2024年 10月 31日
アジマイシン点眼液1%発売5周年企画 後部眼瞼炎 (1323)

アジマイシン点眼液1%発売5周年企画
眼感染症 実践シリーズ
~症例に学ぶ~
今まで、製薬会社の発売○周年記念講演などと称する講演会はやまほどあったが、今回ほど実りのある講演会は久しぶり。元々キノロン一辺倒の処方に疑問を抱いて、ベストロン・トブラシン・オフサロンなどを常備していたが、中々ベストロン以外の点眼使用のモチベーションが高まらずに困っていたが、この手の講演は影響力ありそう・・
現在使用可能な点眼
- フルオロキノロン系:モキシフロキサシン・レボフロキサシン
- セフェム系:セフメノキシム(ベストロン)
- アミノグリコシド系:トブラマイシン
- クロラムフェニコール:クロラムフェニコール
- 環状ペプチド系:コリスチン
- グリコペプチド系:バンコマイシン
- マクロライド系:アジスロマイシン
今回の講演の主役、アジスロマイシン点眼は、以前は眼科医に馴染みのなかったマクロライド系の抗菌薬で、ねばーっとしていて、組織移行性が良好で半減期も長い。アクネにも効き、眼瞼縁炎に有効らしい。マイボーム腺の脂を増加したり、抗炎症効果があったりと、他の抗菌剤とはかなり様子が異なる。他の抗菌剤点眼と違って、しっかり予備知識を入れておかないと、簡単には使いにくい。
症例1:18歳男性で、フリクテン型のマイボーム腺炎角膜上皮症(前部眼瞼炎・後部眼瞼炎+角膜フリクテン)。重症の角膜病変。セフェム系内服、ベストロン・フルメトロン点眼×4、オフロキサシン軟膏×1で、時間をかけて治療したが、強い瘢痕が残り、視力は不良。DALKして視力回復したが、高度の乱視残存。

マイボーム腺機能不全(MGD)は、実は高齢者には非常に多く、個人的には加齢により誰にでも起こり得るもののように思える。高度になれば、開口部付近の血管は拡張し、マイボーム腺は目詰まりし、瞼縁は不整となる。ただ、所見がかなり高度であっても、何も症状がないこともあれば、軽度であっても不快な症状を強く訴えるケースもあり、いつの間にか、MGDの多くはスルーしてしまう所見になりつつある。ただ、感染・炎症を伴ってくると別で、当然治療が必要になる。
マイボーム腺内でアクネス菌や表皮ブ菌が増殖すると、リパーゼが産生され、それがマイボーム腺の脂質を分解すると遊離脂肪酸が増加して炎症を引き起こすというメカニズムらしい。この部位で、炎症が起これば、当然角膜上皮にも影響が出る(マイボーム腺炎を見過ごすとドライアイに見えるかもしれない)。
アジスロマイシンは、マイボーム腺内の細菌増殖を抑え、リパーゼを阻害し、遊離脂肪酸による炎症も抑えるらしい。
マイボーム腺炎が原因の角結膜上皮障害をMRKCと呼ぶが、若い女性に多いフリクテン型と高齢者に多い非フリクテン型とがある。マイボーム腺炎にアジスロマイシン点眼は有効で、フリクテン型でより有効らしい。従来であれば、マクロライド系/テトラサイクリン系抗菌薬内服+セフェム系点眼だったが、このアジスロマイシン点眼のみで十分だと。ただし、差し心地がかなり悪い点眼なので、あらかじめ説明が必要。
※染みる・ねばつく・かすむ・・
- 前部眼瞼縁炎:治療に抵抗することが多いが、アイシャンプーなどで、眼瞼清拭(Lid hygiene)+タリビッド眼軟膏塗布を粘り強く・・
- 後部眼瞼縁炎:マイボーム腺炎なら、アジスロマイシン点眼。或いはマクロライド系/テトラサイクリン系抗菌薬内服+セフェム系点眼。マイボーム腺炎以外なら、その原因に対する対応が必要。
※前後の眼瞼縁炎が混在している場合は、複雑だが、それぞれに対応が必要らしい。
最後に酒皶(Rosasea)
※質疑部分
- マイボーム腺開口部に部分的な炎症所見がある場合、アジマイシン有効。
- マイブムの中だけの培養は結構難しいし、陰性多い。陽性に出ても、アクネ・表皮ブ・コリネなどが多く、それが起炎菌なのかどうか判断が難しい。所見と合わせて起炎菌かどうか判断することになる。通常、嫌気培養も併用する。マイブム採取時、イソジン塗布してから・・という人もいる。
- MGD単独にアジマイシンは無効。あくまで炎症所見がある場合のみ。多くの無症状のMGDは何もしない。症状があれば、リッドハイジーン、ホットパックしかない。炎症があれば、アジマイシン。
- ミノマイシン長期投与は保険適応外で、いちいちコメント書いても難しいことあり。
- フリクテン型MRKCに皮膚病変を伴うものを、酒皶と理解していい?日本人には少ない。体質:感染(菌の増殖)⇒リパーゼ・分解された飽和脂肪酸⇒炎症
- アジマイシンで改善したら・・・。20%ぐらいは、もう何もしなくても大丈夫だが、80%は、1ヶ月ぐらいして再発したり・・・再度アジマイシン投与。1ヶ月空いたら再投与OK
- 眼瞼縁軽く擦過だと、表皮ブ菌だけだったり・・。マイブム圧出して、それだけをとればいいのだが、なかなか難しい。イソジン塗布してから、圧出して採取。好気と嫌気両方だす。
- 後部眼瞼炎は、グラム陽性ばかり。アジマイシンは、グラム陰性には効きにくいので、後部眼瞼炎にうまくフィットした薬剤。
- アジマイシン効かない場合:後部眼瞼炎に間違いないと思うなら、テトラサイクリン系/マクロライド系の内服で、点眼はセフェム、炎症強ければフルオロメトロン併用。つまりアジマイシンが出る以前の古い治療をトライしてみる。
- 実は、麦粒腫にも適応あるし、100%有効だった。滞留性と浸透性がいいのがポイント