2024年 10月 23日
第462回 大阪眼科集談会 その4(1321) 特別講演 感染性角膜炎診療ガイドライン

<特別講演> 座長: 江口 洋 先生(近畿大)
「感染性角膜炎診療ガイドラインをひもとく」宮﨑 大 先生(鳥取大学)
https://www.nichigan.or.jp/Portals/0/resources/member/guideline/infectious_keratitis_3rd.pdf

※ 診断治療に有用な方法は普遍的なものではなく、専門医・非専門医、或いは開業医・基幹病院・・立場によって異なる。今まで聴いたこの手の講演とは微妙に異なる。
CQ1 細菌性角膜炎の診断において有用な検査は何か?
塗抹検鏡、培養検査は必要・重要なのだが、慣れないと簡単ではない。勿論しっかり経験を積んでやれば、重要な情報が得られるのだろうが、一般的には(開業医レベルなら)、細隙灯顕微鏡所見から、起炎菌を推定して、治療を行い、重症例・真菌性疑い・アカントアメーバ疑いは速やかに紹介すべき。
※経験的治療が通じない例として、ナイセリア、緑膿菌。
※個人的には、軽症であれば、フルオロキノロン系とセフメノキシムを頻回点眼で様子を見るがこともあるが、なるべく複雑な治療をしないで紹介すべきと思っている。
症例1:70歳男性、ロトミー・レクトミー・水疱性角膜症、そして角膜混濁⇒感染性クリスタリン角膜症
――――――――――――
https://takeganka.exblog.jp/32848418/
以前集談会での発表:感染性クリスタリン角膜症の2例
〇中山弘基、釼祐一郎、佐々木香る、千原智之、城 信雄、髙橋寛ニ(関西医大)
70歳男性、POAGで、レクトミーして、濾過胞再建術2回し、リンデロン×4点眼中、角膜に星芒状混濁出現・・。リンデロン漸減して、ベストロン・ガチフロ点眼したが、角膜浸潤・潰瘍、前房蓄膿も。点眼毎時にして、軽快へ。Abiotrophia defectivaが検出。
70歳男性。POAGで右眼にレクトミーや濾過胞再建を計5-6回行い、緑内障点眼+リンデロン×4していて、角膜に星芒状混濁出現。
※今回は、2例とも複数回手術されていて、リンデロン点眼継続中に、角膜に生じた星芒状混濁。
眼科グラフィック vol2 no 4 2013の眼科診断トレーニング『カンジダによるクリスタリン角膜症』によると、『ステロイドなどの免疫抑制剤が投与されている状況では、微生物は活動を停止して、あたかも沈着物のような所見を呈する』・・とある。特に弱毒菌(低い毒性・遅い増殖・特殊な栄養が必要)だとなりやすい。リンデロンを中止するとマスクされていた炎症が見られるようになるが、抗菌剤を頻回点眼して治療
基幹病院においては、当然①培養・塗抹、②PCR・次世代シークエンス技術を用いて、病原菌を特定して治療を行う。
https://www.cosmobio.co.jp/support/technology/a/next-generation-sequencing-introduction-apb.asp
細菌性なのかそれ以外なのか・・。16S rRNA定量PCRを行い、一定量以上存在するようなら、次世代シーケンサーで解析して、病原菌を同定。
https://www.repertoire.co.jp/research/technology/16srrnainfo/
結果としては、培養で特定できなかった場合でも、次世代シーケンサーの解析結果によると、起炎菌は所謂4大起炎菌が上位だったらしい(モラクセラ・緑膿菌・黄色ブ菌・肺炎球菌)。
CQ2 単純ヘルペスウイルス角膜炎の診断において有用な検査は何か?
免疫クロマトは有用だが、開業医としては、細隙灯顕微鏡所見が基本に、臨床診断を行い、疑いが強ければ抗ウイルス薬(ゾビラックス)投与。勿論重症例は基幹病院へ。
専門医においては、PCRを行い、ウイルスの検出・定量を行い、治療法もウイルス量を見ながら行うことに・・
CQ3 上皮型角膜ヘルペスの治療に抗ウイルス薬の全身投与は推奨できるか?
上皮障害が強ければ(長引いた時)、内服の選択肢あり。ウイルス量が多いときも・・・
※アメナメビルは、アシクロビルと作用機序が異なり、ウイルス量抑制には有効。併用有効?
CQ4 上皮型角膜ヘルペスの再発予防のための抗ウイルス薬の投与は推奨できるか?
あまり一般的にではない。何度も実質型の再発を繰り返している場合はあり?
CQ5 細菌性角膜炎の治療に副腎皮質ステロイド点眼の併用は推奨できるか?推奨できるとすればどのような場合か?
勿論、基本的にはステロイドは使わないし、使用が禁忌に近い場合もあるのだが、感染性角膜炎の病巣では非常に多彩なイベント(サイトカインストーム)が起こっていて(ホストが病原体と懸命に戦っている)、ステロイドはこれを抑える効果がある(武装解除?)。専門家が、病原菌を特定できていて、必要な薬剤を使用できる状況にあって、病状がステロイド使用に耐えられる状況なら、使用していいかも(武装解除可能)。
CQ6 真菌性角膜炎の治療にポリコナゾール自家調整剤点眼は推奨できるか?
個人的には、簡単に戦いを挑んでは行けない相手と考えていて、すぐに基幹病院送りとしているが、送るまでとりあえずピマリシン点眼で治療開始していい?
基幹病院では、擦過・鏡検・培養して、治療へ。真菌を特定できない場合は、ピマリシンかポリコナゾール。MUT trialではピマリシンがいい?(ただ、これはインドでのスたデイでフザリウムが多く、この場合圧倒的にピマリシンの方が有効なので・・)
- 酵母菌⇒ボリコナゾール、糸状菌⇒ピマリシン
- フザリウム⇒ピマリシン、アンホテリシン
- アルテルナリア⇒ピマリシン、ミカファンギン、ボリコナゾール、イトリゾール
CQ7 アカンアメーバ角膜炎の治療に自家調整剤点眼は推奨できるか?
非専門医には、全く手に負えない疾患。すぐに紹介すべき。
専門家が行っても、難治。時間がかかるし、治りにくい。⇒ 角膜擦過(3日に1回)・クロルヘキシジン、ボリコナゾール、フルコナゾール点眼、クラビット点眼、イトラコナゾール内服・・・。つまり、角膜削って(エキシマを使用することも)は、抗菌剤・抗真菌薬点眼を繰り返す。
※ステロイドはアメーバが奥に行ってしまって、難治となるので、禁忌。PCRでアメーバが完全に陰性になったら、最後にステロイド使用可能。