第60回日本臨床眼科学会8

10月8日 日曜日
最終日です。もう、体力・気力が残っていませんが、この日は、
1、インストラクションコース60:閉塞隅角緑内障の治療戦略
2、インストラクションコース61:眼科画像診断
学会終了後は、平成18年度医療機器・販売業等の管理者に対する継続的研修を受けてきました。

体力気力のこっていないのですが、このインストラクションコース60:閉塞隅角緑内障の治療戦略だけは、聞いておかないといけません。緑内障治療が大きく変わろうとしているのです。聞き捨てならん内容を含んでいる筈ですので・・

インストラクションコース60:閉塞隅角緑内障の治療戦略
1、隅角閉塞のメカニズムと治療の考え方(神戸中央市民の栗本先生)
2、原発閉塞隅角緑内障の新しい国際分類(PACS,PAC、PACG)(京大の田辺先生)
3、瞳孔ブロックの解除と周辺虹彩切除術の実際(倉敷中央の岡田先生)
4、急性閉塞隅角緑内障に対する白内障手術(和歌山日赤の萩野先生)
5、慢性閉塞隅角緑内障に対する白内障手術(永田眼科の広瀬先生)
6、隅角癒着解離術の実際(永田眼科の黒田先生)
7、レーザー虹彩切開術のあるべき適応をさぐる(神戸中央市民の野中先生)



1、隅角閉塞のメカニズムと治療の考え方(神戸中央市民の栗本先生
一番問題点を含んでいる内容でした。
原発閉塞隅角緑内障は、確かにマルチメカニズム。
①瞳孔ブロック
②プラトー虹彩形状
③水晶体前面の前方移動
レーザー虹彩切開術は、①のみにしか効かないし、合併症も重篤。原発閉塞隅角緑内障の原因は、殆どが①と考えていたが、その割合は意外と小さい。だからレーザー虹彩切開術しても追加治療が必要。だから、白内障手術を基本術式として、治療を組み立てましょうということらしい。
 問題点
1)水晶体前方移動とうのは、瞳孔ブロックを強くする要素なので、独立した要素じゃない。
2)レーザー虹彩切開術しても眼圧が下がらない、つまり瞳孔ブロックを解除しても眼圧が下降しないのは、既に、眼圧上昇の原因が、広範囲の周辺虹彩前癒着だから。勿論、その原因は、瞳孔ブロックが主。
3)瞳孔ブロック以外の要因(特に水晶体前面の前方移動?)が大きいというが、もしそうなら予防的レーザー虹彩切開術された眼が、プラトー虹彩形状のみで、水晶体前面の前方移動のみで、周辺虹彩前癒着が悪化、眼圧上昇することは、非常にまれだと思うのですが。

2、原発閉塞隅角緑内障の新しい国際分類(PACS,PAC、PACG)(京大の田辺先生)

この分類は、海外にそろえないといけないので採用せざるを得ないのでしょうが、病名とステージ分類を混同しているように思えてならない。また、続発緑内障はどうするのだろう。


3、瞳孔ブロックの解除と周辺虹彩切除術の実際(倉敷中央の岡田先生)

なつかしい、外科的周辺虹彩切除の話です。
レーザー虹彩切開術が危険なので、時代を逆戻りさせようというのでしょうか。

4、急性閉塞隅角緑内障に対する白内障手術(和歌山日赤の萩野先生)

発作眼こそ、水晶体亜脱臼による続発緑内障などを含んでいる可能性もあり、緑内障の評価も不十分で、いきなり手術というのは、大問題。全く賛成できません。自分の病院だけにしていただきたいものです。

5、慢性閉塞隅角緑内障に対する白内障手術(永田眼科の広瀬先生

長期にわたって、いつも、我々に緑内障治療の指針を示し続けておられる永田先生が、レーザー虹彩切開術の適応を大きく変えられたのでしょうか。レーザー虹彩切開術件数が、5年前に年間169眼から昨年は14眼に減ったのです。慢性閉塞隅角緑内障なので、発作眼とは異なって、GSL単独よりも水晶体とってしまった方が、良く効くのは確かなのでしょうが・・・。神戸発じゃなくて、永田眼科発のレーザー虹彩切開術の適応基準を示してほしいものです。

6、隅角癒着解離術の実際(永田眼科の黒田先生)
実際の手術のポイントを説明されていました。

7、レーザー虹彩切開術のあるべき適応をさぐる(神戸中央市民の野中先生)
いま、レーザー虹彩切開術には、猛烈な逆風が吹いています。でも、一体、どの程度危険なのでしょうか?全く、数字が出てこない。日本全国で膨大な数のレーザー虹彩切開術が行われている(確かに、やりすぎている病院やクリニックがあると思います。噂も聞いたことはあります。この点は、猛省を要するでしょうが・・・・)。発生率が非常に低いとしても、角膜専門病院には、かなりの数の水疱性角膜症患者さんが訪れているのでしょうが、発生率は不明なまま。恐怖感のみが煽られているような気がします。怖い怖いばかりで、どの程度怖いのか全くわからないまま・・
 また、狭隅角眼の10%が閉塞隅角緑内障になったするLoweの古い報告がありますが、今の基準で、どの程度の狭隅角眼の何%が閉塞隅角緑内障になるのかは、不明なままです。
 レーザー虹彩切開術は、適応も不明、合併症も不明なまま彷徨っています。

この講演で提示されたのは、

急性閉塞隅角緑内障予防の必要性
    中心前房深度(角膜後面から水晶体前面まで)(UBMで測定)
  ~1.6mm :急性閉塞隅角緑内障のハイリスク、予防必要
             ①暗室うつむき試験で、6mmHg以上上昇
             ②UBM画像上虹彩の前方膨隆が高度(0.3mm以上)
1.7~2.0mm :急性閉塞隅角緑内障を起す可能性あり、症例により予防必要
2.1~      :急性閉塞隅角緑内障のリスクは非常に低いため、予防不要

※確かに、急性閉塞隅角緑内障を起すのは、多くの場合、非常に浅い前房で、1.6mmあたりで区切るのは妥当かもしれません。ただ、閉塞隅角緑内障は、前房深度がかなり深くても発生しています。その場合、レーザー虹彩切開術に消極的になる理由を慢性閉塞隅角緑内障にレーザー虹彩切開術の効果が低いから・・・と言われているのですが、ここが問題で、もともとの原因は、瞳孔ブロックで、周辺虹彩前癒着が発生するのです。眼圧上昇は、この周辺虹彩前癒着の範囲が広くならないと生じません。レーザー虹彩切開術が行われたとしても、周辺虹彩前癒着が外れる筈もないのですから、たいして眼圧が下がる筈はないのです(眼圧がスパッと下がるのは、隅角閉塞が器質的なものでなかった場合のみだと思います)。だから意味がない・・・・のではなく、瞳孔ブロックが継続する間は、周辺虹彩前癒着を増加させる可能性(止まるかもしれませんが)があり、それが、閉塞隅角緑内障を難治にしていくわけです。だからレーザー虹彩切開術していた訳です。決して、眼圧を下げる為にしているのではない(現実は、少し下がるのですが)。
レーザー虹彩切開術が効かないからといって、慢性閉塞隅角緑内障は、原因が瞳孔ブロックじゃなくて、他の要因が大きいだなんて・・・・・
例えば、前房深度が深くて、プラトー虹彩要素が絡んで、隅角が非常に狭い場合はどうでしょう。周辺虹彩前癒着が20%あって、IC値は、0.2mmと中等度の瞳孔ブロック。この眼は、PPT陰性なら、レーザー虹彩切開術適応外なのでしょうが、確実に、慢性閉塞隅角緑内障へと進むと思います。原因は、マルチですが、容易に解除可能なのは、瞳孔ブロックのみです。この眼に白内障がなくても、白内障手術をするのでしょうか。疑問が残ります。更に言えば、こういった、少し深めの前房深度、既に周辺虹彩前癒着が発生、ICが中途半端というのは、チン小体の脆弱性が危惧されます。瞳孔ブロックは、変動し、今日は、IC 0.2でも、別の日には、0.3かも0.4かもしれません。たまたまその日は、PPT陰性でも、別の日には、陽性かもしれません。PPTなんてそんなもの。でも、周辺虹彩前癒着があるのは、瞳孔ブロックがもっと強い時があったから・・・。我々は、周辺虹彩前癒着をみて、そう判断して、瞳孔ブロックを解除に行っていたのでしょう?違いますか?
かつて、レーザー虹彩切開術が導入される以前は、瞳孔ブロック解除手段は、外科的虹彩切除術(PI)だけでした。臨床的に初めてレーザー虹彩切開術が行われたのが、1971年。Abrahamのレーザー虹彩切開術の報告が1975年。白土先生の報告が1981年。この頃から普及しはじめたのだと思います。Rivera AHらの報告では、虹彩切除術とレーザー虹彩切開術の合計数は、1970年代に約20として、1980年からレーザー虹彩切開術が増加し、1981年に約40、1982年には約80と毎年倍倍と増加したことを報告しています。当時と比べて、今では、どれほどの数になっているのでしょうか。つまり、気軽に、あぶなっかしい眼の瞳孔ブロックを解除できたから、こじれた緑内障が減ったのではないでしょうか。もし、本当にレーザー虹彩切開術が危険だというなら、瞳孔ブロック解除の敷居をかなり上げることになる訳で、慢性閉塞隅角緑内障の大量発生は確実ではないかと危惧します。
何でもかんでも、気軽にレーザー虹彩切開術しろと言っているのではありません。将来閉塞隅角緑内障発生の可能性を十分に考慮した上で、慎重にレーザー虹彩切開術の適応を決める必要があります。やたら、レーザー虹彩切開術している人もいるようなので、そんな人達は言語道断ですが、だからといって、急激なレーザー虹彩切開術の適応基準の変更は、問題じゃないでしょうか。
Commented by コウジ at 2007-10-17 12:21 x
初めまして。
初心者の質問で申し訳ありません。
普通は手術後にクラビットなどの抗生剤の点眼ってしますよね?
LI の手術後はどうなのでしょうか?
先生の立場から教えて下さい。
Commented by takeuchi-ganka at 2007-10-18 22:02
レーザー虹彩切開術は、切開しない、非観血的手術なので、抗菌剤不要です。ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬、降圧剤の点眼などが行われたりしますが・・・
Commented by コウジ at 2007-10-19 12:22 x
ありがとうございました。一般の常識的な観点からすれば、必要なのかな?と思い…。納得しました。
by takeuchi-ganka | 2006-10-22 17:04 | 学会報告 | Comments(3)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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