第39回大阪眼科手術の会(No272)

最近は、大きな学会以外にも、実に多種多様の勉強会がありますが、今回は、眼科手術に関する勉強会で、冷たい雨の降る土曜日の午後に、ホテルグランビア大阪であり、出席してきました。同じ時間帯に、近くのホテルで、もう少し大きな規模?の勉強会があったのですが、今回はこちらへ・・・。結構楽しめたので、忘れないうちにまとめておきます。

1、霰粒腫の治療(山形:井出眼科)
 霰粒腫という非常にありふれた疾患の治療法について。開業医としては、ここを避けて通る訳にはいきません。それぞれの医師が、経験に基づいて、治療の基準のようなものを持っていると思います。ただ、よく考えてみると、簡単な疾患なので、網膜剥離や緑内障と違って、真正面から取り組んだことが少なく、興味をもって聞きました。
 この疾患の概念としては、マイボーム腺の貯留嚢胞に始まる慢性肉芽腫性炎症。マイボーム腺内に脂質が貯留し、やがて肉芽腫を形成し炎症を伴いながら大きくなる。外から触ると表面平滑・境界鮮明な硬結があります。前葉が障害を受けると内容物がしみ出し、充血が強く、潰瘍が形成されたりしますが、演者らは、これをタイプ2、前葉の障害がないか、軽微なものをタイプ1と呼んでいるようです。硬結が5mm以上なら大きいと判断するようです。
 タイプ1なら、ゆっくり考えてよく、小さければ経過観察だし、大きくて愁訴が強ければ手術でしょう。タイプ2になりそうなタイプ1は、消炎して手術。タイプ2は、すぐ手術・・・
 この演者の主張のひとつは、全て皮膚切開で行うところです。形成外科の人や形成外科で研修した眼科医は、皮膚切開に対する敷居が低いようです。(ただ、この全例皮膚切開という手技に、全国の多くの眼科医は同意しないのでは・・・)
 演者の手技では、皮膚を切開し、眼輪筋かきわけて、貯留嚢胞をみつけ、切開して内容物を掻爬し、止血して、縫合する。通常というか、私は、瞼結膜側の充血している部位に切開を入れ、内容物を掻爬、圧迫止血で終了です。彼の手技にどれほどのアドバンテージがあるのか不明ですが、演者によれば、瞼板を傷つけないことにメリットがあるのだとか・・・
 
Clin Experiment Ophthalmol. 2007 Nov;35(8):706-12.
A prospective randomized treatment study comparing three treatment options for chalazia: triamcinolone acetonide injections, incision and curettage and treatment with hot compresses.

 紹介されていた、この論文は、トリアムシノロン注射、切開・掻爬、温湿布の3つ霰粒腫治療の方法を比較した初めてのprospective randomized studyですが、これによると、3週間後の治癒率は、トリアムシノロンの注射(84%)は、切開・掻爬(87%)と有意差なく、温湿布(46%)より有効であったと。総合的に判断すれば、TAの注射が、簡単で痛みも少なくていい?
 
Ophthalmology. 2005 May;112(5):913-7.
Intralesional triamcinolone acetonide injection for primary and recurrent chalazia: is it really effective?

 この論文は、局所へTA注射(0.1 to 0.2 ml TA (40 mg/ml))が有効で、1-2回行えば、80%が治癒へ。残りは切開を選択。
 演者の主旨と異なりますが、TAの局所投与という選択をもう少し真剣に考えてもいいようです。


2、CO2レーザーを使用した眼瞼の手術(横浜:岡田眼科)
 この炭酸ガスレーザーを使った眼瞼手術のビデオはなかなか感動ものでした。ここまで出血しない手技を見せられると、メスを使う手術が過去のもののように思えるほどです。このレーザーは、焦点の合う場所で、切開し、少し距離をあけると止血作用があり、間合いをとりながら、切開しつつ止血もする。かなり熟練が必要なようで、両刃の剣?使い方を誤るととんでもないことになりそう・・・
 多数見せられたのは、ミュラー筋のタッキングによる眼瞼下垂の手術です。皮膚を切開すると、眼輪筋が見えます。この筋肉の線維は横方向に走っています。この奥に、aponeurosis があります。このよくわからない名前の組織は、上眼瞼挙筋が下方になるほど薄い膜状になって3層に分かれていて、筋肉の腱のような膜状組織で、aponeurosisと呼ばれています。この組織の中層と下層が瞼板に付着しています。この部分の奥にミューラー筋が見えるらしいのですが、ビデオでは非常に鮮明に見えていました。
 演者の論文によれば、『皮下の眼輪筋に達してその後瞼板を露出し,眼瞼挙筋と Müller 筋の間を引き続き CO2レーザーを使用して剥離した。このとき瞼板の上縁に横走する辺縁動脈弓と白い眼瞼挙筋腱膜(aponeurosis)を確認して Müller 筋を同定・・・・』とあります。挟瞼器を使わずに全く出血しないで、行えるので、ここまで組織の同定が容易かつ確実に行えるようです。
※臨眼 60(13):2037-2040,2006
 この手術の他にも、内反症手術(眼輪筋短縮)、眼窩脂肪ヘルニア(ワーファリン内服中)の手術も鮮やかでした。

ここで疑問。
 眼瞼下垂の主原因は、上眼瞼挙筋の付着部位の問題?挙筋の機能低下?それともミューラー筋の機能低下?上眼瞼挙筋は横紋筋で動眼神経支配。ミュラー筋(瞼板筋)は、平滑筋で交感神経支配です。Horner症候群の眼瞼下垂は、交感神経麻痺による眼瞼下垂で、2-4mm程度の軽度の眼瞼下垂を生じると言われています。だとすると、ミュラー筋のタッキングのみで全てが解決するというのは少し疑問?ミュラー筋のタッキングは、本当にミュラー筋だけをタックしているのでしょうか・・・?

3、眼瞼縫合と結膜嚢再建について(兵庫医大形成外科 垣淵)

 完全な形成外科の話なので、少し難しくて、「ほーっ」と言っているあいだに、終わってしまいました。
 ①上眼瞼形成、②内眼角形成、③重瞼と内眼角形成、④皮膚腫瘍、⑤下眼瞼内反、⑥結膜瞼板切開など・・・
 
4、ハイドロキシアパタイトによる可動義眼手術(横浜:深作眼科)

 眼科医は、時に、その後の義眼作成のことを考慮せずに、眼球摘出してしまうことがありますが、眼球を失った場合の精神的な苦痛を考えると、このパッと見、義眼に見えない動く義眼は福音です。悪性腫瘍でなければ、眼球摘出せずに、眼球内容除去に留め、眼球摘出の場合でも、眼筋もなるべく保存する。
 手技としては、コラーゲンコート付きのハイドロキシアパタイト(HA)の球(16か18mm径)を強膜内に入れ、強膜がなければ、直接筋肉を縫着して2か月ほど放置。その後、HA球にペグを装着し、義眼をのせるようです。ビデオで何名も見せられましたが、本当にパッと見、義眼とわからないです。
by takeuchi-ganka | 2008-05-11 13:48 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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