防腐剤のない緑内障点眼
2007年 06月 17日
緑内障点眼の基本は、その患者さんにとって必要な本数を必要な期間投与し続けることです。その間、角膜上皮障害がある程度発生したとしても、その患者さんにとって許容できる範囲内であれば文句ないのです。多数の緑内障患者さんを長期間にわたって診る側としては、常にそんなことを考えながら、角膜も見守っている訳です。緑内障点眼が、角膜に優しいにこしたことはありませんが、だからと言って、何も、全ての緑内障点眼が防腐剤フリーである必要もないのです。
とは、言っても、角膜上皮に優しい点眼は魅力的であり、企業としては、そこに付加価値を見出して、各社努力しておられます。塩化ベンザルコニウム濃度を下げたり、零にしたり、全ての添加物を零にしたり、様々な製品が出つつあるのです。
現在緑内障点眼は、その強力な眼圧下降作用と眼圧下降のみがエビデンスという後ろ盾により、残念ながら?キサラタンの独壇場です。キサラタン点眼ができない場合、キサラタン点眼が無効な場合、或いはキサラタン点眼単独では眼圧下降が不十分な場合に、他の点眼の出番となります。このキサラタンのパートナーとして、各種β遮断剤の中から選ばれるのですが、そのβ遮断剤も付加価値を付けないと、パートナーとして採用されません。眼圧下降作用には限界があるので、副作用を軽減する方向で努力されています。
1、点眼回数を下げる
2、濃度を下げる
3、防腐剤を減らす。
今回紹介するのは、3の防腐剤を含んでいない点眼です。
1、チマバック(日本点眼) :チモプトールのジェネリック
2、ブロキレートPF(日本点眼) :ミケランのジェネリック
3、ニプラジロールPF(日本点眼) :ハイパジールのジェネリック
4、ニプラジロール(わかもと) :ハイパジールのジェネリック
1のチマバックは、かつて第一選択薬だったβ遮断剤チモプトールのジェネリックです。かなり大ぶりな容器に工夫があり、防腐剤フリーです。例えば抗菌剤なら、1週間とか2週間の点眼でいいのですが、緑内障は、10年、20年ですから、この大ぶりな容器の使いずらさは、致命的かもしれません。ただ、塩化ベンザルコニウム過敏症の緑内障患者さんの選択肢は非常に少ないので、貴重な点眼のひとつでした。
2と3は、この日本点眼から、PF点眼液シリーズとして発売されているものです。防腐剤無添加つまりPreservative Freeの意味のPFシリーズです。ただ、防腐剤無添加ですが、添加物なしではないのです。ボトルは二重構造になっていて、通気口があり、点眼液が出る部分には、逆止弁、メンブランフィルターがあります。点眼は、この通気口を押さえつつ、通常より若干??強めに押して点眼します。点眼終了し、通気口を離すとそこから空気が入り、逆止弁の閉口によりフィルター部分に残った液を内部に引き込みます。よくわかりませんが、これにより、防腐剤がなくても、内部は無菌状態に保たれるようなのです。
ここにその説明があります。
ブロキレートは、ミケラン。ニプラジロールは、ハイパジールのジェネリックです。
4は、ハイパジールのジェネリックで、わかもとから発売予定です。わかもとがニプロと共同開発した塩化ベンザルコニウム無添加のNP容器(None-preservative Multi-dose Container)を使用しています。2 種類のフィルター(親水性と疎水性フィルター)を装着することにより、内溶液の無菌性を保つそうです。点眼瓶も普通の大きさで、滴下も容易?(硬くはないが、ストロークが大きい?)だそうです。
説明1
説明2
※これらの点眼のアドバンテージは、角膜毒性の低さにあります。これらの点眼瓶が、今までの点眼瓶と同等の扱いやすさで、コンプライアンスが低くならないのであれば、その優位性はゆるぎないものとなるのですが、現時点では、そのあたりが微妙です。緑内障患者さんは、高齢者も多く、なかなかうまく点眼できない人も多いのです。この新しい点眼容器がさらに洗練されて、どんな方にも使いやすいものであれば患者さんにとって福音となることは間違いありません。