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眼感染症実践シリーズ  江口先生講演 (1305)

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我が家の梅雨入り宣言的サンゴバナ


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眼感染症実践シリーズ ~症例に学ぶ~ Vol.1

開業して25年以上経過し、キノロンが効かない結膜炎に辟易している日々なので、この手の企画は興味津々。ただ、座長の井上先生、ちょっと歳とったなあ・・。鳥取に行かれた時の若々しい教授のイメージが・・・^^; 人のことは言えないけど。

もうかなり前から、前眼部感染症に対する第一選択薬をなるべくベストロンにしているのだが、どうしてもキノロン激減とまではいかない。再度気持ちを引き締めて、ベストロンを第一選択薬と意識する。この繰り返しを続けながら、必要に応じて、アミノグリコシド、クロラムフェニコールも使っているのだが、なかなかアジマイシン点眼の位置づけは明確にならない。前部眼瞼縁炎と戦うのに、有効な武器となるのなら、少し真面目に勉強しようかな・・

1,耐性菌とは

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耐性菌の恐ろしさをアピールする為に工夫された図のような気がするが、何も対策も取らない場合(コロナの時に騒いだ某教授の言葉に似ているが・・)、2050年にはAMRに起因する死亡者はがんを上回るらしい・・。と、耐性菌の恐怖を煽っておいて本題へ・・

眼科における耐性菌の特徴

1,長いキノロン点眼歴

2,分離菌としては、

  1. MRSA,MRSE(キノロン耐性)
  2. キノロン耐性コリネ
  3. ペニシリン耐性肺炎球菌

※重症の感染症を引き起こすこともあるが、しばしば見られるのは、比較的軽症の慢性の前眼部感染症。(しばしば経験しています^^;)耐性菌は、薬剤に対する感受性がないのであって、強い病原性を持つという意味ではない。

※耐性菌は一般的に増殖速度遅い。

年代

出来事

代表的な耐性菌

備考

1928

アレキサンダー・フレミング、ペニシリンを発見

-

ペニシリンは人類初の抗菌薬であり、その発見は画期的な出来事となった。しかし、その後の研究により、ペニシリン耐性菌が存在することが明らかになった。

1940年代

ペニシリンの臨床使用開始

ペニシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)

ペニシリンの臨床使用開始に伴い、MRSAなどのペニシリン耐性菌が出現し始めた。

1950年代

メチシリン、ストレプトマイシンなどの抗菌薬開発

メチシリン耐性黄色ブドウ球菌 (MRSA)、ストレプトマイシン耐性結核菌

ペニシリン耐性菌に対抗するため、メチシリン、ストレプトマイシンなどの新しい抗菌薬が開発された。しかし、これらの抗菌薬に対しても耐性を持つ菌が出現し始めた。

1960年代

テトラサイクリン、アミノグリコシド系抗菌薬などの開発

テトラサイクリン耐性菌、アミノグリコシド系耐性菌

1960年代には、テトラサイクリン、アミノグリコシド系などの新しい抗菌薬が開発された。しかし、これらの抗菌薬に対しても耐性を持つ菌が出現し始めた。

1970年代

バンコマイシン、キノロン系抗菌薬などの開発

バンコマイシン耐性腸球菌 (VRE)キノロン系耐性菌

1970年代には、バンコマイシン、キノロン系などの新しい抗菌薬が開発された。しかし、これらの抗菌薬に対しても耐性を持つ菌が出現し始めた。

1980年代以降

多剤耐性菌 (MDR) の出現

多剤耐性アシネトバクター (MDRAB)、多剤耐性緑膿菌 (MDR-P. aeruginosa)

1980年代以降は、複数の抗菌薬に耐性を示す多剤耐性菌 (MDR) の出現が問題となっている。MDRは治療が非常に困難であり、死亡率も高いため、公衆衛生上の重大な脅威となっている。

新たに生まれた耐性菌を叩く新しい抗菌剤開発も重要だが、耐性菌問題の本質は、抗菌剤の使い方にある。ヨーロッパの調査でも国によった耐性菌の比率は大きく異なる(抗菌剤の使い方の問題)。

https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/26200173/ 

2,周術期の抗菌点眼薬

  • 周術期の点眼は何を:いつまでもレボフロキサシンでいいのか?
  • 術前点眼はいつから行うべき:3日前、1日前、1時間前 ⇒手術日、菌検出率が最も低いのは3日前だが、それでいいのか?
  • 術後点眼はいつまで:1ヶ月、2週間、1週間、不要 ⇒2週間点眼後、耐性菌が激増しているのは確か・・。解決してないが、現時点でのコンセンサスは、術前3日、術後2週から1月?

https://www.frontiersin.org/articles/10.3389/fcimb.2023.1172345/full 

眼表面のマイクロバイオームは、術前3日間の点眼でも、術後の点眼でも大きく変化する。長期間にわたってキノロンが点眼されていた眼の手術は要注意。一旦中止するか、どうしても必要なら他の点眼に変更すべき。

抗菌剤点眼の使用状況だが、欧米では、キノロン・アミノグリコシド・マクロライドなどが均等に使われているが、日本は、極端にキノロンの処方割合が多い(由々しき問題?)。

キノロン以外の選択肢

  1. セフェム系:ベストロン
  2. アミノグリコシド系:トブラマイシン
  3. クロラムフェニコール:オフサロン
  4. マクロライド系:アジマイシン https://www.senju.co.jp/medical/products/61 

このアジマイシンという点眼は、ちょっと特殊で、結膜炎にも適応があるが、眼瞼炎がメインターゲット?

眼瞼縁は①前部(睫毛根部より前、grey lineより前)と②後部(マイボーム腺開口部付近)に分けられ、この付近の炎症、眼瞼縁炎にアジマイシンは有効。純粋に抗菌剤としての役割以外にも、マイボーム腺機能不全にも効く?

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https://www.aao.org/education/bcscsnippetdetail.aspx?id=4e50a7ba-97a9-4136-8099-89aa8487488b 

https://takeganka.exblog.jp/32671657/  ⇒自分のブログから

1,前部眼瞼縁炎

ブドウ球菌性眼瞼縁炎:眼瞼縁睫毛根部のブドウ球菌の感染。睫毛根部にフィブリン様付着物(カラレット)が特徴。ブドウ球菌の外毒素の影響で、皮膚びらん・潰瘍・結膜炎・SPK(下方)などが生じる。免疫反応によるカタル性角膜浸潤や角膜フリクテンにも注意。通常、感受性のある抗菌剤の点眼・軟膏、時にステロイド軟膏も併用して対応。

時に難治のこともあり、毛根や皮脂腺に毛嚢虫が生息していていることもある。治療としては、睫毛根部を中心とした眼瞼清拭をアイシャンプーやティーツリー洗顔フォームで行う。純粋に感染症という側面と、眼瞼の不衛生とか化粧品・薬物などのアレルギーという側面があったり、病態が複雑で難治なことも・・・。ただ、この領域の病的所見の程度を患者さんの愁訴の強さは一致しない印象がある。

https://www.optometricmanagement.com/issues/2019/june/diagnosing-dry-eye-what-we8217re-actually-looking-to-identify/ 

2,後部眼瞼縁炎(=マイボーム腺炎)

これはマイボーム腺開口部の炎症ということなので、通常マイボーム腺炎。マイボーム腺開口部の所見(発赤腫脹)に注意する。非常に眼表面に近い部位での炎症性疾患なので、眼表面上皮障害を伴うことが多い。これに関連して角膜にSPK,炎症細胞浸潤、そして血管侵入を認める病態がマイボーム腺炎角膜上皮症と呼ぶ。複雑な形をした角膜上皮障害の原因がマイボーム腺炎にあるもので、診断治療が難しい。フリクテン性(若い女性に多い)と非フリクテン性がある。

Pアクネスが原因と思われる場合は、セフェム系、その後クラリスロマイシン内服。点眼もセフェム系。ちょっと良くなったと思って治療中断すると再発しやすいようで、長期にわたる治療が必要。私の手には負えないかも・・

マイボーム腺機能不全は、この後部眼瞼縁炎の結果なのか、それとも原因の一つなのか。ドライアイの勉強会で受ける印象は、感染症というより、加齢に伴う機能不全という感じだけど、江口先生のような感染症の専門家の話を聞いていると手強い感染症という印象。ただ、前部眼瞼縁炎もそうだが、所見と愁訴が必ずしも一致しない気がする。

この難治の感染症にアジマイシン点眼が有効かも。前進していた皮膚粘膜移行部が後退(正常に近い位置へ)し、角膜上皮障害も改善する(事がある)。マイボーム腺の炎症が改善し、マイボーム腺機能も回復するから?保険適応のないマクロライド系内服を長期に使えと言われてもできない相談だが、アジマイシン点眼を2週間なら可能。ただ、通常慢性経過をたどり、長期間続いていたこの疾患が、2週間だけ点眼して良くなるのかなあ・・・(懐疑的な私)。

再び周術期の話に・・・

術後感染の原因(感染源)

  1. 外眼部・涙道の感染症
  2. 手術器具・手術室などの汚染

白内障術前に眼瞼縁の状態をしっかりみて、感染症の側面があれば、治療して術後感染リスクを減らすことが重要だし、マイボーム腺機能不全やドライアイがあれば、術前に治療しておくことで、術後の自覚症状の改善につながると・・。

細菌性結膜炎での点眼薬の選定方法(江口式?)

1)長期間キノロンの使用歴がない場合

検鏡培養が理想で、もし行えたら、その結果に準じて治療するが・・そうでない場合は、

まずベストロンかアジマイシンから。有効なら中止、無効ならキノロンへ?

2)長期間キノロンの使用歴のある場合

検鏡培養が理想で、もし行えたら、その結果に準じて治療するが・・そうでない場合は、

MRSAMR-CNS、コリネを意識して抗菌剤をチョイス。ベストロン、アジマイシン、トブラシンなど・・

コリネやストレプトコッカスなら改善する(筈)。悪化ならMRSAMRSE結膜炎の可能性、クロラムフェニコール、バンコマイシンへ

※開業医なら殆どが経験あると思うが、内眼角や外眼角にクリーム状眼脂、充血、潰瘍などを繰り返す高齢者の結膜炎の頻度は非常に多い。もう何度も何度も繰り返している場合、キノロンが効かないことなどしばしば。当然次の選択肢としては、ベストロンかトブラシンを用意しているのだが、これからちょっと使いにくいけど、アジマイシンも選択肢かな。これも効かない場合、以前希釈したイソジンを使ったこともあったが、沁みる・・と評判悪かった^^;


by takeuchi-ganka | 2024-06-26 19:19 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka