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前部眼瞼炎(1337)

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昨日から急に冷え込んできた。最後の冬将軍だろうか。
例年ならもうすぐハクモクレンが開花するはず。春はもうすぐかな・・

前部眼瞼炎(アジマイシン発売5周年セミナー)

  1. https://takeganka.exblog.jp/34825896/ 
  2. https://takeganka.exblog.jp/35890235/
  3. https://takeganka.exblog.jp/36379135/

特に日本では、キノロン系一辺倒処方が目立つが、なるべくそうならないように努力を続けてきたものの、気がつけば、キノロン使用圧力に押され気味になるが、今回のアジマイシン発売5周年企画は、それを是正するいいきっかけになったと思う。特にアジマイシン使用は、自発的にはなかなか踏み切れない部分があるので・・

  1. キノロン系:モキシフロキサシン、レボフロキサシン
  2. セフェム系:べストロン
  3. アミノグリコシド系:トブラシン
  4. マクロライド系:アジマイシン
  5. 環状ペプチド系:オフサロン
  6. クロラムフェニコール:オフサロン
  7. グリコペプチド系:バンコマイシン

一般開業医が、バンコマイシンを使う機会はあまりないし、あまり気軽に使ってもいけないと思うし、オフサロンは、なかなか使う機会がなく、在庫しても不良在庫になってしまうので、結局7種類使えるといっても、現実的にはキノロン、セフェム、アミノグリコシド、そして今回主役のマクロライド系の4種類ということになりそう。しばしば遭遇する前眼部感染のファーストチョイスはベストロンにしていて、時にアミノグリコシド系を使い、なるべくキノロンは避けているが、術後はやはり基本キノロンになってしまう。これもダラダラ使わず最近は2週間で止める努力をしている。アジマイシンの出番は、眼瞼縁炎に対してだが、なかなか使いづらいものがあったが、今回の講演は、そんな私には、非常に有益で、『治りにくい眼瞼縁炎VS使いづらいアジマイシン』についてしっかり勉強させていただいた。

  • アジマイシンが発売されて5年も経つようだが、
  • だいたいマクロライド系点眼なんか効くのだろうか・・
  • 最初の2日間が2/日で、あとの12日間は1/日点眼。そんな回数で、またそんな短期間の使用で、治りにくい眼瞼縁炎が治るのだろうか・・・
  • どろっとしていて、使いにくく、キャップをした状態で、下に向けて数回振ってから点眼する。なんか点眼しずらい&めんどくさい・・。これで効かなかったら・・
  • 更に点眼してみる、染みる&霞む。やっぱり使いづらい。これで効かなかったら・・

などと、かなりネガディブな印象が先立ちので、それらを凌駕するモチベーションが必要だった。しかも相手は、治りにくい眼瞼縁炎。的確な診断も難しいし、アメリカの診断ガイドラインのBlepharitis PPPには、完全には治らん・・と半分諦めのような文言が並んでいるらしい。

https://www.aaojournal.org/article/S0161-6420(24)00008-3/fulltext 

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そろそろ、若干避けて通ってきたこの問題に正面から取り組まなくては・・。何度もこの手の話は聴いたし、論文も読んだが、話はぼんやりしていて、治療は清拭がメイン。これではモチベーションが上がらなかったが、この講演を聴いたからには、睫毛にカラレットのある老人を見つけたら、見て見ぬふりはできないなあ・・。

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このケースは、前部眼瞼炎+MGDかな・・

この図のグレイラインより前が前部、後方が後部。

この部位は皮膚なのだが、皮膚粘膜移行部は前方移動することがあり(病的所見)、しばしば粘膜だったりする。皮膚は薄く、血管が豊富で、睫毛・皮脂腺、マイボーム腺開口部などがある。常在菌も部位によって異なるだろう。この狭い領域の病的所見を前方と後方に分けて考えるのか・・・。今回は前方の話。

原因別分類

  1. ブドウ球菌性眼瞼炎
  2. 脂漏性皮膚炎
  3. マイボーム腺機能不全

この3つらしい。①のブドウ球菌性なら、抗菌剤で簡単に治りそうだがそう簡単じゃない。③は温めたり、開口部付近をきれいにしたりすればいいのだろうが、これも簡単じゃない。②は昔から病名はよく聞くものの、つかみどころがない。皮脂の増加+酵母菌感染が原因の皮膚炎?ただあまり多くないらしい。

ブドウ球菌性眼瞼炎

Staphylococcal blepharitis is characterizedby scaling, crusting,and erythema of the eyelid margin with collarette formation at the base of the cilia.Chronic inflammation may include acute exacerbations that lead to thedevelopment of ulcerative blepharitis. Loss of eyelashes and cornealinvolvement, including punctate epithelial erosions, marginal infiltrates,peripheral corneal and epithelial defects, and corneal neovascularization, mayoccur.

⇒ ブドウ球菌性眼瞼炎は、瞼縁の鱗屑痂皮および紅斑を特徴とし、睫毛の基部にコラレットが形成される。 慢性炎症は、潰瘍性眼瞼炎の発症につながる急性増悪を含むことがある。 睫毛の脱落および点状上皮びらん、辺縁浸潤、周辺角膜および上皮欠損および角膜新生血管を含む角膜病変が生じることがある。

※ただ、ブドウ球菌性眼瞼炎なんて名前だけど、ブドウ球菌の関与の詳細は不明で、診断にブドウ球菌の検出は必須ではない・・・らしい(なんともややこしい話)。この治りにくい疾患は、原因もはっきりしていない。はっきりしていないから治りにくいのかな。ブ菌以外に、アクネやコリネも関与?

瞼縁の鱗屑・痂皮・紅斑、睫毛にコラレットがあれば診断可能。重症化したら潰瘍形成。

  1. 感染アレルギー
  2. 細菌による脂質分解(炎症惹起する遊離脂肪酸産生)

が原因なので、①に対しては炎症を抑え、②に対しては除菌が必要?つまり『消炎+除菌』

※脂漏性眼瞼炎は、脂漏性皮膚炎が眼瞼縁に及んだもの?つかみどころがない疾患を更に混乱させる要因かも。皮脂の増加+酵母菌感染が原因の皮膚炎のよう・・。ただ幸いあまり多くないらしい。当然眼瞼以外の皮膚にも脂漏性皮膚炎があり、頭皮にあればフケが多くなる。

症状は、ゴロゴロ、痒み、流涙、疲れる・・・などいわゆる不定愁訴ばかりだが、これに『瞼縁の鱗屑・痂皮・紅斑、睫毛にコラレット』があれば、診断確定。決して逃げたらあかん^^;

※眼瞼炎というものの、必ずしも発赤・腫脹があるわけではない。

眼瞼炎(眼瞼縁炎)の治療

前部眼瞼炎:①ブドウ球菌性眼瞼炎 ②脂漏性眼瞼炎

後部眼瞼炎≒MGD

治療は全部一緒?『清拭+消炎+除菌』

  1. 温めて、清拭
  2. テトラサイクリン系(ミノサイクリン)・マクロライド系(クラリスロマイシン)内服
  3. マクロライド系点眼(アジスロマイシン)
  4. ステロイド

以前は、マクロライド系点眼という選択肢がなく、テトラサイクリン系かマクロライド系抗菌剤の長期内服しかなかったが、マクロライド系点眼(アジスロマイシン)が使える事になり、治療選択肢は広がったと言える。今は薬不足もあって、我々弱小開業医には、内服の調達も困難だが、点眼なら安心して使える。内服と同等の効果が証明されているので、更に安心。

  1. 白内障術後、洗顔不十分が原因で発症?
  2. 高齢女性、主訴:異物感、チクチクする・・・睫毛乱生の自己診断で受診
  3. 高齢女性、長期間ドライアイ治療されていて(プラグも入っている)、異物感改善せず受診
  4. 高齢女性、土いじりしてから、異物感継続
  5. 睫毛、眼瞼皮膚に脂っぽい眼脂
  6. 高齢女性、眼脂・充血・異物感、眼瞼縁充血・腫脹:前部+後部眼瞼炎

後部眼瞼炎には著効するアジスロマイシンだが、前部眼瞼炎にもそこそこ効く。点眼単独で、治癒にもちこめなくても、改善が得られ、清拭を頑張れば、良好な状態を維持できると・・・。

愁訴は、ゴロゴロ、目やに、涙、違和感、痒み・・・などいわゆる不定愁訴に近いが、諦めることなく、特徴的な所見をつかまえて診断して治療すれば、治らない・・こともない。白内障術後も、怖くて眼の周りをきれいしておかないと発症する。

アジスロマイシン点眼は、

  1. 点眼なのに眼瞼に浸透して効く
  2. 抗菌剤なのに抗炎症作用もある。
  3. 2週間しか使っていないのに、それ以上効果が持続する。

・・という他の点眼にはない特徴があり、少々使いにくい点眼だが、十分に説明して2週間使ってもらうと、かなり有効(らしい)。勿論、難治なのは当然で、清拭は必要でしょうし、アジマイシン点眼では治らなければ、ステロイド点眼併用、マクロライド系テトラサイクリン系の内服も必要。

再発するケースも当然あって(約50%)、その時の対応は、勿論ケースバイケースだが、清拭が基本として、ベストロン、ステロイド、アジマイシン再処方などで対応。初回治療で治りきらない場合に再発しやすい。5回再処方したことも。ただ、この時も清拭の指導をしっかりすれば良好な経過に・・。

清拭は、専用の製品が発売されていて、アイシャンプーやマイボシャンプーなどがあるが、簡単にできること、継続可能なことをしてもらうことが重要で、濡らした清潔なコットンでさっと拭く習慣をつけるだけでもいい。

https://www.lime.jp/main/product/ 

  1. 眼瞼炎が原因で、角膜病変:MRKC(meibomitis-relatedkeratoconjunctivitis)を発症することもある。
  2. 前部眼瞼炎がカタル性角膜潰瘍の誘因になることもある。カタル性角膜潰瘍を繰り返す症例の場合、前部眼瞼炎の治療が必要なこともある。

※アジスロマイシン点眼だけじゃなく、時にはクラリスロマイシン内服、ステロイド点眼、エクステ除去なども必要。

※最近話題になることの多いデモデックス。皮脂・油脂を繁殖源として睫毛にも生息していると言われているが、必ずしも眼瞼炎の原因とは限らない?

https://xdemvy.com/

※海外ではXDEMVY(ロチラネル点眼液)0.25%というデモデックスが原因の眼瞼炎治療薬が発売されている。




by takeuchi-ganka | 2025-03-04 19:01 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka