当院の検査機器の紹介:HRTⅡ(その2)
2007年 03月 21日

次は、緑内障の例です。ごく早期の緑内障で、当然全く自覚症状のない状態です。

視野を見ても、上方の中心に近い部位に1個だけ感度低下部位があるだけで、これだけでは、緑内障性変化と診断できないレベルです。ただ、眼底を見ると、下方に明瞭な神経線維層欠損:NFLD(乳頭に連続して、下方に弧状に広がる暗い部分)があります。診断は、容易で、眼底をひと目みるだけで、緑内障と診断してしまいそうです。このNFLDが、真に緑内障性と言うには、このNFLDに連続する乳頭の陥凹が下方のNFLDのある方向に向かって拡大している(つまりノッチが存在する)ことを確認することが必要です。その為には、接触型コンタクトレンズをつけて、眼底(乳頭)をしっかり見ることが必要です。この古典的な作業が基本中の基本で、かつ一番大切な検査と言えます。この乳頭を詳細に見てゆきましょう。

この写真をみると、乳頭下方に異常な血管のようなものがありますが、これを無視すると、明瞭なNFLDがあり、その方向に乳頭陥凹が拡大しているように見えますが、この判断は、写真よりも、接触型コンタクトを使いスリットランプで、両眼で立体視しながら見ることで100倍確実となります。診断するだけなら、後述するHRTⅡよりもずっと精度が高いのです。

これは、この眼をHRTⅡで検査した乳頭の解析結果です。2つの画像とひとつのグラフがありますが、順に見てゆきます。

この図は、前回説明したように、緑が平らな部分つまりリムです。赤が陥凹部分、青がその中間のスロープ部分です。陥凹が、下方に限局して拡大している、所謂ノッチが明瞭です。

これは、カラー眼底写真に似た反射画像と呼ばれるものです。眼底写真と同じようにNFLDが明瞭に見られます。ここでは、視神経を6分割して各セクターについて、リム面積と陥凹面積の比率を標準データベースと比較した結果を表示してくれます。つまり、リム面積が↓、陥凹面積が↑となった場合、その程度が標準データベースと比較して稀(0.1~5%)であれば黄色:これはボーダーライン!。非常に稀(0.1%以下)なら赤:異常!と表示されるのです。この小さなノッチは、人間の判断では明らかに異常なのですが、HRTⅡは、まだボーダーラインと判断しています。人間の勝ちです。

このグラフは、コントアラインに沿った網膜表面の高さを示したものです。つまり乳頭縁に沿って、ぐるっと一周の網膜表面の高さの表示しているのです。緑内障の本質は、神経線維欠損なので、当然欠損部分は低くなります。正常では、フタコブラクダのように、上方(90度)と下方(270度)のところに山がある2峰性のグラフとなりますが、このグラフは、270~315度の間で、急激に低くなっていますが、この所見がNFLDそのものです。NFLDは、眼底を見たときに、暗い明るいというコントラストを頼りに判定していますが、この器械は、高さそのものを表示してくれますので、ここは器械の勝ちでしょうか。

患者さんのプレゼンテーション用には、有用だと思うのですが、こんな擬似3D表示ができます。時に、あまり役立たずのこともありますが、この症例の場合は、ノッチやそれに連続したNFLDが分かりやすく表示されています。
様々なパラメーターについては、次回紹介します。