡で、角膜幹細胞疲弊症となり結膜侵入。アルカリバーン、SJSなどと同様に移植が必要。以前はアロ移植で透明治癒率低かったが、オート移植が可能になり、成績向上。自分の口腔粘膜上皮か、他眼が健在なら他眼の輪部にある角膜幹細胞を採取して、培養シートを作成してくれる会社へ送ると、1ヶ月ほどで培養シートが送られてくる。
※特別な設備がなくても、資格のある医師がいれば、どこでも手術可能に・・
- ネピック: https://www.jpte.co.jp/customers/medical/Nepic/index.html
- オキュラル: https://www.jpte.co.jp/customers/medical/Ocural/index.html
- サクラシー: http://www.hirosaki-li.co.jp/products_sakracy.html
※K259-2自家培養上皮移植術(保険収載された)