Googleで
『眼底出血』と入力すると40万件以上がヒットします。 一般の人にとって、『眼底出血』といえば、どんなものをイメージされているのでしょうか。実は、眼底出血という病名がある訳じゃなく、様々な病態で、眼底、通常網膜に出血を来たす疾患の総称です。
・放置していいもの
・重大な全身病を示唆しているもの
・すぐに治療しないと視力回復しないもの。
・当面経過観察するしかないもの
など、様々です。
今回は、
『眼底出血』の種類とその意義・対処方法について述べていきたいと思います。といっても、教科書のような網羅的な記載じゃなく、一般開業医が、時々経験するような比較的ポピュラーな『眼底出血』についてのみ記載します。
1、網膜静脈分枝閉塞症
2、網膜中心静脈閉塞症
3、糖尿病網膜症
4、高血圧性網膜症
5、加齢黄斑変性
6、網膜細動脈瘤
7、硝子体出血?
こんなものでしょうか。今回は、眼底出血シリーズ?の第一回(第二回以降があるかどうかは不明ですが・・・)として、
網膜静脈分枝閉塞症を取り上げます。
要するに網膜の静脈が閉塞し、閉塞した部位に流れるべき血液が血管外に出てくる訳です(出血)。上の写真は、乳頭の耳下側(右下側)で、網膜静脈の比較的太い枝が閉塞しています。そうすると、本来この血管に流れ込むべき血液は血管外へ・・・つまり出血します。下の写真も乳頭の耳上側の少し細めの静脈が閉塞し、その上方に出血が見られます。左の写真の場合、視力低下をきたしますが、右の写真のような状態では、全く自覚症状のないことが殆どです。このように、同じ名前の網膜静脈分枝閉塞症といっても、高度の視力低下から無症状まで様々です。入院して手術することもあれば、放置することさえあります。

網膜の静脈が視神経内で閉塞すると、
網膜中心静脈閉塞症(CRVO)となりますが、視神経を出ると静脈は分岐します。最初の分岐部近傍で閉塞すると、
半側網膜中心静脈閉塞症(hemi-CRVO)という特殊な状況になりますが、それより末梢の静脈が閉塞した場合、
網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)と呼びます。網膜内で動脈と静脈はしばしば交叉します。その際、動脈が上になったり、静脈が上になったり一定じゃないですが、耳側では鼻側よりも動脈が上のことが多いようです。耳側では70%以上で動脈が上のようです。この動脈が上の場合が問題なのですが、硬化した動脈に圧迫された静脈の内皮細胞が障害され、血栓が形成され、血管閉塞にいたる。この図の場合、左の交叉部位は危険だが、右はそうでもないということになります。

BRVOが発生すると何が一番困るかと言えば、やはり視力低下です。それも
黄斑浮腫による視力低下。勿論、他にも合併症は多々あります。網膜に新生血管が発生し、硝子体出血を来たすこともあれば、障害部位に網膜裂孔が発生し網膜剥離になることもあるでしょうし、稀には血管新生緑内障ということもあるでしょうが、何と言っても、黄斑部の浮腫が最大の問題だと思います。この症例でも、左眼の下耳側の静脈が視神経乳頭近くで閉塞し、三角形のエリアに濃厚な網膜表層の神経線維走行に沿った出血があり、多分視野欠損を伴っていると思うのですが、最大の問題は、この出血ではなく、次の図で示した黄斑部の浮腫なんです。

(続く)