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前眼部炎症性疾患の治療戦略と新規治療法の開発 第3回高槻眼疾患フォーラム (1294)

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前眼部炎症性疾患の治療戦略と新規治療法の開発

近間泰一郎

前眼部炎症性疾患

まず感染性(細菌・真菌・ウイルス・原虫)と非感染性(アレルギー反応)の鑑別が重要

  1. 基本、感染は片眼性
  2. 充血・浮腫・浸潤:部位・数・程度
  3. 上皮欠損:感染では100%(+)
  4. 前房内炎症

※非感染性(アレルギー)は、病巣が周辺部。感染性は、病巣は中央に・・単発・多発・輪状・円盤状・・。浮腫も強い。

これらから、疾患を推定(診断)する。

強膜散乱法の活用
https://youtu.be/_9F4TRPNIEA?si=pq0bc7k6bVRKNgS5 

※恥ずかしながら、殆ど使ったことがないのだが、もう少し活用してみよう・・。角膜病変においては、間接照明の方が病変の広がりがわかりやすいことがある。真菌性角膜炎、角膜ジストロフィー、アカントアメーバの放射状角膜神経炎、真菌性角膜炎の免疫輪など

https://www.aao.org/education/bcscsnippetdetail.aspx?id=ce1ab280-11ac-46a1-95ba-f2a25c7f9b47

⇒『角膜における全内部反射は、間接照明のもう一つの形態である強膜散乱を可能にする。強い光線が辺縁を照らし、強膜で散乱するように等心光線を偏芯させると、角膜が非常に淡く光ります。角膜の光透過性が低下している部分はグレーの濃淡として見える。この手技は、上皮浮腫、軽度の実質浸潤、混濁、渦巻き状混濁を示すのに効果的である。』

https://www.aao.org/image.axd?id=37c8ff6d-0a86-42b9-9f92-3433bbc7731d&t=635996975996030000 

⇒ Map-dot-fingerprint dystrophy viewed withsclerotic scatter.

http://www.jbiocommunication.org/issues/32-2/assets/features/feature1/02C.html 

⇒ Slit-lamp illumination. Sclerotic scatter, aform of indirect illumination, demonstrates the widespread appearance ofgranular corneal dystrophy.


塗抹検鏡

角膜・結膜から試料をとったら、その場で染めて顕微鏡で観察する。ギムザ染色やグラム染色など・・

病変に存在する細胞の種類で、疾患が推定可能。多核白血球・リンパ球・好酸球・・どの細胞が優位なのか・・。また病原体も推定可能。(興味はあるけど・・・) 病変を観察するだけでは見えてこないものが見えてくる。感染・非感染・アレルギー・・など方向性がつかめる。

※光学顕微鏡とギムザ染色・グラム染色の準備だけなら、簡単にできそう(・・な気がする)。

眼感染症の七五三

  • 感染部位(7):眼瞼・結膜・涙器・眼窩・角膜・強膜・眼内
  • 病原体(5):ウイルス・細菌クラミジア・真菌・寄生虫
  • 検査(3):塗抹・培養・血清

  • ① エンピリック・セラピー(経験的治療):病変の形・境界・部位・原因などから疾患を推定して治療

※眼科に限らず、一般的に原因菌が判明するまでの間、抗菌スペクトラムの広い薬剤で対応する?

  • ② ディフィニティブ・セラピー(標的治療):塗抹検鏡・培養・感受性検査から原因を確認して治療を行う。

※眼科に限らず、原因菌が特定されたら最適な抗菌剤を選んで治療する。通常より狭い抗菌スペクトラムの薬剤を使用することになる。

※この原因菌が特定されて、抗菌剤の選択を広域スペクトラムのものから、狭域のものへ変更する作業をデ・エスカレーションと呼んでいるらしい。

通常の眼科検査で疾患を推定するのに加えて、培養結果を待つことなく、その場で塗沫検鏡できれば、より迅速に診断の正確性が高くなる。最初から、ディビニティブ・セラピーに近い治療が可能?

※例えば、コンタクトレンズユーザーが、角膜中央に円形・輪状の浸潤病巣・潰瘍があれば、緑膿菌感染が疑われるが、塗沫検鏡でグラム陰性の小さい細い桿菌がみえたら、最初から緑膿菌をターゲットにした治療(標的治療)が可能。

※エンピリック・セラピーをおこなう場合、患者背景を知ることが重要になる。少なくとも以下の3つははっきりさせておきたい。

  • 外傷:何かで眼を傷つけたのか。何で傷をつけたのか・・
  • コンタクトレンズ:どんな種類のコンタクトレンズを、どんな使い方をしていたのか?
  • 免疫状態:全身的・局所的に免疫が抑制されている状況はないか。ステロイドや免疫抑制点眼が長期にわたっていることはないか・・

①丸い小さな病巣で比較的境界鮮明で角膜中央近くにあれば、グラム陽性菌感染を疑う。我々開業医でもしばしば遭遇する。周辺部にあれば、アレルギーによる角膜浸潤との鑑別が問題になるだろうけど。通常、手持ちのキノロン系点眼±セフェム系点眼を頻回に行って様子をみる。

※これ以外が原因と思われる角膜感染病巣の場合、かなり身構えることになる。私なんか、あっという間に悪化するのを恐れて、大学病院に送る用意を怠らない^^;

②丸いけどもう少し大きな病巣で、境界が不鮮明だったら、かなり身構えることになる。病巣が輪状だったり、コンタクトレンズ使用の有無、病巣部以外の角膜の浮腫/混濁の程度、前房内炎症の強さも考慮すして、緑膿菌感染の可能性があると思ったら、一刻も早く大学病院に送ります。中途半端な治療が、その後の治療に悪影響を与えると困るので。ただ、これが週末とか連休前だと非常に困る。アミノグリコシド系+キノロン系点眼を頻回にしつつ、可及的速やかに専門医のいる病院を受診してもらうことになります。緊急窓口が欲しいなあ・・

あとは細菌以外、つまり真菌とアカントアメーバ。

まずは真菌。これには酵母菌糸状菌に分かれる。

③ 真菌(酵母菌):代表がカンジダ、都会型

①に似た(?)丸くて比較的境界鮮明な病巣が、角膜中央近くにある場合。ステロイド使用や糖尿病など免疫抑制状態の患者さんであれば、酵母菌感染を疑う。急速進行することは少ないと思われるので、専門病院に送る時間はありそう。

https://www.mdpi.com/jcm/jcm-10-01178/article_deploy/html/images/jcm-10-01178-g003.png 

『患者3は、Candida albicansによる穿孔性角膜潰瘍に対して治療的角膜移植術を受けたことがあり、1年後に同じ病原体による真菌性角膜炎を呈した。(A)ステロイドを中止したところ、症状および眼炎症が著しく悪化し、ヒポピヨンが形成された(B,C)。適切な抗真菌療法を開始し、ステロイドを再投入すると、患者は部分的に改善したが(D)、それでも再度の角膜移植術が必要であった。』

④ 真菌(糸状菌):代表がフザリウム、アスペルギルス。農村型

突き眼のような外傷きっかけで、境界不鮮明・羽毛状病巣があれば、糸状菌感染を疑う。角膜後面プラーク、前房蓄膿の頻度も高い。これは我々には全く手に負えない。深部に波及して穿孔する恐れもあり、早く専門医に送る必要がある。通常自家調整した抗真菌剤の点眼が必要。

※もうかなり昔の話だが、阪大から愛媛に行かれた大橋先生が、愛媛は、みかん畑で突き目で来る患者さんが多いという話をされていたのを思い出した。多分、阪大では都会型が多くて、愛媛では農村型が多いって話だったような・・。木の枝には、真菌がいて、それで突くと、単なる角膜びらんのようでも、要注意。

⑤アカントアメーバ

これは要注意。万が一アカントアメーバなら、治療は簡単じゃない。安易にステロイドも入れてはいけない。コンタクトレンズユーザーに、①②③④のいずれでもない怪しげな病巣があれば、とりあえず疑う。

できれば、初期病変と言われる多発性浸潤病巣、放射性角膜神経炎の段階で診断したいもの。

この時期を過ぎると大変。

https://www.mdpi.com/jcm/jcm-10-00942/article_deploy/html/images/jcm-10-00942-g001.png 

『アカントアメーバ角膜炎(AK)の臨床経過の代表的な画像:上皮角膜症(AI期)を示す初期AK [3]、間質浸潤と無菌性ヒポピヨン(BII期) [15]、上皮欠損と環状間質浸潤(C,DIII期) [11]、深部および表層の新生血管を伴う角膜瘢痕化(E,F)。』

Pidportの紹介

https://service.medmain.com/scene/conference 

症例提示

1,45歳女性 2eek SCL使用していて、充血・角膜びらん

偽樹枝状の境界不鮮明が浸潤病巣。怪しい・・・。なぜかフルメトロンとベストロンが入った後、改善しないので紹介受診。

⇒塗抹検鏡で、グラム陽性糸状構造物

⇒真菌性角膜炎(糸状真菌、フサリウム)

樹枝状のDD:ヘルペス、薬物毒性、MPS、アカントアメーバなど

※フサリウムは、農村型で農作業していて木の枝でついた・・・が一般的だが、コンタクトレンズユーザーでもありうる。

2,72歳女性 上皮型ヘルペス、角膜穿孔、角膜移植、白色病変(クリスタリン角膜症)

免疫能が下がっている状況での感染で、角膜所見としては、真菌感染が強く疑われる状況

⇒塗抹:グラム陽性球状菌、酵母菌

⇒培養:カンジダ

3,58歳女性 涙道閉塞でチューブ挿入(何度も再発)、涙小管炎からの角膜穿孔。チューブ抜去時、菌石排出

⇒塗抹:グラム陰性桿菌(放線菌)と大量の好中球

 

4,61歳男性 クラミジア結膜炎疑われて治療したが改善(-)

⇒塗抹:リンパ球優位

⇒診断:EKC

61歳男性。ただのEKCだったのに、ちょっと遊んだことがあったおかげで、クラミジア疑われ、根堀り葉掘り聞かれて・・・。ちょっと可哀想な61歳・・

―――――――――――――――――――

5,53歳女性

EKC後のMSI。リンデロン点眼で改善するが、中止すると徐々に悪化。提示症例は、3年後、かすみで再診。

6,9歳女児 EKC後何年もしてから、角膜混濁悪化。リンデロン点眼で改善するも中止で悪化。

―――――――――――――――――――

※最近私も経験したのだが、以外EKCに伴うMSIがステロイドを切ると再発を繰り返す症例って、結構あるらしい。ステロイド漸減して中止できなければ、免疫抑制剤点眼?

角膜感染症に対する光線力学的抗微生物化学療法(PACT

Photodynamic antimicrobiral chemotherapy

角膜病変に光感受性物質を塗布しておいて、LED照射。様々なPACTがあると思われるが、演者らは、TONS504という光感受性物質と660nmの短波長LEDを用いて研究中らしい。難治の角膜感染症。多剤耐性菌とかそもそも薬剤が効きにくいアカントアメーバとかにも活性酸素なら有効なのか・・。

超難治のアカントアメーバ角膜炎にもPACT有効らしい・・

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34190718/ 

Rose Bengal Photodynamic AntimicrobialTherapy: A Pilot Safety Study

0.1%RBを用いたRB-PDATは安全な手技である。臨床的にも病理組織学的にも、対照群と比べて差はなかった。RB色素が1ヵ月後の角膜間質に保持されている眼では、酸化ストレスは長期的には認められない。』⇒期待できる?!

演者の論文:

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31499180/ 

Antimicrobial Photodynamic Therapy with thephotosensitizer TONS504 eradicates Acanthamoeba

10mg/LTONS50430J/cm2の光エネルギーによる光線力学的抗菌療法は,栄養体の生存率を77%抑制し,20mg/LTONS50460J/cm2の光エネルギーによる光線力学的抗菌療法は,シストの生存率を42%抑制した.フルオレセインイソチオシアネート標識アネキシンVおよびエチジウムホモダイマーIIIによる染色では,光線力学的抗菌療法は,処理強度に依存して栄養体のアポトーシスおよびネクローシスを誘導したが,シストにおける細胞死はアポトーシスが優勢であった.』

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/33615522/ 

Efficacy of Photodynamic Anti-MicrobialChemotherapy for Acanthamoeba Keratitis In Vivo

『当社のTONS504-PACTは、ウサギモデルの58%で角膜炎から完全に回復した。』


by takeuchi-ganka | 2024-04-02 18:06 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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