第12回大阪緑内障研究会(在阪5大学緑内障研究会)

あるある大事典で、納豆のダイエット効果を示すデータが捏造されていたそうです。あのての番組は、いつも思うのですが、最初に結論があって、それに向けてデータを集めているような印象を受けていました。データが綺麗に揃いすぎているのです。一見科学的なデータのようなものを並べて、素人を騙すなんて、とても簡単なことなのでしょうね。だからこそ、番組制作サイドには、高いレベルの良心が要求されるのですが、利益優先の彼らには、その一番大切なものが全く欠如しているのでしょう。これはこの番組に限ったことじゃなく、類似番組全般に言えることでしょうが。大マスコミは、信用したらあきません。

話は、変わって、昨日は、もう12回目になる大阪緑内障研究会という名の緑内障の勉強会がありました。眼科というマイナーな科の中では、緑内障点眼市場が比較的大きいもので、このような類の会は、いつくもありますが、その一つです。共催企業の興和は、ハイパジールとうαβ遮断薬を、アールテックウエノは、レスキュラを発売している会社です。ただ、残念ながら、緑内障の第一選択薬は、ファイザーのキサラタンが、朝青龍級の強さなので、他の点眼は、キサラタンと一緒に使ってもらうか、キサラタンが使えない時使ってもらうか・・・・そんなところを狙っているようです。

第12回大阪緑内障研究会(在阪5大学緑内障研究会)
平成19年1月20日
プログラム
1、学術講演『β遮断薬の選択基準』  興和創薬株式会社
2、症例報告『角結膜疾患を伴う緑内障』(大阪大学:三木篤也)
3、基調講演『開放隅角緑内障の長期視野変化』(大阪医大:植木麻理)
4、特別講演『近未来の緑内障薬物治療』(金沢大学:杉山和久教授)


1、学術講演『β遮断薬の選択基準』  興和創薬株式会社
先ず、会社からハイパジール点眼(ニプラジロール:αβ遮断薬)の懸命のアピールです。
①作用としては、房水産生抑制、ぶどう膜強膜流出量増大、眼血流増大
②単独の眼圧下降効果は、かつて第一選択薬だった0.5%チモプトール同等。
③現在第一選択薬であるキサラタン点への追加効果が大きい。ベストパートナー!
④NMDAによる網膜(神経節)障害を抑制します。
⑤超有名なデータですが、点眼だけで、有効薬理濃度で視神経乳頭に届くのです。
⑥塩化ベンザルコニウム濃度(防腐剤)が0.02%。(緑内障点眼では最低レベル)。キサラタン10分の1。
だから、もっと使って欲しい・・・

今年の6月に終了予定の大規模なスタデイが進行中です。確か、5年以上かけて、視野障害進行抑制効果の有無を調べようというものです。短期のいいかげんなデータは腐るほどありますが、全く信用できない。でもこれぐらい時間をかけると、少しはまともなデータが出てくると期待されます。チモプトール対ハイパジールだそうですが、結果の影響は大きいかも・・・


2、症例報告『角結膜疾患を伴う緑内障』
2例紹介されました。
1例は、よくあることですが、点眼を山盛り処方されている緑内障患者さんが、高度の角膜上皮障害。ドライアイによる角膜上皮障害と点眼毒性が混じっていたのかもしれませんが、要するに、点眼を全て中止して、角膜上皮の状態と眼圧経過を見ながら、眼圧がどの程度まで上昇するのか、緑内障による視神経のダメージがどの程度なのかをみて、さっさと手術すればいいのに。ちょっとひっぱりすぎ。先ず点眼毒性を考え点眼中止が基本。一緒にドライアイ治療(プラグ)をすれば、何が原因かわからなくなんじゃ・・・。wash out してmax30以上のPOAGのようなので、レクトミーしてたけど、ロトミー系手術で十分のよう。
ひとつの緑内障点眼の効果が不十分だから、もうひとつ追加する。不十分でまた追加する。角膜が傷んだので、ヒアルロン酸製剤を追加、感染が怖いので抗菌剤を・・・結果テンコ盛り処方に。これが一番やってはいけないこと。常識なのにね。
もう一例は、サルコイドーシスによるぶどう膜炎、ぶどう膜炎による続発緑内障があり、経過中も網膜剥離も。ぶどう膜炎治療、緑内障治療が長期間にわたり、角膜上皮障害を起したケースで、1例目と違って、これは難しい。早期に手術をしても、解決する訳じゃなく、治療は長期にわたるので、それを前提に角膜上皮に優しい治療を心がけるしかないと思います。でも難しい。

3、基調講演『開放隅角緑内障の長期視野変化』
これは、大阪医大で薬物治療だけで20年間経過を追えた緑内障患者さんの視野経過の発表でした。冒頭に、緑内障治療の目標を『患者さん一生困らない視機能を保持すること』とされていたようですが、勿論そうなのですが、その困らないというのがどんな視野レベルなのか、欠けても困らない視野欠損は許すけど、欠けたら困る視野欠損は許さないとうような器用な技が使えるのか・・・、どうも絵に描いた餅に思えます。また、20年間薬物治療する緑内障というのは、ある意味緑内障全体を代表していないかもしれない。つまり、眼圧が上昇して手術になる症例や、不十分な眼圧下降で視野が徐々に悪くなって手術する症例などは脱落していくのですから。だから、大学病院レベルのスタデイなのに、結局、高眼圧症(OH)9例、原発開放隅角緑内障25例、NTG6例という少ない数になったのでしょう。ただ、それでも、20年間の解析はこの時間経過だけでも、十分な価値を産んでいると思います。ご苦労様です。

①OHは、眼圧21以下にしておけば、悪くならなかった。
(同じOHでもね。視神経乳頭が殆ど正常であれば、10年以上何もないだろうし、よく見ると軽い緑内障性視神経障害あれば、10年も経てば視野変化がでるだろうし、眼圧が高いだけのOHというくくりには、いつも疑問があります。)
②POHGは、17以下にしておけば、最初の5年以降悪化がなかった。
(17以上は徐々に悪化したらしいのですが、普通手術になるケースでは・・・。実は手術になったケースがここから、ごそっと抜け落ちている筈で、データとしては疑問を感じます。)
③NTGは、眼圧に依存する要素は少なそう・・・
(でも、大規模スタデイが示しているように、本当は眼圧依存なんですよね。)


4、特別講演『近未来の緑内障薬物治療』(金沢大学:杉山和久)

かつて、電気生理王国だった金沢大学も変わったものです。今回は・・というと失礼ですが、実に面白い発表でした。『テーラーメイド医療の可能性』なんて夢のあるテーマ。大学教授たるもの、これぐらい夢のあるテーマに邁進することが重要です。

①キサラタンを点眼すると、とてもよく眼圧が下がるので、この点眼であまり眼圧が下がらない眼をノンレスポンダーと呼んだりするのです。このノンレスポンダーをどう見るか?何か特別なグループと見るか?ということに関しての話から。
スタデイをされて、正常人100人にキサラタンを片眼に点眼すると、14から11へ。他眼に対して約20%の眼圧下降しましたが、眼圧下降幅を棒グラフにすると、ほぼ正規分布するようで、下は零%から上は40%ぐらいまで分布しているのです。真ん中の20%近くが一番多いのですが。つまり、点眼が効く人と効かない人の数が正規分布しているのは、薬物の生物学的反応として妥当な結果で、眼圧下降率10%以下のノンレスポンダーが、特別なグループとして存在する訳じゃないのです。

②遺伝子の問題
 ここは、素人の私が一番ついていきにくい分野なのですが、一寸食らいついてみました。キーワードは、『スニップ(SNP)』です。
要するに全遺伝子30億の塩基配列の0.1~0.3%%程度に塩基配列が一箇所だけ置き換わっているところがあります。例えば、酒に強いかどうかを決定するアルコールの代謝酵素に関わる遺伝子(アルデヒド脱水素酵素;ALDH2)で、欧米人のように酒に強い人の塩基配列は,-ATACACT-G-AAGTGAA-であり,アジア人のように,酒に弱い人の塩基配列は,-ATACACT-A-AAGTGAA-と-GA以外の配列は同じですが,一塩基の違いでヒトの性質が異なります。これをSNPと言います。
 これは、病気の罹りやすさや薬の効き方に関連します。現実的にはまだまだ不可能ですが、このSNPを全部調べ上げ、患者さんひとりひとりに適した治療法をオーダーメイド(テーラーメイド)医療と呼ばれ注目を集めています。眼科ではまだまだですが、非常に大きな副作用を伴う抗癌剤などでは、このSNPを調べて、予め効果や副作用が予想できれば、癌患者にとって大きな福音となるので、実現に向けて試行錯誤が行われているようです。非常に高額の経費がかかるので、なかなか眼科の分野にまで波及していませんが・・。
ただ、当然これは、緑内障点眼の眼圧下降効果についても言えることのようなのです。キサラタンは、FPレセプターを介して眼圧下降作用を発揮するのですが、このFPレセプター遺伝子にもSNPがあります。この中で、眼圧下降に大きく関連するいくつかのSNPが見つかっているようです。

緑内障片眼トライアルに疑問が突きつけられています。
これは、自分も実際に行っていることなので、疑問があるといわれると真剣に聞かないといけません。
 例えば、最初右眼に1週間キサラタンを点眼して、3ヶ月wash outして左眼に1週間点眼。この時、左右眼の眼圧下降幅は揃わない。右眼が下がったから左眼が下がるとも限らないし、その逆も同様。これを真に受けると、片眼トライアルして、その眼の眼圧が下がった、下がらなかったという結果を他眼に当てはめることができない。だから片眼トライアルは意味が無い??
ところが、両眼にキサラタンを1週間点眼、3ヶ月wash out して、また両眼に1週間点眼すると、両眼の眼圧変動はぴったり一致する。
だから、片眼トライアルよりは、最初から両眼に点眼して、有効性を確認できたら、そのまま治療継続でいいと・・・
んんん?
 これは、薬剤に対する反応性(眼圧下降)には、変動がある。日々変動し季節でも変動する。今日は効いていても、1週間後同じように効くとは限らない。だから片眼の点眼効果から他眼を予想できないのです。だから片眼トライアルは意味がないのではなくて、それぐらい薬剤に対する反応性に変動があるということを理解すればいいだけで、大学病院では無理かもしれませんが、片眼点眼を1週間に1-2回を1ヶ月以上続けたら、4-8回以上のデータが集まるわけで、これだけ時間をかけたデータがあれば、薬剤の効果判定は十分できると思うのです。できれば、両眼点眼でもいいけど、片眼だけにしておくことで、ベースライン眼圧との比較だけじゃなく、非点眼側との比較もできるし、副作用の出現の左右差も確認できるし、我々一般クリニックの小回りの良さを生かせば、決して片眼トライアルの意義は低くない思っています。
重要なことは、眼圧が日内変動したり、季節変動したりするのは有名ですが、薬剤に対する反応も日々変動し、季節変動もするということを理解しておくということでしょう。だから、一寸点眼して、眼圧が下がらないから、すぐにノンレスポンダーだと決めてしまわないように。もう少し粘り強く点眼して判断する。或いは、数ヵ月後か1年後にもう一度確かめてみることが必要ではないかと感じました。
by takeuchi-ganka | 2007-01-21 13:11 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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