第35回日本緑内障学会 シンポジウムから SY4-4 核酸医薬の展望(1325)
2024年 11月 17日

SY4-4 核酸医薬の展望
瀧原祐史(熊本大)
※暗号のような言葉が並ぶ講演。辞書を引きながら・・・
コロナワクチンで、一般的にも知られるようになった核酸医薬について。
抗体医薬は、細胞外・細胞表面のタンパク質をターゲットにするが、核酸医薬は、細胞内の核酸をターゲットにしている。塩基配列に特異的で、高い特異性をもってターゲットにアプローチ可能。コロナワクチンもそうであったように、速い速度で化学合成可能。安全性は知らんけど・・
家族性アミロイドポリニューロパチー
『家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP:familial amyloid polyneuropathy)とは、トランスサイレチン(TTR)の遺伝子変異によって、全身のさまざまな臓器に異常な線維状の不溶性タンパク質であるアミロイドが沈着し、機能障害を起こす病気です。最近は、遺伝性トランスサイレチンアミロイドーシス(ATTRvアミロイドーシス)と呼ばれることが多くなっています。』
パチシランの開発
https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/series/drug/update/201908/562041.html
⇒『TTRメッセンジャーRNAを標的として遺伝子発現を抑制(サイレンシング)し、TTR蛋白質が作られる前にその産生を阻害するRNA干渉治療薬である。』 肝臓をターゲットにして薬剤で、全身的にはアミロイドーシスを抑制できるが、網膜色素上皮が産生するアミロイドは抑制できず、眼アミロイドーシスは発症するらしい。続発緑内障を引き起こし、レクトミーも成績不良。原因はアミロイド沈着。
『2′-O -ヘキサデシル(C16)をsiRNAに結合させた』TTRsiRNAを硝子体注射して、網膜色素上皮でのTTR産生を半分に抑えることに成功。安全性も証明された。眼アミロイドーシス予防につながる可能性あり。
※2光子励起顕微鏡
https://annex.jsap.or.jp/photonics/kogaku/public/40-04-kougakukoubou.pdf
⇒『二光子励起顕微鏡の最大の特徴は,通常の蛍光顕微鏡(共焦点顕微鏡を含む)が不得意とする不透明標本の深部観察性能であり,生体組織の内部を非侵襲のまま蛍光観察できることである.』
これにより線維柱帯・シュレム管・集合管の観察が可能。
これを用いて、アミロイドーシス実験モデルマウスでの線維柱帯・シュレム管・集合管を観察して病態解明へ・・
FAPへのゲノム編集技術
CRISPR-Cas9:https://m-hub.jp/biology/4829/332
『CRISPR-Cas9(クリスパー・キャスナイン)とは、DNAの二本鎖切断を原理とする遺伝子改変ツールです。部位特異的ヌクレアーゼを利用するゲノム編集ツールの中でも、簡便で安価という特長があります。CRISPR-Cas9は、ガイドRNA(gRNA)と、ヌクレアーゼであるCas9から構成されます。gRNAは、標的とするDNA配列を特異的に認識して結合し、Cas9を導きます。そして、Cas9がDNAの二本鎖を切断します。細胞には切断されたDNAを修復する機構がありますが、正確に修復できずにエラーが発生することがあります。この修復エラーを利用して、遺伝子を改変します。CRISPR-Cas9は、主に遺伝子の機能欠損(ノックアウト)のために使われます。ノックアウトだけでなく、DNAドナーテンプレートを同時に導入することで、標的遺伝子に新しい配列を組み込む(ノックインする)こともできます。』
※DNAを思い通りの部位で、切ったり、改変したり、自由自在なのか・・
この技術を用いて、細胞内に入りTTR遺伝子を切断して、TTRタンパク質産生を抑制。NTLA-2001を1回静脈注射するだけで、1年間有効だった。(注射した薬物が肝臓に取り込まれ、細胞内のTTR遺伝子を切断して、TTRタンパク質産生を1年以上にわたって抑制可能)
https://www.setsurotech.com/media/crispr-210906/
この技術を用いた緑内障治療の可能性
1,Bamosiran点眼:β2アドレナリン受容体を選択的にサイレンシングするためのsiRNA(低分子干渉RNA)。これがチモロール非劣性だったと。
https://clinicaltrials.gov/study/NCT02250612?term=Bamosiran&rank=1
2,ミオシリンをターゲット。CRISPR-Cas9の可能性
https://clinicaltrials.gov/study/NCT06465537?term=NCT06465537&rank=1
※特定の遺伝子の異常なら、その部分を、核酸医薬は細胞内に入り込み、対象部分の遺伝子情報にアクセスして治療してしまう。非科学的・非医学的感想だが、細胞外ならまだしも、細胞内情報に手を加えるのは、本当に安全なのか・・とつい思ってしまう。

