第6回Symposium of Ocular Surface and Infection

平成19年5月26日
帝国ホテル大阪 孔雀の間

近大の下村教授が代表世話人をされている眼感染症のシンポジウムに眼表面疾患が加わったようです。チョット、フォーカスが甘くなって、散漫な印象を受けますが・・・

一般講演
1、慢性涙嚢炎患者における涙液中菌量変化(大阪医大)

 慢性涙嚢炎があれば、涙嚢で増殖した細菌は、涙小管を逆流して涙液中に出てきます。そこで、涙液を採取し、細菌量を測定することで、起炎菌の同定や治療効果の判定に利用できるというような発表でした。

2、阪大眼科における翼状片手術について(阪大)
 翼状片の手術は簡単ですが、問題は再発予防です。伝統的に阪大は、術後ベータ線照射(ストロンチウム90)を行っているようです(阪大以外でもしているのでしょうか・・・)。ただ、阪大でも近い将来、これが出来なくなるそうなので、この代わりの術式として、マイトマイシンを塗布する術式と比較したようです。結果は、十分後継の術式として使うことができる。
 0.02%マイトマイシンを3分間術中塗布し、江口式の弁移植を併用した術式。ただ、軽症例は、MMC使わず弁移植のみ。非常に重症例では、あのアバスチンの併用もありうるらしい・・
 翼状片は、1にも2にも再発予防です。大きい小さいよりも、患者さんの年齢でしょうか。若い人の小さな翼状片は要注意。

3、Cadidaによる角膜真菌症10例の検討(近大)
  カンジダを含む真菌の感染が疑われたら、病巣を擦過し(真菌感染の場合、硬い感じだそうです・・)、鏡検し培養に出す。培養結果を待ってる余裕はないから、臨床所見と鏡検の結果で病原菌を推定し、薬剤をチョイスする。カンジダが疑われたら、フルコナゾールを0.2%に調整したものを頻回点眼・結膜下注射、さらに点滴・・・が基本治療だそうです。
 普通の人が簡単に真菌感染することは殆どなくて、様々な条件が重なって真菌感染は成立します。この条件とは、高齢・ステロイド点眼・角膜上皮障害でしょうか。
提示された例は、例えばヘルペス感染でステロイド点眼を行い、遷延性角膜上皮障害があって、そこに真菌感染。或いは、眼サルコイドーシスに対して、ステロイド点眼・内服している眼に、内反症による遷延性角膜上皮障害があった場合でした。弱り目に祟り目って感じです。

4、非典型的臨床病型を示す角膜ヘルペス(阪大)
①45歳、男性。甲状腺機能亢進症のサーファー。両眼性の角膜上皮障害。角膜中央に大きなびらん。角膜知覚が落ちていない・・・これはHSV
②50歳、女性。強膜炎・虹彩炎があって、偽樹枝状病変。これはVSV
③60歳、女性。角膜中央に脂質沈着したような白斑があって、充血。前房水からHSV
④65歳、男性。角膜内皮側に平行に走るKP。罫線状角膜炎?これはCMV
 昔から言われていることでしょうが、ヘルペス属の角膜病変は、何でもあり?。ただ、PCRが容易に利用できる施設は多くないので、怪しいなあと感じるセンスが必要で、ヘルペスを疑ったら、治療してみて効果を見ながら診断するしかないようです。

5、当科で経験した眼内炎の検討(大阪市大)
①白内障術後 腸球菌感染で、すぐに手術したけど失明(白内障術者として、最も恐ろしい合併症です。腸球菌は恐ろしい。)
②白内障術後、1ヶ月ぐらいして、P.acnesの感染。毒性が低いので、手術して予後良好。
③白内障術後、角膜潰瘍(基礎疾患に糖尿病)。MRSAに感染して予後不良。
④白内障術後、MRCNS感染。直ぐに手術して予後良好。
⑤網膜剥離手術後20年して手術に使用したバックルへのMRSAの感染。予後良好。

※白内障手術の際に大切なのは、後嚢を守ることと、綺麗な創口をつくることでしょうか。

6、結核治療後に発症した網膜静脈周囲炎の1症例(関西医大)
 これは、関西医大同窓会と全く同じ演題なので、割愛。

7、ひらかた山岸眼科における白内障周術期の抗菌作戦(ひらかた山岸眼科)
 白内障手術をしている開業医にとって、最も恐ろしいのが術後感染です。この感染は、いつどこからやってくるかわからない。だからこれをテロに例え、テロ対策のお話です。映画24なら、山岸先生は、CTUのJ.バウアー? これは、切実な問題を含んでいるので、全部写真撮ってしまいました。山岸先生お許しを。

 周術期の抗菌作戦
1、患者教育と指導
 ※これは特に患者さんの家族に対して念入りにすることが重要だと・・
2、術前の眼無菌化(減菌)
 ※3日前からベストロン点眼。抗菌剤内服は当日朝から4日間。
3、手術室の無菌化
 ※手洗いの水は、水道水でもいいと言われていたようですが、実際は、徐々にグレードアップし、オゾン水を経て、BK(バクテリアキラー)水なるものを使用しておられるらしい。MRSA,HB、HIV、SARSにも有効だとか・・・バクテリアキラー?
4、手術開始時の眼無菌化
 ※とにかく、イソジンを多用するのが印象的です。
5、感染に強い眼にする手術手技
 ※これは、何といっても、後嚢を守ることでしょうか。それと創口の問題。角膜切開よりは、強角膜切開かな?サイドポートも完全閉鎖。眼内レンズはインジェクター。
6、手術終了時の眼無菌化
 ※フロモックスの結膜下注射、最後にイソジン洗浄、ガチフロ、ジクロスターPF点眼して、またイソジン点眼。タリビット眼軟膏たっぷり。眼帯したら、あとはアンタッチャブル。
7、術後の眼無菌化(感染予防)
※術後1ヶ月クラビット点眼継続。ただし、他の疾患にはなるべく用いない?これはメーカーにとっては痛し痒し・・。切れ味の鋭い薬剤は、ここぞと言う時の為にとっておく。普段は使わない??



コーヒーブレイクを挟んで、特別講演です。

特別講演
Ⅰメカニズムに基づくアレルギー性結膜疾患へのアプローチ(高知大:福島)


 以前、どこかの講演で聞いた内容ですが・・・(第三回大阪角膜フォーラム)
http://takeganka.exblog.jp/4823644

 アレルギー性結膜炎の頻度
1、通年性アレルギー性結膜炎 48.0%
2、季節性アレルギー性結膜炎 36.5%
3、アトピー性角結膜炎 13.9%
4、春季カタル 1.6%

 チョット、?と思いますが、通年性が一番多いようです。年中、痒いという愁訴で抗アレルギー剤をもらう人が多いってことでしょうか。季節性アレルギー、スギ・ヒノキ、イネ科雑草、キク科雑草など方が多く感じるけどなあ・・。春季カタルは重症なので、1.6%と少なそうですが、数十万人もいるので、そんなに少ないとは言えないのだそうです。

  抗アレルギー薬は、メカニズムにより以下の如く分類できます。
1、メディエーター遊離抑制
   肥満細胞から遊離されるメディエーターには
      ① Preformed mediators:ヒスタミン、セロトニン、ECF-A
      ② newly generated mediators:LTC4、D4、E4、 TXA2、PAF、PGD2
   の2種がり、これらは、平滑筋収縮・血管透過性亢進・粘液分泌亢進・炎症細胞浸潤を引き起こす。このメディエーター遊離を抑制する薬剤としては、インタール、アレギサール、リザベン、ケタス、ゼペリンなど。
2、ヒスタミンH1拮抗薬
全てのメディエーターではなく、ヒスタミンレセプターをブロックする薬剤で、ザジテン、リボスチンなど
3、両方の作用をもつ:パタノール。
 
※即効性という点では、ヒスタミンH1ブロックのリボスチンが有利。1週間点眼続けたら、同等?
アレルギー性結膜炎の軽症例は1型アレルギー主体(血管透過性亢進)で、抗アレルギー剤の点眼で対処。
重症例(増殖性変化あり)は、Ⅳ型アレルギーも関与しているので、加えて、ステロイド、免疫抑制剤が必要。現在、パピロックミニという免疫抑制剤点眼が発売されていますが、これを長期に使えば、ステロイドからの離脱も可能になるようですが、まだまだ高価で、ちっと使いにくいです。
重症型に対する治療方針は、以下の如くだそうです。
(重症になるほど下位の治療まで必要になります。)
1、抗アレルギー点眼
2、免疫抑制剤点眼追加
3、ステロイド点眼増減
4、ステロイド内服・結膜下注射・外科治療


Ⅱコンタクトレンズと感染性角膜炎(国立東京:山田)

 コンタクトレンズの普及、低年齢化により、感染性角膜炎は確実に増加しているようです。20歳代と60歳代にピークがあり、若い方がコンタクト関連でしょうか。
健康な眼には、いくら細菌があっても感染しにくいものなのです。恐ろしい緑膿菌にしたって、ブドウ球菌にしたって、防御機能の備わった眼には、なかなか感染しません。感染が成立するためには、いくつかの条件が必要になります。防御機能が破綻しないといけません。外傷、基礎疾患、そしてコンタクトレンズです。コンタクトレンズが誘因になっているのが40%以上なのです。
使い捨てのソフトコンタクトレンズの場合は、表皮ブドウ球菌に代表される常在菌が起炎菌となり、定期交換コンタクトレンズの場合は、グラム陰性桿菌か検出されないことが多く、レンズケースで増殖した菌が原因だそうです。
 起炎菌によって病巣に特徴があるとも言えますが、鑑別はそれほど容易じゃない
①ブドウ球菌(表皮・黄色):円~類円形、白色、強い炎症
②緑膿菌:輪状膿瘍
③カンジダ:硬い感じ、少し盛り上がり、衛星病巣・・・
④アメーバ:初期には上皮内浸潤、充血・痛み(ヘルペス様)。この時点では診断がつきにくく、ゆっくり進行して、放射状角膜神経炎を呈する(これは特徴的で、ここで診断しないといけない?)。やがて、緑膿菌様の輪状膿瘍を呈する。

 感染性角膜炎に出合ったらどうするか?勿論、所見から病原菌を推定するのですが、その前に、先ず、起炎菌にはどのようなものがあるのかが、知っておくということで、以下のデータを。

※感染性角膜炎全国サーベイランス・スタデイグループのデータから
  感染性角膜炎の起炎菌
 グラム陽性球菌(55%)
     黄色ブドウ球菌(13%)
     表皮ブドウ球菌(13%)
     肺炎球菌(8%)
 グラム陰性菌(32%)
     緑膿菌(7%)
     モラクセラ(4%)
 嫌気性菌(4%)
     プロピオニバクテリウム属(2%)
 その他(11%)
     真菌(9%)
     アカントアメーバ(1.5%)

   このような背景がることを念頭に置きつつ、診察です。
   所見から起炎菌の推定ぐらいできても、同定は困難。でもすぐに効果的な治療を開始する必要があります。
     初期治療
       抗菌剤の頻回点眼(1時間毎~10回/日)が基本
          
       フルオロキノロン  アミノ配糖体  ペニシリン・セフェム 
緑膿菌   〇       ◎       × 
モラクセラ  ◎       〇       ◎     EM
レンサ球菌 〇       ×       ◎ 
ブドウ球菌 〇       〇       〇     ABK、VCM
アクネ菌   〇       ×       ◎ 
真菌     ×       ×       ×      抗真菌剤
アメーバ   ×       ×       ×      抗真菌剤など

 この時、最初に選ぶべきは、やはりフルオロキノロン。どのフルオロキノロンでも一緒かどうかは微妙な判断。モラクセラ、アクネ菌はどのキノロンも効くし、コリネバクテリウムは何も効かないことが多いけど病原性が低い?レンサ球菌は新しいキノロン(ガチフロ、ベガモックス)がいい。緑膿菌はトスフロが有利。
演者は、初期治療のフルオロキノロン頻回点眼をサッカーのフリーキックの壁に例えている。壁のある部分は、完全に防御できるので、壁を乗り越えてくるボールにだけ気をつければいい。シュートコースを限定できる。自験例では、この初期治療で、約80~85%有効だったと。不成功例は、耐性菌・真菌・アメーバ。
 開業医としては、クラビットの毎時点眼を行って、専門医に送ればいい?或いは、緑膿菌ぽいなら、クラビット+アミノ配糖体、レンサ球菌ならクラビット+セフェム・・・・・という選択もありだそうです。
初期治療としては、フルオロキノロンの頻回点眼に間違いないのですが、このキノロンは、角膜実質細胞毒性が高いとも言われていて、角膜潰瘍に頻回点眼すると穿孔しやすいらしい。特にトスフロ?

 Ⅲドライアイ最近の話題~新診断基準と類縁疾患を中心に(東京歯科大:島崎)
  何度も聞いたような話なので、パスしました。それにしても、東京歯科大は精力的です。大阪も頑張れ。
by takeuchi-ganka | 2007-05-29 19:59 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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