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『老人性白内障 ビタミンCが防ぐ』

平成19年2月27日の読売新聞の夕刊に『老人性白内障 ビタミンCが防ぐ』とう記事が載りました。厚労省の調査で、男性の発症リスクが35%減と太字で書かれている・・・・新聞記事をそのまま信じるのは、あまりに危険なので、その根拠について言及していみます。


European Journal of Nutrition 2007 Jan 30
Prospective study showing that dietary vitamin C reduced the risk of age-related cataracts in a middle-aged Japanese population.
Yoshida M, Takashima Y, Inoue M, Iwasaki M, Otani T, Sasaki S, Tsugane S; for the JPHC Study Group.
Dept. of Public Health, Kyorin University School of Medicine, Tokyo, Japan.


ここで発表されていますが、要約しますと、
平成7年(1995年)に、岩手県二戸、秋田県横手、長野県佐久、沖縄県石川という4地域の、45~64歳の男女約4万人の方々に、食習慣などについてのアンケート調査し、当時、白内障と診断されていないし、手術も受けていなかった約3万5千人を、今回の対象とし、ビタミンCの摂取量でグループ分けし、平成12年(2000年)に再び、アンケート調査。
 
新たに白内障と診断された :男性216人(1.32%)、女性551人(2.94%)
白内障手術を受けた :男性110人(0.67%)、女性187人(1.00%)

 ここで、ビタミンC摂取量を推定し、5つのグループに分けると、白内障と診断される率は、ビタミンCが最も摂取量多いグループは、最も少ないグループに比べて男性で35%、女性で41%低い。白内障手術にいたる率は、男性で30%、女性で36%低い・・・
 ということです。問題なのは、白内障になりやすいとか、なりにくいとか言ってますが、それは、それぞれの方が自己判断で、眼科に受診し、白内障と診断された率、更に希望により手術を受けた率ですから、様々なバイアスが関わっています。また、疫学調査ですから、水晶体の混濁を追跡調査したのではありません。   
 結果に異議を唱えるつもりは、あまりないですが、ビタミンC摂取量が最も多いグループと少ないグループでは、ビタミンC以外にも大きく異なる摂取栄養素があるのでは? 積極的にビタミンCを摂る人は、全く摂らない人にと生活様式そのものが違う可能性だってあるのでは? そんな疑問が浮かびます。

 このビタミンCについては、過去様々な報告があり、その効果に肯定的なものも否定的なものもあります。6年間にわたりビタミンCとビタミンEとβカロテンをサプリメントで摂取していた栄養状態のよい人々において白内障による視力の低下には、有意な効果は見られなかったとか、ビタミンCを含むマルチビタミンやサプリメントを10年間摂取した人では、核および皮質の白内障の発生率が60%まで減少したとか・・・
今回の疫学調査も、5年以上(食習慣だから、うん十年?)の結果だから、肯定的な結果だったのかもしれません。
 ただ、眼科では、古くから白内障患者さんにビタミンCを処方してきましたが、数年前に、ビタミン剤の保険適応がなくなり、処方できなくなりました。その後で、有効だと言われてもね・・。皆さん、要するに、バランスのいい食習慣を身に着けましょうね。あんな記事に引っ張られて、いきなりビタミンCの大量摂取に走っても、意味ないですよ。
by takeuchi-ganka | 2007-02-28 16:31 | 白内障 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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