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原発閉塞隅角緑内障 その1

再び原発閉塞隅角緑内障について1

この疾患、基本的には、相対的瞳孔ブロックが原因で、虹彩が前方へ膨隆し(forward bowing)、隅角が狭くなり(PACS)、閉塞すれば眼圧が上昇し(PAC)、眼圧上昇が続けば、或いは高度であれば視神経に障害が発生する(PACG)疾患です。ただ、隅角が狭くなり、閉塞にいたるまでには、様々な要因が絡んでいます。
原発閉塞隅角緑内障を引き起こす解剖学的要因は、

1、角膜径は少し小さい
2、角膜の曲率半径はやや短い
3、水晶体は少し厚い。
4、水晶体前・後面の曲率半径が小さい
5、眼軸が短い。


などと、教科書には記載されています。要するに、高齢者の小さな眼って感じです。

原発閉塞隅角緑内障 その1_f0088231_15151629.jpg


これにしても、もし、角膜が異常に小さければ小角膜、水晶体の曲率半径が異常に小さければ球状水晶体、眼軸が異常に短ければ小眼球(下の図)という先天性素因の強い異常となり、全く別の病気となります。

原発閉塞隅角緑内障 その1_f0088231_1517321.jpg


あくまで、原発の緑内障ですから、前述の解剖学的な特徴は、正常値からそれほど大きく逸脱していない。角膜径はほぼ正常だけど、やや小さい。眼軸もほぼ正常だけど、やや短いだけなのです。だけど、結果としては、中等度以上の瞳孔ブロックが発生する眼が、原発閉塞隅角緑内障となる訳です。瞳孔ブロックを発生させる要因の中でも、水晶体の厚みは、加齢に伴い増加することが多く、もともと、素因の強い人は、加齢伴い危険性は増すことになります。
 
 一般に考えられている要因以外に、実際は見えないですが、水晶体を支えるチン小体が脆弱であれば、水晶体の位置は動揺し、前方に位置すれば、瞳孔ブロックは強くなります(極端な場合は、脱臼しますが、その場合は、明らかに原発じゃない)。また、虹彩根部の形状には、queer、regular、steepと3つの形状があり、勿論、同じ前房深度でもsteep は、隅角開口部が狭くなります。最近よく話題に上るプラトー虹彩というのは、steepの典型例です。根部の付着部位の分類もA~Eまであり、Aは、所謂高位付着、つまり先天緑内障ですが、この付着部位の高さも隅角開口部の広さを決定する要因となります。

 原発開放隅角緑内障というのは、眼球の解剖学的要因がほぼ正常に近く、原発という言葉がなじみますが、原発閉塞隅角緑内障は、解剖学的要素のアンバランスが生み出す強い瞳孔ブロックと、それを更に促進させる加齢要因、先天的要因の組み合わせにより、発症している訳で、とても原発とは呼びにくい実態があります。

 それでも、レーザー虹彩切開術をして、瞳孔ブロックを零にしてしまえば、後の要因がいくら変動しても、滅多に閉塞隅角緑内障は悪化しない。プラトー虹彩にしたって、純粋なプラトー虹彩なんか滅多にない。レーザー虹彩切開術後、周辺虹彩前癒着が増え続けた、原発閉塞隅角緑内障なんか見たことないです。だから、危なっかしい眼は、レーザー虹彩切開術すればそれで済んだのです。ところが、どうもこのレーザー虹彩切開術が危険らしい・・・?本当に危険なのかどうかわかりませんが、原発閉塞隅角緑内障の治療は彷徨っています。(続く)
by takeuchi-ganka | 2007-11-26 15:19 | 緑内障 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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