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「小児緑内障アップデート」 第459回 大阪眼科集談会 その4 (1298)

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5年前のネモフィラ祭り


「小児緑内障アップデート」松下賢治先生(大阪大学)

特殊な分野の講演

症例数が限られるこの分野では、小児緑内障手術の専門家と言っても、年間10例ちょっとの手術症例しかないらしい。もちろん阪大で17年以上緑内障専門のキャリアがあるのだから、単純計算でも200例近い手術経験をお持ちのようですが、それでも、小児緑内障の手術というのは、非常に特殊な分野ということになる。

眼球が形態的にも機能的にも成長途中にある状況下で発症する緑内障なので、成人の緑内障とは大きく異なる対応が必要になる。

  • 3歳までとそれ以降では大きく異なる。(急速度で成長している時期とそれが少し緩やかになる時期)
  • 通常の眼科検査が簡単には行えない。(精密検査は麻酔が必要)
  • 眼圧もそう簡単には測れないし、正常値も異なる。(眼圧測定でさえ、正確には薬物で寝かせないと困難)

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WorldGlaucoma Association (WGA) における小児緑内障の診断基準

緑内障の診断基準:1-52項目以上

  • 1, 眼圧>21
  • 2, CDR増大進行、非対称CDR、リム菲薄化
  • 3, 角膜所見

(ア) Haab

(イ) 角膜径11mm以上(新生児)、12mm以上(1歳まで)、13mm以上(年齢問わず)

  • 4, 正常発育を超えた眼軸の伸長(近視化)
  • 5, 緑内障性視神経乳頭と再現性のある視野欠損があり、視野欠損の原因となる他の疾患がない。

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*我々は、眼圧測定も眼底検査さえ困難な場合が多く、頑張って角膜所見から、緑内障の存在を疑い、専門家へ橋渡し。

小児の緑内障

1,原発先天緑内障

  1. 新生児(~1M)・乳児期(~24M)・遅発性(2歳~)
  2. 若年開放隅角

2,続発先天緑内障

  1. 先天眼形成異常に伴う緑内障:Axenfeld,Peter,無虹彩・・
  2. 先天全身疾患に伴う緑内障:Marfan,Sturge-Weber,・・・
  3. 後天要因に伴う緑内障:ぶどう膜炎・外傷・ステロイド・腫瘍・ROP

成人の緑内障の場合、基本的にはまず薬物治療で、その後手術となるが、

小児緑内障の場合、まず手術。その後補助的に薬物治療を併用することもあるが・・

原発先天緑内障の治療:

隅角切開(Trabeculotomy ab interno or トラベクロトミー(ab externo

*通常はab internoで、角膜が混濁していたら、ab externoか内視鏡下で。1回やって効果不十分でも、3回はやる。その昔、躊躇せず畳み掛けるようにやるのだと・・と聞いた記憶がある。大人の緑内障と違って躊躇している時間的余裕はない。

隅角切開が無効の場合、トラベクレクトミーが行われることがあるが、成功の確率は非常に低い!レクトミーよりはインプラントがいいのかも?もしインプラントをやるなら小さなサイズのものを選ぶ。

*小さな子供にロトミー2回して、レクトミーして、その後両眼にバルベルトを入れている症例を提示されていた・・・・。ちょっと想像できない世界(*_*)

*レクトミーよりは、プリザーフローマイクロシャントの方がまだましかも・・。最終手段:毛様体光凝固?

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続発先天緑内障の場合

複雑な前眼部形成異常に対して、ケースバイケースで対応

  • 症例0:17歳、閉塞隅角緑内障:水晶体再建術+GSL
  • 症例1:2ヶ月、無瞳孔:虹彩が角膜裏面に張り付いている?閉塞隅角緑内障。諦めないで、角膜と虹彩を剥がして(GSL)、瞳孔形成。ある程度の視機能が確保・・
  • 症例2:1歳8が月、Peters異常、無虹彩:PIして眼圧正常化したが、角膜混濁
  • 症例3:3ヶ月、Peters異常(角膜混濁、実質内皮欠損・水晶体と癒着、前房消失):白内障手術、網膜剥離手術、レクトミー・・・・何とか眼圧正常化して、眼球の大きさが保たれた?
  • 症例4:4週、Peters plus症候群:角膜混濁、眼圧上昇、角膜径拡大、前房非常に浅い、瞳孔膜
  • 症例5:6ヶ月、若年性黄色肉芽腫:通常皮膚病変のみだが、稀に虹彩・毛様体に発生して、緑内障も(虹彩腫瘤・片眼緑内障前房出血・ぶどう膜炎・虹彩異色)。
  • 症例6:2ヶ月、無瞳孔、前部ぶどう腫:レクトミーしたが、最終的に内容除去

*大変な症例ばかり・・・。ただ前房がなくなっていても、視機能が救えることもある?眼圧を正常化すれば、眼球の大きさが保たれる?諦めないで、そこまでやるのか・・・と驚いてみていました。

小児の診察

眼位チェックした後、薬物で寝かし、その後眼圧測定して、診察。

手持ち細隙灯顕微鏡、双眼倒像鏡。角膜径、Aモード、Bモード、UBMRetCam・・がフルセット。

*要するに、まだ眼球が成長段階にある時期に高眼圧にさらされると、眼球の大きさに異常(大きい角膜径・眼軸長延長)をきたして、予後不良となる。発症が早期であればあるほど重症。

*早期発見の為のアプリ、スマホのアプリ(顔認証システム)を利用。

⇒眼球周囲写真に基づく小児緑内障検出のためのディープラーニングアプローチ

抄録:『小児緑内障は小児の失明の主な原因の一つであるが、その診断には大きな困難が伴う。本研究では、眼球周囲写真に基づく小児緑内障検出のためのディープラーニング(DL)モデルの性能を実証・評価することを目的とした。緑内障と診断され、外見的特徴(角膜混濁、角膜腫大、球腫大)を有する小児の一次注視写真を、単一の紹介センターのデータベースからレトロスペクティブに収集した。RepVGGアーキテクチャを持つDLフレームワークを用いて、写真から小児緑内障を自動認識した。5重クロスバリデーションの平均受信者動作特性曲線(AUC)は0.91であった。5重の結果を組み立てると、DLモデルは0.95AUCを達成し、感度は0.85、特異度は0.94であった。DLモデルは、小児緑内障の診断において、小児眼科医や緑内障専門医と同等の精度を示した(0.90 vs 0.81, p = 0. 22, カイ二乗検定)。22、カイ二乗検定)、角膜混濁のない症例(72%対34%、p0.038、カイ二乗検定)、両側角膜腫大のある症例(100%対67%、p0.03)、皮膚病変のない症例(87%対64%、p0.02)の小児緑内障の検出率では、人間の検査者の平均を上回った。したがって、このDLモデルは、見逃された小児緑内障症例を診断するための有望なツールである。』

*視路遮断弱視の治療の試み

このQDレーザーを応用して、視路が遮断されている眼の網膜にレーザーを入れることで、視路遮断弱視を予防する試み。


by takeuchi-ganka | 2024-04-24 17:51 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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