第464回大阪眼科集談会 その4(1336) 特別講演 ぶどう膜炎診療
2025年 03月 01日

<特別講演>
「炎症細胞の気持ちを考慮したぶどう膜炎診療」楠原 仙太郎 先生(神戸大学)
①眼内に炎症細胞が確認できるということ
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https://takeganka.exblog.jp/19399165/
2013年のブログ。『免疫特権』についてちょっと勉強してみて玉砕した記録がある^^;
⇒以下のメカニズムで、眼内での炎症を抑制している。
1)角膜には、血管・リンパ管がない(解剖学的な血液眼柵)。角膜上皮・実質・内皮には、MHCクラスⅡ分子が発現せず、クラスⅠ分子の発現も乏しいこと(分子生物学的バリア)。
2)ACAIDの存在:眼内(前房内)に異物 ⇒ 抗原提示細胞が捕食⇒血流にのって、末梢リンパ組織へ(脾臓)⇒ここでTリンパ球に抗原提示⇒抑制型Tリンパ球が優先的に誘導(免疫反応を抑制)
※このシステムは、前房関連免疫偏位(ACAID : anterior chamber associatedimmune deviation)と呼ばれますが、硝子体腔にも存在する(VCAID)。角膜移植が成功は、このACAIDのお陰。ACAID(VCAID)を阻害する要因(術後炎症・術前感染症など)があると、手術合併症が起こりやすくなる。
3) 免疫抑制性眼内微小環境:角膜深層から前房にかけて多くの免疫制御因子が恒性的に発現。免疫反応をコントロールしている・・・。ただ、複雑すぎて理解不能・・。
※前眼部に発現する免疫調節分子:前房内の液性因子として、α-MSH・VIP・Somatostain・CGRP・TGF-β2・TSP-1・MIF・IL-1Ra・可溶性FasL・CD45,CD55,CD59,C3ibがあり、角膜内皮の細胞表面分子として、Fas L ・B7-H1・B7-H3・GITR ligand・MHC classⅠb・CD46,CD55,CD59。
⇒これらが、ACAIDの誘導、角膜局所における炎症抑制、T細胞にアポトーシスを誘導・・・・
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症例提示:時々かすむという愁訴の18歳女性の症例が提示された。眼底写真異常(-)。OCTで硝子体に炎症細胞?(OCTで見える点状の混濁は炎症細胞なのか・・)そしてHLA-A26,B51,DR4(+)。つまり将来ベーチェットや原田を発症しやすい眼だが、今は分類不能のごくごく軽度のぶどう膜炎。
①この症例に遭遇しても、眼底・OCTを見て、『異常なし』とだけ言うだろうなあ・・
②OCTで写った網膜に近い硝子体の点状陰影をノイズと判断し、炎症細胞とは思わないだろうなあ・・・
③免疫特権のある眼に僅かな炎症細胞があることをそれほど重大事だと思わないかも・・
④HLA検査までしない(考えない)だろうなあ
・・などと、少し驚きの症例提示から話はスタート。
眼内には炎症細胞はないが、ミクログリアはある。グリアとは呼ぶが、マクロファージに近い。刺激を受けると神経傷害性や神経保護性グリアに変身する。最近の実験は凄い。マウスに特殊な物々しい装置を装着し、生きているマウスの網膜のミクログリアを特殊な顕微鏡で直接観察可能らしい(ヒトでは無理だけど)。
②炎症細胞の気持ちから分類できるぶどう膜炎
https://www.beckmancoulter.co.jp/dx/quiz_past/hematology/oneself/part02/self2_03.html
このネットから拾った図は、炎症細胞の大きさをイメージしやすい。

※OCTの解像度は6μmなので、やはりこの大きさの細胞は見えるらしい・・
肉芽腫性vs 非肉芽腫性
肉芽腫とは⇒ ウィキペディアによると・・ https://en.wikipedia.org/wiki/Granuloma
※死滅させることのできない病原菌を様々な炎症細胞で囲い込んでいる。構成している細胞の数と種類を考えると、肉芽腫性炎症細胞(塊)のつぶつぶひとつひとつが、非肉芽腫性炎症と比較して非常に大きい(これもシェーマで見せられると納得する)。
ネットから拾った炎症細胞の大きさのイメージ
https://www.frontiersin.org/journals/immunology/articles/10.3389/fimmu.2012.00411/full
https://www.tmd.ac.jp/med/pth1/hupathhp/kenkyu-sar.html
肉芽腫性炎症疾患の代表例のサルコイドーシスは、日本においては、アクネ菌が原因とされている。細胞内で増殖できる菌なので肉芽腫を形成。対してベーチェットは、Th17を介した好中球遊走(暴走?)。
ぶどう膜炎の診断は、肉芽腫性vs 非肉芽腫性の分類の前に、感染性vs 非感染性の診断が大切。非感染性であれば、全力で消炎に勤めればいいが、感染性なら原因病原菌をたたくのが原則になる。日本においては、確率論から言えば、感染の場合はまずヘルペスを疑う。ヘルペスかそれ以外かを考えることに。
複雑な非典型例よりも、典型例を知っておくことが重要。
①サイトメガロウイルス網膜炎
https://imagebank.asrs.org/file/4984/cmv-retinitis-in-a-patient-with-the-diagnosis-of-aids
③眼トキソカラ症
https://journals.plos.org/plosntds/article?id=10.1371/journal.pntd.0002938
④眼トキソプラズマ症
https://entokey.com/toxoplasmosis-3/
1)血液・尿検査でのスクリーニング(必要最低限にしないと、自己負担半端ない・・)
その後、診断確定に必要な検査へ。
※インターフェロンγ遊離試験(結核菌補助検査);稀に偽陰性のこともあるので注意。
https://www.crc-group.co.jp/crc/igra/igra.html
※梅毒の検査:プロゾーン現象に注意⇒ https://www.kameda.com/pr/infectious_disease/post_272.html
https://square.umin.ac.jp/transfusion-kuh/related/prozone/index.html
2)そして、迷ったらPCR:眼感染症網羅的PCR検査(高価だが・・)
https://oita-u-ganka.jp/pcr-2/ (何の関係もないが、母校の眼科学教室頑張ってるようで、ちょっと嬉しい)

3)必要なら硝子体生検
炎症細胞の気持ちを考える?
再び、ネットから拾った炎症細胞の大きさのイメージ
https://www.frontiersin.org/journals/immunology/articles/10.3389/fimmu.2012.00411/full

肉芽腫性炎症でみられる肉芽腫は、他の炎症細胞と全く大きさが異なる。mutton-fat KPは、細胞集団だが、fine KPは、細胞一つ一つ? KPを眺めている時に、この視点は無かった^^; 硝子体混濁も濃密な混濁で、眼底所見がわからないほど・・の時は、悪性リンパ腫を疑う。迷ったら常に念頭においておく。そして悪性リンパ腫のほとんどはDLBCL(びまん性大細胞型B細胞リンパ腫)。
次に、抗体の話。抗体は小さすぎて勿論見えない。抗体の役割は様々で、細胞の関与のない炎症反応は、見えない。この見えない炎症性疾患の例として、自己免疫網膜症。
http://www.macrophi.co.jp/special/1440/

③炎症細胞から考えるぶどう膜炎の治療戦略
サルコイドーシス・原田・ベーチェットの3大ぶどう膜炎を押さえておけばOK。
典型的なケースなら、私でも見間違うことはない。-
- サルコイドーシス:https://eyewiki.org/Sarcoid_Uveitis
(アクネ菌に対する肉芽腫性反応)
治療:ステロイド点眼・注射、不十分なら内服。ステロイドの副作用が問題になるほど難治例では、免疫抑制剤(アダリムマブ)。
(メラノサイトに対する細胞性免疫)
治療:ステロイドパルスor大量投与、6ヶ月以上かけて漸減(制御性T細胞誘導)。再発したらステロイド内服増量・シクロスポリン内服・アダリムマブを考慮。
https://www.intechopen.com/chapters/66274
(炎症細胞:好中球の暴走)
治療:ステロイド点眼で消炎、発作時は注射。発作抑制目的で免疫抑制剤。
※非感染性ぶどう膜炎は、この3つの治療パターンしかない。3大疾患でなくても、どれかのパターンで治療することになる。3大疾患のいずれかだと診断がつけば、定石通りに治療すればいいし、そうでない場合は、3大疾患のどれに近いかを考慮して、サルコイドーシスに近いと判断されたら、基本サルコイドーシス治療の方針でのぞむ。
症例1:9歳女児。両眼充血があって、ごく軽度の虹彩炎。FineなKPがあって、cellがあるだけ。眼底も異常なく、採血も異常ないので、ステロイド点眼で様子を見る。ただ、ここで、両眼性の非肉芽腫性ぶどう膜炎なので、ベーチェット類縁疾患・・だとムンテラするらしい・・。3ヶ月後両眼にmutton fat KPが出たので、肉芽腫性ぶどう膜炎とムンテラ変更。
ステロイド点眼⇒ステロイド内服へ。5ヶ月後、効果不十分でシクロスポリン内服へ。19ヶ月後、視力低下あり、黄斑部SRDあってやっと、原田病と確定。シクロスポリン長期になってきたので、多毛がひどくなり、腎障害の可能性もあり、アダリムマブへ
症例2:70歳男性、肺MAC、抗体IFN‐γ抗体陽性
5日前、突然視力低下。両眼とも前眼部は非肉芽腫性ぶどう膜炎、強い硝子体混濁があるが、眼底異常なさそう・・・。急性発症の非肉芽腫性ぶどう膜炎で硝子体混濁強いが、眼底異常なさそう・・・・⇒ベーチェット疑い
※お試しのデキサメタゾン結膜下注射(24時間しか効かないので、間違っていても大丈夫?)が、有効だったので、その後STTAへ。
※肺MACにリファブチンが使われていて、クラリスロマイシンとの併用もあって、そのための薬剤性ぶどう膜炎の可能性あり。


