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網膜剥離治療1

アップが遅くなりましたが、
最後に治療です。
1、レーザー光線による網膜光凝固
2、強膜バックリング手術
3、硝子体手術

治療法としては、基本的には、この3つです。

※但し、原則として、レーザー光による治療というのは、網膜に裂孔ができた、或いは孔ができているが、まだ、網膜は剥がれていない状態に限ります。よく、網膜剥離をレーザーで治療したと言われる患者さんがおられますが、原則としては、剥がれる前がレーザーの対象なのです。(厳密に言えば、ごく僅かに剥離があってもレーザー光凝固術を行うことはありますが・・・・)  網膜が本格的に剥がれてくれば、なるべく早く入院の上、手術を受ける必要があります。  


網膜剥離の予防手術

  1、レーザー光線による網膜光凝固
網膜の孔や裂孔の周囲の網膜にレーザー光線で火傷を作り、その瘢痕を利用して、網膜が浮きあがりを妨げ、網膜の裏側に水が回るのを防ぎます。

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※ただ、予防的網膜レーザー光凝固術の適応は、必ずしも明確ではない。大きな弁状裂孔があり、硝子体の牽引も確認できて、放置すれば高い確率で網膜剥離に移行すると予想される場合は、問題ないが、一般人口の8%程度に存在すると言われている網膜格子状変性や、その変性内の萎縮性円孔をどうするかが問題です。格子状変性だけなら、経過観察でもいいのですが、円孔が出来ている場合、その部位に硝子体の牽引があるかどうかが問題で、牽引が全くないと、自信をもって判定できれば経過観察でもいいが、そうでない場合は、どうでしょう?経過観察が必ずしも、十分に行えて、万が一の状態にも対応できればいいでしょうが、折角原因病巣を見つけているにも関わらず、危険因子が少ないと判断して、網膜剥離を発生させてしまうようなことがあってはいけない。そう考えると、教科書的な網膜レーザー光凝固術の適応よりは、若干大きく適応を設定しても止むを得ない気がしています。


網膜剥離の手術
網膜剥離といっても、ここで述べているのは、裂孔原性網膜剥離といって、網膜に裂け目や孔ができて発生する網膜剥離です。この原因は、硝子体が網膜を引っ張って(牽引)発生しているので、その牽引を解除することが必要となります。この牽引の解除する方法に二つあります。
  一つは、眼球の外側にシリコンを縫い付けて、眼球を内側に凹ませて、牽引を緩めて解除する。もうひとつは、眼球の内側に直接アプローチして、牽引している硝子体を切除してしまう方法です。前者を強膜内陥術、後者を硝子体手術と言います。前者の強膜内陥術というのは、私が医者になった20年ほど前には、既に確立されていた術式で、当時の主任教授の宇山先生は、その達人で、驚異的な手術の成功率(網膜復位率)を誇っておられました。その頃の硝子体手術は、まだまだ発展途上であり、一つ間違うと、失明してしまう危険性を孕んだ術式というポジションでしたが、現在、その立場は、全く変わってしまいました。

  2、強膜内陥術
     従来、裂孔原性網膜剥離の基本手術。つまり、眼球の外からアプローチして治療する方法です。
通常、冷凍凝固・ジアテルミー凝固による裂孔閉鎖術と組み合わせて行われます。私が在籍していた関西医大は、京大系なので、伝統的にジアテルミー凝固しか見たことがないのですが、それ以外の病院は、冷凍凝固が多いようです。
  手術手技としては、
   1、術野の確保、2、ジアテルミー凝固、3、網膜下液の排液、4、バックルの設置
この4つでしょうか。先ず、牽引糸をおいて、しっかりと術野を確保する。ジアテルミー凝固を強膜側から行い、凝固斑で裂孔を囲む。その強膜上のジアテルミー部位を参考に、バックル(シリコン材料)の設置部位を決定し、その為の糸を強膜にかける。通常その後に、強膜を切開して、脈絡膜を切開・穿刺して、網膜下液を排液する。その後、バックル材料を設置して、糸を締めこむ。眼底検査をして、バックルの締め込みによって発生した眼底の隆起上に網膜の裂孔がのっていることを確認して手術を終える。

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眼球を内側に陥凹させることが目的なので、その為に、強膜の外側にシリコン材料を縫い付けるのをエクソプラント法、強膜を半層切開して、観音開きにして、その中にシリコン材料を設置(埋没)する方法をインプラント法といいます。裂孔位置が周辺部にある網膜剥離ほどこのインプラント法が選ばれます。
  手術成績は安定して良い成績が得られていて、安全性も確立しているこの術式は、つい数年前まで、網膜剥離の第一選択の術式でありました。もうひとつの選択肢:硝子体手術については、後日アップします。
by takeuchi-ganka | 2006-09-24 23:25 | 網膜剥離 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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