2023年 07月 21日
網膜疾患マネージメントー眼血流の役立て方 (1255)
第52回大阪眼科セミナー
特別講演
網膜疾患マネージメントー眼血流の役立て方
東邦大学医療センター 佐倉病院眼科 橋本りゅう也
糖尿病網膜症でビト後、なんだかよくわからないけど、暗い、視力が悪い時の原因は?網脈絡膜の循環障害が生じていないか?PDRのビト後、21%に網脈絡膜萎縮・視神経萎縮(+)(日眼2001)。これは術中の眼圧変動が原因ではないか?
硝子体手術中、眼内圧はかなり大きく変動している。周辺部のShaving時に眼球を急激に圧迫したりすると、更に高度の眼圧上昇をきたす(Max100近いらしい・・)。ゆっくり圧迫しても40弱? 硝子体手術後のParacentral acute middle maculopathy(PAMM)の発生率は、術中の眼圧に依存している。
通常眼圧が上昇しても、視神経乳頭の血流は、Autoregulationが働いて、一定に保たれる。通常は、眼圧上昇により眼灌流圧が低下しても、眼血流量は下がらない。勿論、これには限界があって、緑内障発作のように眼圧が高度に上昇すれば、血流は止まり、虚血となるが・・。このAutoregulation機能が、糖尿病があると低下するらしい。
眼圧変動に伴う視神経乳頭の血流量の変化を、LSFGでモニターしてみる。眼圧上昇後、しばらく血流低下していて、5-10分遅れて血流は戻ってくる(Autoregulation(+))。
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/27767373/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28940022/
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/28669777/
加齢黄斑変性患者に行われる抗VEGF注射も、脈絡膜血流量を下げることがある。滲出型加齢黄斑変性に、抗VEGF治療を行っていると、一定頻度で地図状萎縮に・・。抗VEGF治療は、新生血管からの漏出も止めるが、脈絡膜循環血流も低下させる。
内頚動脈閉塞で、虹彩ルベオーシス、血管新生緑内障があり、アフリベルセプト投与していた患者さんの注射後(強い疼痛あり)、眼圧が70以上に上昇していた症例の紹介あり。2時間もすれば眼圧正常化していたが、15分後は77mmHgだった。これは、想定外の出来事?眼内液のボリュームが増えたから?入れたのがアフリベルセプトだから?
※ラニビズマブBS:加齢黄斑変性でも、糖尿病網膜症(ME)でも眼血流を低下させる。
※ラニビズマブとアフリベルセプト。局所投与後の血液のVEGF濃度が異なる。ラニビズマブは変化ないが、アフリベルセプトは大きく低下する。この血液内VEGFが低下すると、関連した副作用のリスクが上昇。末梢動脈閉塞性疾患において、悪化要因になりうる?
LaserSpecle Flowgraphy (LSFG)
https://www.softcare-ltd.co.jp/index.php/products/10-medical-appliances/14-prod-lsfg-navi.html
徐々に進化して、より広い範囲において、簡単に眼血流の状況が把握できる。非常に興味深い器械だが、私には高嶺の花やなあ・・。様々な疾患において、有用らしい:眼虚血、硬膜動静脈瘻、遠視性不同視弱視、網膜振盪、妊娠高血圧症候群・・・など。急激な眼圧上昇・下降後の変化。内頚動脈狭窄による一過性黒内障にステント留置前後の変化。BRVOにIVR(その前後)。動静脈交叉部位の血流の変化。Sheathotomy前後の変化。VKHのステロイドパルス前後の変化。楽しそうな器械だけど・・
眼虚血症候群の血流動態 あたらしい眼科39(1):9-15,2022
※眼圧の僅かな上昇、あるいは知らない間に高度の一過性の眼圧上昇があり、それが網脈絡膜循環に深刻なダメージを与えていることがある。LSFGはそれを検知する優秀な器械らしいが・・