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シニアグラスを理解する為に1

シニアグラスを理解する為に その1 調節力の衰え

年々調節力は衰えるのですが、10歳から20歳の間でそれを自覚することは皆無で、指を目の前において、どの距離までピントがあうか毎年測定でもしないかぎりわかりません。因みにその距離のことを近点といいます。近視とか遠視とかあると話がややこしいので、そういった屈折異常がないか、あっても、眼鏡で遠くが見えるようにきちんと矯正した状態での近点の話だと思って読んでください。

すると、近点は、10歳では、10cm以下。14歳の息子は、10cm以下でも、OKでした。子供が、姿勢悪く、机に鼻が着くぐらい近寄って読み書きが可能なのは、この驚異的な調節力の為です。また、この姿勢が近視の進行を助長するのですが(多大なる調節ラグを生みだしている・・?!)。
20歳になって、10cm。まだ、何も感じないと思います。
30歳になって、15cm。まだまだ何も感じません。ただ、肉体労働者は感じなくても、VDT作業従事者で、とりわけ一日5時間以上パソコン画面に向かっているような人なら、調節力の衰えを感じる場合があるかもしれません。
40歳。ここからが問題です。近点25cm。通常本もパソコン画面も見れます。まだまだ若いから眼鏡なんか要らないと強がることも多く、老眼鏡への移行は人によって様々です。ただ、環境によっては、耐え難い眼精疲労の原因になるかもしれないのです。人によっては、老眼鏡をかけるほどでもないという微妙な時期です。

※もともと、眼鏡をかけていた人なら、その眼鏡度数を調節する(近視なら下げる、遠視なら上げる)ことで対応可能でしょうが、眼鏡の世話にならずに過ごしてきた方にとっては、眼鏡装用の敷居は意外と高いようで、眼科医でさえ、その対応が遅れているのをしばしば見かけます。

※この30歳後半から40歳前半の調節力は衰えているけど、見えている。だけど疲れる。という人には、ホヤならリマーク、ニコンならリラキシーなどといったレンズ(設計ポリシーは異なるようですが・・)がいい適応になるのかもしれません。詳しい設計はわかりませんが、レンズ下方の度数を僅かに下げているのだと思います。これで、値段は単焦点に比べ1.5倍ほどし、それだけの価値があるかどうかは、まだよくわかりません。今後の検討課題です。

50歳。近点50cmです。40歳からの10年間で、すっかり老眼について認識できている筈です。でも、まだ、老眼は始まったばかりと、捉えている人から、もう老眼鏡なしには仕事不可能と考えている人まで、その人の眼の屈折状態や環境によって大きく異なっているようです。因みに、私は、近くをみる作業が圧倒的に多い眼科医という職業上、近用眼鏡なしには、診察不可能な状態となっていますが、同級生で、眼鏡をかけていない人もいるのです・・。大丈夫なのかなあ。

60歳。近点100cmです。十分老眼鏡を使いこなしている筈の年齢です。ただ、人によって様々で、例えば、遠くをしっかり見ることが必要で、近視があっても、しっかり矯正した眼鏡をもっている人なら、近くは全く見えないので、何らかの対策をしている筈です。遠視の人ならなおさら見えないので、老眼鏡は100%所持されている筈です。ただ、人によっては、上手く対応・移行できず、あまり合っているとは言えない眼鏡を幾つか使いまわしていることも多いようです。そして、この年齢で、便利だからと眼鏡店に勧められるままに、今までしたことのない累進屈折眼鏡を作って、お蔵入りさせているケースを非常に多く見かけます。罪作りな眼鏡店の多いこと・・

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このように、年齢が上がるに従って、調節力が低下し、近点が遠ざかります。ただ、それだけならいいのですが、同時に、明視域(調節域)も狭くなるのです。つまり、1mの距離にテレビがあって、それに合うように眼鏡を作ると、そのテレビ前後が徐々に見えにくくなるのです。つまり、その眼鏡はテレビを見る時以外には、あまり有効でないのです。本を読む距離30cmにあわすと、それだけ。つまり、目的に合わせた眼鏡が必要になり、ひとつの眼鏡での使い回しが難しくなります。累進屈折レンズ特に中近レンズや近近レンズを使うと、単焦点レンズに比べて、明視域が広がるので、ずい分掛け心地が変わってくる筈です。更に言えば、角膜の不正乱視、白内障、網膜の加齢性変化・・・見え方を修飾する要素はどんどん増えてくる。このように、屈折異常・調節力低下だけでは決められないのがシニアグラスの特徴でしょうか。
by takeuchi-ganka | 2006-12-11 15:58 | 眼鏡 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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