加齢黄斑変性を予防するために(2)
2007年 04月 17日
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加齢黄斑変性の治療法
1. レーザー治療
①レーザー光凝固(直接凝固) (以前主流だった治療)
②光線力学療法(PDT) (現在主流になっている治療)
③経瞳孔温熱療法(TTT)
2. 手術治療
①新生血管抜去術
②中心窩移動術 (最後の手段?)
3. 薬物治療
①抗VEGF アプタマー (将来の主流?)
②抗血管新生ステロイド (将来の治療)
③抗VEGF抗体、PKC阻害薬、MMP阻害薬・・・・(将来の主流?)
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加齢黄斑変性の治療は、かつてレーザー光線による脈絡膜新生血管の直接凝固しかなかった時代に比べれば、発達した硝子体手術、新しい光線力学療法、抗VEGF療法など・・・非常に進歩しているのです。ただ、それでも、いったん発症した眼の機能を元に戻すことは至難の業です。発症すれば、不自由なく社会生活が送れる視力を維持できるのは3分の1と言われています。両眼発症の頻度も20%です。何とかして、片眼だけでも守らないといけません。


全く正常に見える眼にも発症予防対策が必要かどうかわかりませんが、少なくとも、どちらかの眼に軟性ドルーゼンがあったり、網膜色素上皮に異常所見がある場合、既に加齢黄斑変性発症の下地が出来ている可能性があるのです。或いは、正常に見えても、片眼に発症している場合、下地は出来ているのだと思います。そんな方は、全力を挙げて発症予防策をとるべきです。ただ、我々医師が、患者さんに投与できる薬剤は、存在しません。だとすれば、いったい何ができるのでしょうか・・・・

この眼球の一番奥に網膜があることは、先日詳しく説明したつもりですが、網膜の中でも、この図の□で囲んだ部位は、最も重要な黄斑(おうはん)部と呼ばれる部位です。この部位が強く障害されると、実質的に視力は殆どなくなります。そしてテーマの加齢黄斑変性は、殆どこの部位に発生するのです。

次の図は、□で囲んだ部位の黄斑部網膜の光学顕微鏡写真です。眼病理アトラス(文光堂)からお借りしました。通常の網膜と異なり、ここは網膜の内層がなく、光は直接視細胞・網膜色素上皮に到達する構造になっています。

The macular pigment. II. Spatial distribution in primate retinas. Invest Ophthalmol Vis Sci. 1984 Jun;25(6):674-85.から
この図も同じ黄斑部の写真です。この黄色い部分に、黄斑色素:キサントフィルが存在します。この色素は、強い光障害作用を示す短波長光(青色)をブロックし、更に抗酸化作用を有し、この部位で発生したラジカルを消去する作用があると考えられています。この色素は、日々暴露している光による障害を抑制する効果があるのです。当然、この色素が少なくなると、加齢黄斑変性発症の危険性が高くなります。黄斑色素は体内で合成されないので、食餌から摂取しなければなりません。ケール(青汁)やほうれん草などの緑黄色野菜に多いく、ルテインを多く摂取する人は、加齢黄斑変性のリスクが少ないことが報告されています。
大変前置きが長くなりましたが、ここからが本題です。つまり、この黄斑色素をサプリメントとして、摂取することが、本当に加齢黄斑変性の予防に繋がるのかどうかを検証する大規模比較対照研究:AREDS (Age-Related Eye Disease Study 2001)が行われたのです。ここで、抗酸化物質+亜鉛(AREDS処方:ビタミンC 500mg、ビタミンE 400IU、βカロテン 15mg、酸化亜鉛 80mg、銅2mg)が加齢黄斑変性への進行を抑制することが証明されました。そして、このAREDS処方を日本人向けに調整したものが、Ocuvite PreserVision です。

ということで、ここで紹介するのは、ボシュロム
から販売されているOcuvite PreserVisionというサプリメントです。『眼に良い』と称されるサプリメントは山ほどありますが、医学的に検証されているものは、殆どありません。その中で、唯一かもしれませんが、このオキュバイトは、大規模比較臨床試験で加齢黄斑変性発症予防効果ありというエビデンスをもつサプリメントなのです。 以上を踏まえて、加齢黄斑変性発症予防の方法とは・・・
1、禁煙(これは基本です)
2、禁煙に成功したら、Ocuvite PreserVision
(禁煙できないなら、Ocuvite PreserVision+Lutein)
これが、現在考えられる根拠ある予防法でしょうか。医者は、サプリメントを販売したら駄目らしいので、私は売りません。眼科で検診を受けられて、黄斑部網膜に加齢黄斑変性の前駆病巣があるか、片眼が既に加齢黄斑変性がある場合は、上記予防法をお勧めします。オキュバイトは、ボシュロム社から購入可能で、1か月分4200円です。勿論、眼の定期検査は必須ですが・・
(因みに、私は、ボシュロムの回し者ではありません・・)
将来、AREDS Ⅱの結果が出たら、より有用なサプリメントを紹介できるかもしれません。乞うご期待!

