2024年 12月 30日
第463回 大阪眼科集談会 その1(1328)

※以前集談会を盛り上げようと5大学の教授が積極的に参加された時期があったと記憶しているが、遠い昔の話。最近は、教授の姿をみることはあまりないような・・・。渡辺千舟先生や三木弘彦先生が活躍した時代が懐かしい。一通り、怪しげな新人医師の発表が終わると、ひげもじゃの渡辺先生が立ち上がり、ちょっとスライド戻して・・と指示し、演者の基本的な間違いを指摘する。時に、ボコボコにされることも・・。時代が移り変わり、そんな事したら、何やらハラスメントと言われるのだろうか。面白くない時代になったもんやなあ・・
第463回 大阪眼科集談会
日 時:令和6年12月14日(土)
1 角度の異なる内斜視を繰り返した周期性内斜視の一例
○藤原 秀、遠藤高生(大阪母子医療センター)
4歳7ヶ月女児。2ヶ月から1日おきに内斜視になる。大きい斜視角の日(約40⊿)、小さい斜視角の日(約20⊿)、ほぼ正位の日、安定しない。屈折は軽い遠視。最終的に大きな斜視角に合わせて手術して、ほぼ正位に。立体視も良好。
スマホ内斜視に代表されるような急性後天共同性内斜視(AACE)と周期性内斜視の合併。AACEのきっかけは不明。
2 続発緑内障に対する線維柱帯切除術後に発生したocular decompression retinopathyの1例
○佐井美玲、近江正俊、石野雅人、切石達範、石本敦子、盛秀嗣、大中誠之、今井尚徳(関西医大)
https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10827622/
要するに急激な眼圧下降後に見られる網膜出血。昔昔、急性発作にレーザー虹彩切開術して、その後散瞳して眼底検査すると、網膜出血しているのを何例か見たけれど、それもODRなんて呼ぶのかなあ・・
今回は、ヘルペス性虹彩炎の続発緑内障にレクトミーしたら、生じた出血。点眼のフルメディケーション+ダイアモックス3錠でも眼圧50以上。レクトミーして、術後マッサージして8にすると・・・
黄斑部に網膜前出血があったので、視力低下。吸収とともに徐々に回復。一般的に予後良好。
3 当院におけるオルソケラトロジーと低濃度アトロピンによる近視抑制の治療成績
○大島佑介、小島美帆(八尾市)、庄田裕美、溝口 晋(高槻市)、池本淳子(大阪市)
現代人の屈折異常を『-3D』ぐらいの近視までの軽いものまで、その発生を抑制する必要があるのか。放置すれば高度近視(病的近視)になる眼だけを(選択的に)抑制することは可能なのか。日本人に低濃度のアトロピン点眼は有効なのか。有効だとしたら、どの程度有効なのか。例えば、個人的には、-3Dの近視になることは許容するが、-10Dは絶対嫌だとして、低濃度アトロピンはその目的に適っているのか。それより若干有効だと言われるオルソ。これを、小学校低学年から、高額支払ってトラブル起こさずに頑張ったら、前述の目的をどの程度達成できるのだろうか。いつも少し懐疑的に見てしまう。
低濃度アトロピンの場合、放置したら、1年で0.4Dの変化を0.36Dに抑制できるのは有効?それは10年で4Dの変化を3.6Dに出来ることを本当に意味しているのだろうか。アトロピン濃度を0.025%にしたら、10年で4Dの変化を2.9Dに出来るのだろうか。また、そもそもオルソの場合、角膜が扁平化しているようで、眼軸の評価は、オルソを中止して、角膜の形状が元に戻った状態で、評価されているのだろうか。例えば、水晶体より後方の長さは抑制されているのだろうか・・。勿論近視が患者さんになったら、患者さんは無尽蔵でしょうが・・・、どうも腑に落ちない部分がある。
この施設の結果だと、やはり低濃度アトロピン点眼の効果は限定的で、オルソはそれより若干有効らしい。勿論オルソは、最近近視抑制効果で話題になっているが、本来は、寝ている間特殊なコンタクトレンズを装用していれば、少なくとも起きている間は、近視のない状態をキープできるというもので、意外にそれが近視抑制(眼軸長伸長抑制)効果もあると注目され、更に市場を広げているような気がする。ただ、点眼を併用したら、結果が悪くなるってどういうことだろう・・
結果としては、10歳未満でオルソをスタートさせると、抑制効果高く、高度近視を回避することにつながるかも・・
※身長体重を測るように、眼軸長も測定し、0.4mm/年以上の伸び率だと介入するとか、介入基準があった方がいいと思う。身長もある時期、急に伸びたりするが、その時期には個人差がある。近視だって、個人が有する特有の近視化要因がどれくらいあるかによって、近視化の起こる時期・速度は変わってくる筈で、結果としての眼軸の伸び率が大きくなってきたら介入すべきかもしれない。ただ、個人的には、オルソよりは、特別講演にあったような要因に期待したいな。