2007年 08月 21日
再び糖尿病網膜症について その2 (糖尿病黄斑症について)
糖尿病黄斑症の治療方法
1、網膜光凝固
2、従来の薬物治療
このふたつが、かつての治療でした。
まあ、網膜光凝固は、今でも適応があります。特に局所浮腫が原因で、視力低下の原因になりかかっている場合(ETDRSのClinically Significant ME?)、網膜光凝固は今でも第一選択です。ただ、びまん性の浮腫になったりCME(嚢胞性黄斑浮腫)を伴ったり、硬性白斑の沈着がある場合は、網膜光凝固の効果は低く、網膜光凝固の適応は狭くなります。光凝固の方法も、汎網膜光凝固と異なり、毛細血管瘤の直接凝固、浮腫全体の格子状凝固これも、低出力広間隔格子状光凝固など工夫されていますが、いづれにしても視力低下を防ぐ効果はある程度あるものの、一端低下した視力の回復には限界がありそうです。
薬物治療ですが、少し古めの教科書を見れば、副腎皮質ステロイド、非ステロイド系抗炎症薬、炭酸脱水酵素阻害剤、血栓溶解薬、プロスタグランジンE1製剤などが列挙されていますし、私自身、15年以上前に柴苓湯(サイレイトウ)を使用した経験もありますが、結局市民権を得た治療はありません。
※特殊な治療に、高圧酸素療法というのがありますが、一時的な効果しか期待できないと理解しています。
まだ、私自身で、糖尿病黄斑症の治療の全てを把握できている訳ではありませんが、現時点で、この黄斑症に何処まで対応可能なのか、まとめてみました。
3、早期硝子体手術
4、トリアムシノロンの投与(テノン嚢下・硝子体内)
この二つは、単独であったり、併用で行われたりします。
硝子体を切除する目的は、元々は、分厚い後部硝子体膜の牽引が諸悪の根源と考え、PVDを発生させて、切除することであったが、分厚い膜がなくても、或いはPVDがあっても、硝子体を切除すれば治療効果のあることが示されています。
①硝子体の牽引の解除、②網膜上膜の切除、③硝子体中に含まれるサイトカインを除去、更には、若干信用しにくいのですが、④網膜前の酸素分圧が高くなる・・・などが、手術の目的とされているようです。
硝子体を切除するといっても、網膜毒性が危惧されるインドシアニングリーンを併用してまで内境界膜を切除したり、トリアムシノロン(TA)という古いステロイドを二つの意味合いで併用することがあります。ひとつは、TAを硝子体中に投与すると、透明な硝子体が白く見えるようになるので、硝子体ゲルを取り残すことなく、より完全に除去でき、もうひとつはステロイドの抗炎症作用そのものが期待できるのです。
TAの投与は、炎症機転が深く関わっていると推定されるCMEには有効なようです。投与方法には、直接硝子体内とテノン嚢下投与というより簡便な方法があるが、後者でもそれなりに効果を上げているようです。ただ、ステロイドは、何に対してもそうですが、元の原因を取り除いている訳じゃないので、効果が切れれば再発します。テノン嚢下で4-8週間。硝子体投与よりは繰り返しやすいのが利点でしょうか。
眼科プラクティス 7 糖尿病眼合併症の治療指針 7、黄斑浮腫の治療 3)ステロイド治療(131頁)から (トリアムシノロンのテノン嚢内投与前・1ヵ月後のOCT写真。黄斑部浮腫は改善している。)
要するに、糖尿病黄斑症は、非常に手ごわい。ごく初期において、上手く網膜光凝固する方法もあるでしょうが、なかなか困難です。びまん性浮腫は、TA投与が有効でしょうが、その効果は一過性のようで、一般の患者さんにとって、硝子体手術の敷居は、まだまだ少し高いようで、開業医も紹介のタイミングについては、もっとしっかり勉強しないといけません。
5、近未来の治療
現在の地道な治療法よりも、新薬の話は魅力的なので、いくつか紹介してきました。参考にしてください。
糖尿病網膜症の薬物治療その1
糖尿病網膜症の薬物治療その2