第458回大阪眼科集談会 (その3)(1290) 低眼圧に対する処置、irAE
2024年 02月 20日

1, 線維柱帯切除術およびneedle bleb revision後の低眼圧に対して外科的処置を要した症例の1年成績 (関西医大)
レクトミーや濾過胞再建術を行った後低眼圧になり、脈絡膜剥離や低眼圧黄斑症を発症し、(遷延したから)外科的処置をした症例38眼の術後経過。低眼圧の原因は過剰濾過か房水漏出。外科的処置は、通常粘弾性物質注入and/or縫合。眼圧は、術後早期に少しだけ高めだが、1年後には一桁眼圧に落ち着く。視力は同様の経過をたどるものの、術前の視力には及ばなかったらしい。外科的処置で低眼圧は対応可能だが、黄斑皺壁の治療は簡単ではなく、視力回復は更に困難?
※濾過手術の宿命だが、術後経過良好と言えない(予想外の結果になる)症例が一定程度ある。濾過胞の形成が患者さんの創傷治癒能力に依存しているので仕方ないのだろうが、当然漏れすぎたり、漏れなさすぎたりする。出来上がった濾過胞も破れたり・感染したり・・・・・。やっかいな手術であることに変わりない。例えば100眼手術したとして、外科的処置なしに望ましい眼圧におさまるのは何眼あるのだろう。仮に50眼だとしたら、残り50眼のうち、漏れすぎて外科的処置をしたケースが何眼、漏れなさすぎて外科的処置したケースが何眼なのだろう。仮にそれが25眼ずつだとしたら、今回の発表は、(最初に漏れすぎて外科的処置した症例)+(漏れなさすぎて外科的処置をしたら漏れすぎた症例)が、ターゲットなのかな。一応術後1年程度は、良好な結果らしい。5年後は知らんけど・・。やはり濾過手術は大変・・・・。
※図は、自験例で、眼圧はもどっても長い間黄斑皺壁が残存したままになっている症例のOCT。

2, immune-related Adverse Eventsにより筋炎重症筋無力症を来した1例 (大阪医薬大)
70歳女性。2週間前からニボルマブ(オプジーボ)投与。両眼瞼下垂、全身倦怠感、歩行困難・・
両眼瞼下垂と眼球運動障害。テンシロンテスト陰性。採血で、CK(筋肉損傷程度の指標)がパニック値:7520 (>5000)。ステロイドパルス治療後、心肺停止に・・
※パニック値:恥ずかしながら初めて聞いた。
⇒『Critical Value(いわゆるパニック値):基準範囲から極端に逸脱し、放置されると重大な疾病もしくは病態の存在が見逃され、患者の予後に著しい悪影響を与えるため、担当医への迅速かつ確実な報告が必要となる検査値。』
膀胱がんに、ニボルマブを投与した後に発生したirAE。
⇒ 『おもに免疫チェックポイント阻害薬の投与により引き起こされる副作用』で、『がんに対する免疫だけを選択的に増強することはできず、免疫全般を過剰に活性化してしまい、免疫が自分自身を攻撃してしまうといった様々な自己免疫疾患を引き起こします。おもな症状として、間質性肺疾患、大腸炎、甲状腺機能低下症、肝障害、発心、下垂体炎、糖尿病、腎機能障害、末梢神経障害、重症筋無力症など全身のあらゆる臓器に生じます。』つまり、めちゃくちゃ多岐に渡るので、予期して構えておかないと、症状から推定することは困難。まあ眼科医としては、経緯を理解した上で、眼瞼下垂も注意すべき症状の一つだと理解しておく。