第7回近畿眼科オープンフォーラムの印象

 立派な世話人の先生方のお陰で、この勉強会は、いつも興味深いテーマですが、今回は、原発閉塞隅角緑内障関連です。残念ながら、『朋遠方より来る・・』為、途中退席し、別の場所で至福の時間を過ごしましたので、報告も途中までです。あしからず・・・

Ⅰ.事前アンケート調査の発表
『レーザー虹彩切開術』 について

1、レーザー虹彩切開術している:73%
※頻度はよくわからんけど、レーザー虹彩切開術後、水疱性角膜症が生じるかもしれないという恐怖感が蔓延し、レーザー虹彩切開術自粛ムードの中、それでも、現実はレーザー虹彩切開術しているが73%。装置を持っている人は殆どやるってことのようです。私も、ずいぶん適応を狭めましたが、まだやります。

2、使用レーザー:アルゴン:25%、ヤグ:3%、併用:72%
※少しでも、角膜内皮に対するダメージを軽減する目的で、なるべく、ヤグを併用する傾向にあるようです。
3、レーザー虹彩切開術前角膜内皮測定する:77%
※当然でしょう。まあ、角膜内皮は細隙灯顕微鏡で見えるので、正確な数は分からないけど、異常がないかどうかは分かるので、全例測定までは必要ないかもしれませんが・・・怪しげなら、絶対写真とるべきでしょう。
4、レーザー虹彩切開術後角膜内皮測定する:69%
※ある意味、レーザー虹彩切開術後の方が、重要かもしれません。ただ、漫然と写真とって測定しても、長期間かけてじわじわと角膜内皮が減少するのをチェックするのは、難しいかもしれません。レーザー虹彩切開術後の患者さんの場合、時々細隙灯顕微鏡で内皮をチェックする方が重要だと思います。
5、レーザー虹彩切開術が原因の水疱性角膜症を経験:55%
※このように発生頻度の低い、また術後時間が経過して発症する疾患については、自分がレーザー虹彩切開術した記憶があるうちに、水疱性角膜症を経験することは極めて稀だと思います。術後の眼内炎と同様、症例からフィードバックが難しいです。だから、経験していなくて、私だけは大丈夫だと高を括る。逆に、1例経験すると、そりゃ大変だと、非常事態宣言。もっと確かな数字が欲しい。

治療方針アンケート
症例1:50歳女性のPACG
 私は、レーザー虹彩切開術だと思いましたが、これは38%、20%はPEA+IOLのようです。
矯正視力が(1.0)の患者さんにどちらを選択するかは、意見が分かれます。PEA+IOLは、瞳孔ブロック解除と屈折矯正手術を兼ねてますが、所謂白内障手術をするのです。ただ、するなら、両眼しないと意味がない。左眼は、ただのPACSだけど・・・やるのだろうか。
症例2:50歳女性のPAC(PACSに近い)
 これは、隅角に対する評価で意見が分かれるでしょうが、私は経過観察と判断しましたが30%以下?意外とレーザー虹彩切開術が多いのにびっくりです(40%程度)。経験上、隅角の正確な評価をできる人は意外と多くないので、当然、その後の治療方針もバラバラになりかねないのですが、PACSに近いPACなら、慎重に経過観察します。
症例3:70歳女性の急性PAC
※私は、レーザー虹彩切開術を選択しました。角膜が少々濁っていても、グリセリンを点眼すれば数分ぐらい透明性を確保できますし・・・。ただ、これは少数派で、60%がPEA+IOLのようです。急性発作を寛解させないままPEA+IOLへ進むのでしょうか?マンニトール点滴とピロカルピン点眼で眼圧30といっても、瞳孔ブロックは解除されていない。非常に浅い前房で、散瞳不良で、角膜の透明性は低下しています。血液房水柵は破壊されています。もっと重要なのことは、この急性PACには、原発でないもの、つまりチン小体が脆弱で、或いは、一部断裂していて亜脱臼した為に急性発作に至ったケースが含まれます。こんな条件の中、行われる白内障手術の危険性と、一度、瞳孔ブロックを解除し、発作を寛解した後、十分消炎をはかり、白内障手術を計画する方が、結果として安全なように思うのですが。レーザー虹彩切開術が駄目だというなら、周辺虹彩切除術でもいい。発作状態を寛解させないままPEA+IOLすることには、どうも賛成できません。

Ⅱ、講演会 (の印象)
①『最新!PACとPACG』(大阪厚生年金 桑山先生)
  言葉の問題ですが、PACとPACGの差は、視神経の緑内障性障害(GON)の程度です。言ってみれば、病期(ステージ)の問題。なのに、異なる疾患のように名前が変わるというのは誤解を招きます。保険の問題で、治療(つまり瞳孔ブロック解除)すれば、元に戻る眼と、元に戻れないGONがある場合と名前を変えたようですが、どうも割り切れません。また、POAGと異なり、PACGのGは、評価が難しいのです。いつからGが(+)かどうかは、医師によって大きく意見が分かれるとすれば、とっても曖昧なガイドラインであります。続発緑内障の場合は、GONを無視して緑内障と呼ぶようだし、この点も曖昧です。どうも好きになれません。
 Appositional closureという言葉があります。瞳孔ブロックやプラトー虹彩要因の為に、隅角が非常に狭くなり、ついに閉じる。閉じているけど、押せば開くので、器質的な癒着(PAS)はない。私は、UBM検査に10年以上携わっていますが、UBM上のAppositional closureなんて、よくあることです。だからと言って、眼圧が上がっていることは極めて稀です。眼圧の上がるAppositional closure①(水を通さない)と、眼圧正常のAppositional closure②(水を通す)の差を区別することは至難の業です。隅角鏡を駆使しても、Appositional とsynechial を区別することは容易ですが、Appositional closureを①と②に分けることは不可能でしょう。

※隅角を閉塞させる4要因
1)相対的瞳孔ブロック
2)プラトー虹彩
3)水晶体前方移動
※これには、加齢によるレンズの厚みの増加とチン小体の緩みがありますが、後者の要因が強くなれば原発じゃないですね。
4)毛様体ブロック
なんとも、微妙な要因ですが、このメカニズムは、悪性緑内障で有名で、メカニズムが分かってからは、悪性と呼ばなくなってます。毛様体と水晶体の間で房水の流れを遮断し、房水が後方へトラップされると水晶体が前方へ押される。この軽度のメカニズムが原発閉塞隅角緑内障に微妙に関わっている。今後、UBMで見ておきますが、心眼が必要かも・・・

②『再考!レーザー虹彩切開術の適応と方法』(阪大:大鳥先生)
 隅角を閉塞させる要因を、瞳孔ブロック・プラトー虹彩・水晶体に分けて、瞳孔ブロックの要素が高いものが、レーザー虹彩切開術の適応。典型例が、急性発作眼の他眼。
前房深度で言えば、2.0mm以下が対象となる。(個人的な経験を言えば、1.7以下は危ない印象をうけますが、1.9以上は、そうでもありません。)
どうせやるなら、省エネでやりましょうと。ヤグを併用して、いかに省エネを図るかがポイント。
消炎もしっかりと。ステロイド結膜下注射か頻回点眼。

③『最新!PACの外科的治療』(神戸中央市民:栗本先生)
 最後は、なんでもPEA+IOLで解決しましょう?
 一番の疑問は、慢性の原発閉塞隅角緑内障にレーザー虹彩切開術しても眼圧が下がらないから無効という判断。例えば、瞳孔ブロックが原因で周辺虹彩前癒着(PAS)が発生し、PASが徐々に広がっていくのが慢性原発閉塞隅角緑内障。この場合、PASの範囲に比例して、房水流出抵抗は上がる。PASが50%を越え、70、80となってくると眼圧が上昇してくる。眼圧が上がってくれば、瞳孔ブロックは減少します。瞳孔ブロックというのは、前後房の圧差ですから、当然です。つまり、眼圧上昇している慢性原発閉塞隅角緑内障は、瞳孔ブロックが減少しているのです。眼圧が高くなればなるほど瞳孔ブロックは減少している。だから、レーザー虹彩切開術しても効果は少ないのです。ここに言及せず、眼圧が下がらんから無効というのは単純すぎるような・・・。
 それでも、その時点でレーザー虹彩切開術する意味がある理由は、例えば器質的PASが70%でも、機能的閉塞が+20%あり、その部分を改善できるかもしれないのと、放置して、器質的PASが更に増加するのを予防する為です。長年、緑内障をやっている人間は、この全てを承知の上で、とりあえずレーザー虹彩切開術をして、経過を診ていた筈です。そして、眼圧が許せる範囲内におさまるかどうか判断する。もともと、視神経が脆弱なNTGと違うので、少々高くてもかまわない?。許せる範囲外だと判断すれば、点眼追加、更には、手術というのが、今までの一般的考え方です。
 勿論、レーザー虹彩切開術がとっても危険なのであれば、白内障手術すればいいでしょうが、原発閉塞隅角緑内障(急性以外)の診断レベルが非常に下がっている若い医師達は、この事を十分承知の上で、原発閉塞隅角緑内障に対処していただきたい。最終的に、PEA+IOLでもいいですが。

 ここで退場、いざ至福のひとときへ・・
by takeuchi-ganka | 2007-06-24 19:17 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
カレンダー
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31