2023年 03月 06日
「ⅰPS細胞を用いた視機能再建」 万代道子 先生(神戸アイセンター病院)(1234)
<特別講演>
「ⅰPS細胞を用いた視機能再建」万代道子 先生(神戸アイセンター病院)
網膜色素変性症の視機能を再建したり、その進行を阻止できるのだろうか。
iPS細胞を用いて、様々な発生段階の網膜組織が調達可能になってきた。生体に近い構造を持つ3次元網膜オルガノイドを用いた網膜再建の試み。これによって移植組織が、長期にわたって生着可能に・・
※オルガノイド:『試験管の中で幹細胞から作るミニチュアの臓器。幹細胞の持つ自己複製能と分化能を利用して、自己組織化させることで3次元的な組織様構造として形成される。』(京都大学iPS細胞研究所HPから)
移植網膜オルガノイドの視細胞が成熟して①、ホストとシナプスを造り②、ホストのRGCの光に対する反応が回復するか③がポイント。

※住友ファーマのHPから
- 移植された視細胞の成熟
- ホスト網膜とシナプス形成
- ホストのRGCの光反応が回復(ここは電気生理学的に判断)
- 動けるようになる
一応、この4段階がマウスの実験では確認されているらしい。サル眼での実験でも、移植部位の網膜は、視線が回復しているらしい・・・。そして、次はヒトへの臨床応用
網膜色素変性症の患者さんに、京都大学 iPS 細胞研究財団の臨床用 iPS 細胞ストック(QHJI01s04)を用いて、住友ファーマで委託製造された同種iPS細胞由来網膜シートを移植。これが生着するか、安全性に問題ないか。
硝子体手術して、網膜シートを網膜下に最大3枚移植。
① 67歳女性 ②42歳男性
特に異常増殖とかはなく、生着した。視力視野に変化なく、症例1では、判読できるアルファベット文字数が少し増えた。FSTテストでは、症例1で改善。症例2で悪化・・・・
※劇的な改善も悪化もないということ?重度視機能障害の評価法では症例①で改善あり。移植による視機能改善の可能性(+)
https://www.diagnosysllc.com/wp-content/uploads/2022/02/Diagnosys-FST-Brochure-e.pdf
- 安全性に問題がなければ、次のステップへ(有効性の確認)
- より大きな網膜オルガノイド、複数枚移植
- 低免疫原性の為、複数回(両眼)移植も可能に・・
- 移植網膜オルガノイドの視細胞が(?)、ロゼットを形成するが、これを解消できないか・・
- より効率的なシナプス形成ができないか・・。双極細胞が邪魔?ISL1-/-マウス ES/iPS 細胞由来網膜組織なら、より効率的・・・
※ https://ir.library.osaka-u.ac.jp/repo/ouka/all/88004/32632_Dissertation.pdf
この文章は、この分野の流れを理解するのに非常に役立つ。
・ホスト双極細胞の活性化は?
・黄斑形成はできるのか・・
まだまだ問題山積だが、日本の優秀な頭脳集団は、少しずつ問題を解析してiPS細胞を使った再生医療を現実的なものにしているようです。