2008年 01月 08日
眼底出血 その5
この症例は、下方の網膜静脈の分枝が閉塞しています。この為、その末梢領域の濃厚な出血と高度の黄斑部の浮腫があり、視力も高度に低下しています。この下耳側の網膜静脈は、視神経乳頭上で1回、その1乳頭径ほど下方でもう1回動脈と交差し、その後かなり下方で、分枝した枝が動脈と交差した部位が今回閉塞した訳です。
ここを事故現場(赤丸)(左の図)としてみると、危険部位(黄色丸)(右の図)は、その他にも多数あり、珍しいですが、一人の患者さんで、時間差で、この分枝の閉塞が何か所も発生することだってあるのです。
2枚目の写真は、1か月後に硝子体手術をしてもらい、更に1ヶ月後の眼底写真です。まだ、出血も浮腫も強いままです。明らかに黄斑部浮腫が改善しだしたのは、6か月ほどしてからで、10か月もかかってやっと出血も浮腫もほぼ消失しました(3枚目の写真)。 丸で囲んだ場所は、閉塞した血管を代償するバイパス血管です。これが形成されると出血も浮腫も改善方向に向かうのですが、なかなか時間がかかりますし、出血・浮腫が零になっても、まったく元通りの視力にはなりません。