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第53回 関西医科大学眼科同窓会 春の勉強会 (1344)

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矢田寺の紫陽花


久しぶりに、関西医科大学眼科同窓会の春の勉強会に現地参加してきました。よく考えると、寛ちゃんがいない初めての同窓会か・・。今後、何故か、同窓会の名前が消えて、同門会となるようですが、仮に少々名前が実態にそぐわないものだったとしても(?)、伝統のある名前を引き継ぐ事が大切なことだと思いますがね。他大学出身の私でも、この同窓会の名前に違和感ないですが・・。

確か以前は朝からやっていた勉強会ですが、開始時間が日曜日の午後になってしまうと、遠方の先生が参加しにくくなります。同窓会の勉強会の前日に大阪に来られて、懐かしい仲間と食事などをして、翌日午前中だけでも勉強会に参加して、地元に帰る・・・というスケジュールが不可能となりました。同窓会員は全国におられます。少しでも参加人数が増えるよう考慮してほしいなあ・・。参加者がこれ以上少なくならないことを願うばかりです。

演題のほとんどは、いつものように、以前集談会などで発表したもので、あと数題は、開業されている先生の発表。コメントは以前のものをほぼ流用・・

1,新生血管型加齢黄斑変性に対するfaricimab硝子体内投与の1年経過 石野雅人

加齢黄斑変性に対する抗VEGF治療薬の長い歴史の中で、ちょっと変わり者の薬剤?VEGF-Aと結合する抗VEGF-A FabAng-2と結合する抗Ang-2 Fabが同一分子内に存在。抗炎症・血管透過性亢進を抑え、血管新生も抑える画期的な薬剤?)。門外漢には、よくわからないけど、関西医大独自の投与方法(mTAE)で行えば、少し投与間隔をあけれて、投与回数もより少なくできる・・

※画期的な薬剤・・・というほどでもないのかな。

2,好酸球性多発血管炎性肉芽腫症に関連した強膜炎における抗体療法の影響 綾はるか

難しい発表。ちょっと聞き逃し・・^^;

3,意外と使えるFunctional vision scoreによる視機能評価 木内克治

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jpnjvissci/40/1/40_40.1/_html/-char/ja

いつも独自路線の木内先生の発表。今回も・・・

「視力の評価であるFunctional Acuity ScoreFAS)と,視野の評価であるFunctional Field ScoreFFS)をそれぞれ求め,それらを掛け合わせて算出する。スコアは片眼および両眼の状態でそれぞれ測定され,計算時には両眼60%,片眼20%ずつ加重平均される。視野の評価はGoldmann視野計III/4e指標で行われる。」

4 緑内障術後ocular decompression retinopathy1例 佐井美玲

https://pmc.ncbi.nlm.nih.gov/articles/PMC10827622/ 

要するに急激な眼圧下降後に見られる網膜出血。昔昔、急性発作にレーザー虹彩切開術して、その後散瞳して眼底検査すると、網膜出血しているのを何例か見たけれど、それもODRなんて呼ぶのかなあ・・

今回は、ヘルペス性虹彩炎の続発緑内障にレクトミーしたら、生じた出血。点眼のフルメディケーション+ダイアモックス3錠でも眼圧50以上。レクトミーして、術後マッサージして8にすると・・・ODR。黄斑部に網膜前出血があったので、視力低下。吸収とともに徐々に回復。一般的に予後良好。

5 結膜MALTリンパ腫2025眼の臨床経過 篠原優里子

https://takeganka.exblog.jp/33402165/ 

https://data.medience.co.jp/guide/guide-07010024.html  

あまり悪性度の高くない悪性腫瘍。①無治療 ②放射線治療(30GY) 抗体治療(リツキサン:抗CD20抗体)。リツキサンをチョイスすることも多いが、放射線は有効。長い間リツキサンで改善が見られず、放射線で寛解したケースもある。ただ、無治療で、増大しないことも・・。

6 治療に難渋した特発性周辺部角膜潰瘍(モーレン潰瘍)の一例 祐森恵梨佳

片眼は角膜移植を9回もやって、その後角膜融解してほぼ失明状態。他眼にモーレン角膜潰瘍発症。結膜切除して、強角膜移植、部分角膜移植。ステロイド点滴、シクロスポリン内服、プレドニゾロン内服で、良好な経過だったが、ぶどう膜炎(VZV)発症。プレドニゾロン減らして(漸減中止)、シクロスポリン増やして(その後漸減)、アメナビル開始・・・。最終的にステロイド・タリムス・抗菌剤・β遮断剤点眼のみに。(こんな重症例の角膜疾患の治療経過は、ちょっと別世界の話で、へえ・・・・って感じ)

C2:シクロスポリン2時間後血中濃度

https://is.jrs.or.jp/quicklink/journal/nopass_pdf/042020153j.pdf 

※電子カルテの掲示板で内科とやりとりして、シクロスポリン濃度コントロールの参考に・・

7 同一創に再発した濾過胞感染に対してバルベルト緑内障インプラント挿入術を行った一例 河合諒

3年前にレクトミー。1年前にニードリング。その後濾過胞感染。濾過胞温存して、PEA+ビトして抗生剤投与して落ち着いて、その後IOLも入れたが、4年ほどして再び濾過胞感染。いずれもステージⅢa程度。Ⅲbではなかった。2回目は濾過胞も切除して、その後眼圧上昇にバルベルト。

※こんなこともあるので、レクトミーは積極的には勧められないのだが・・・・。今回の症例からは何とも言えないと思うけど、濾過胞が機能しているようなら、できれば温存したい。温存しても問題ないとする報告もある(そんな報告ができるほど感染が多いとも言える)。まあ、感染するということは、通常濾過胞が瘢痕化しているケースより、濾過胞が機能していて、かつ菲薄化しているか破綻している場合と思うけど。温存しない場合、後日追加緑内障手術(濾過手術かチューブシャント)が必要になる可能性高い。

8,TREおよびNBR後の低眼圧に対して外科的処置を要した症例の1年成績  竹内正興

なんでもかんでも、アルファベット3文字使うのは、使う側は言いやすいけど、初めて聞く人にとっては、何のこと・・ってなるよね。レクトミーや濾過胞再建術を行った後低眼圧になり、脈絡膜剥離や低眼圧黄斑症を発症し、(遷延したから)外科的処置をした症例38眼の術後経過。低眼圧の原因は過剰濾過か房水漏出。外科的処置は、通常粘弾性物質注入and/or縫合。眼圧は、術後早期に少しだけ高めだが、1年後には一桁眼圧に落ち着く。視力は同様の経過をたどるものの、術前の視力には及ばなかったらしい。外科的処置で低眼圧は対応可能だが、黄斑皺壁の治療は簡単ではなく、視力回復は更に困難?

濾過手術の宿命だが、術後経過良好と言えない(予想外の結果になる)症例が一定程度ある。濾過胞の形成が患者さんの創傷治癒能力に依存しているので仕方ないのだろうが、当然漏れすぎたり、漏れなさすぎたりする。出来上がった濾過胞も破れたり・感染したり・・・・・。やっかいな手術であることに変わりない。例えば100眼に濾過手術したとして、外科的処置なしに望ましい眼圧におさまるのは何眼あるのだろう。仮に50眼だとしたら、残り50眼のうち、漏れすぎて外科的処置をしたケースが何眼、漏れなさすぎて外科的処置したケースが何眼なのだろう。仮にそれが25眼ずつだとしたら、今回の発表は、(最初に漏れすぎて外科的処置した症例)+(漏れなさすぎて外科的処置をしたら漏れすぎた症例)が、ターゲットなのかな。一応術後1年程度は、良好な結果らしい。5年後は知らんけど・・。やはり濾過手術は大変・・・・。

9、ストリームラインによる新しいMIGS 山岸和矢

これはフックを用いたロトミーinternoに比べると、高価なストリームラインを使用する必要があるものの、有望な手術に違いない。詳細は下記アドレスに・・

※かつて、Viscocanalostomyをやりまくった山岸先生としては、当然日本で最初にやらなければいけないお仕事のようです。作用機序が明快とは言えないものの、異物を残さず、繰り返しできて、合併症も少ない。それでロトミー同等の眼圧下降。値段を除けば理想的・・・かも。

https://takeganka.exblog.jp/37741522/



今井尚徳教授の特別講演

新任教授が、教室の現状と未来について熱く語ってくれました。同窓会員としては、そこを職場とする息子の父親としても、眼科学教室の発展を願うばかりです。末端の同窓会員なので、面識ありませんが、若くて、エネルギッシュな、デジタルデバイスを駆使した網膜硝子体手術の専門家に、網膜硝子体手術の現状と近未来を見せていただきました。凄いなあ・・・と感嘆するばかり。特に最後の、嚢胞様腔内壁切開術およびフィブリノーゲン塊摘出術はちょっと驚き。昔なら、Foveaは、アンタッチャブルなエリアだったのだが、孔があいたら、色んな材料で充填するし、最近は網膜切り取って移植する。CMEでも切開したり、フィブリノーゲン塊摘出したり・・。

最も馬力がある年代の若い教授。頑張ってね。

※神戸大学時代の仕事かな。

https://www.hosp.kobe-u.ac.jp/rinri/research/docs/No.B200233.pdf 

⇒ 嚢胞様黄斑浮腫は糖尿病や網膜静脈閉塞などの様々な眼底疾患に続発する病態。治療法としては、抗血管内皮増殖因子製剤 、懸濁ステロイドの眼局所投与 、網膜光凝固などの非外科的治療、そして硝子体手術があります。しかし、これらの治療が奏効しない黄斑浮腫には嚢胞様腔内壁切開術が施行され、良好な成績が報告されています。また、近年、嚢胞様腔内壁切除の際に嚢胞様黄斑浮腫内に形成された半透明塊が摘出されることも報告されています・・・・

 


by takeuchi-ganka | 2025-06-13 18:42 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka