ドライアイ言われたら・・・・(副題:ドライアイと思っても・・・) (288)

 ドライアイには、実は厳密な定義があります。たかがドライアイといってはいけません。世界中のドライアイの専門家が集まって作った定義だってあるのです。
2006年のドライアイ研究会のドライアイの定義は、『 ドライアイとは、様々な要因による涙液および角結膜上皮の慢性疾患であり、眼不快感や視機能異常を伴う』で、診断基準としては、 1、自覚症状  2、涙液の異常  3、角結膜上皮障害。
この3つの基準があります。暇なので、順番に述べてみます。忙しくない人は読み続けてください。

1、自覚症状というのは、
①眼が疲れる。
(実際は、乾燥・異物感・痒みなどの不快感と同一であったりする)
②眼がなんとなく不快。
(乾燥・異物感・痒みなどがこう表現されやすい)
③眼が乾いた感じ。
④眼が重たい感じ。
⑤光をみると眩しい。
⑥眼が痛い。
⑦物がかすんで見える。
⑧眼やにがでる。
⑨眼がゴロゴロする
⑩眼が充血する。
⑪眼が痒い。
⑫理由もなく涙が出る。

など、これらの12の症状のうち、いつくかがあること(半分ぐらい?)。(皆さん如何ですか?いくつかありますよね?)ただ、これらの症状は、ドライアイに特徴的な症状ではないのですが、新しい診断基準から、この症状が入ったのです。

ついで、涙液の異常があること。
1、シルマー試験Ⅰ法 という涙の量を測定する超古典的な方法で5mm以下:要するに涙があまり出ないということです。
2、涙液層破壊時間(BUT)が5秒以下:このBUTを説明しますと、瞬きををすると、角膜上に薄い涙の膜ができます。この膜の安定性を見る簡便なテストなのです。涙の量が少ない、或いは涙の質が悪いと膜の安定性が低下するのです。通常、10秒以上安定しているのですが、ドライアイの人は、5秒以下と低下するのです。長い間眼をあけていられないという症状は、これが関係していると思います。簡単ですが、ある意味、最も重要なテストだと思っています。
この二つの簡単なテストのどちらかが陽性

最後に、角結膜上皮障害が、
1、フルオレセイン染色スコア 3/9以上
2、ローズベンガル染色スコア 3/9以上
3、リサミングリーン染色スコア3/9以上
このうち、どれかひとつを満たすもの・・・・・と言っても、2や3は特殊なので、普通は、1のフルオレセイン染色で陽性。つまり、この染色で証明される角膜・結膜の上皮の障害が一定以上あることが条件となります。(最近は、イエローフィルターで見ることで、結膜上皮障害を見ることが容易になりました。)

以上の3つ(自覚症状、涙液の異常、角結膜上皮の障害)を満たせば、ドライアイと診断することになります。こう書くと、何だか診断が難しいようですが、実はとても簡単なのです。

 フルオレセイン染色を行って細隙灯顕微鏡で眼を見ます。
① 眼の中にたまっている涙の多くは、角膜と下眼瞼が接する部位に貯まります。ここを涙液三角と呼び、染色すると明瞭に見ることが来ます。この高さが低ければ、涙が少ないですが、高ければ涙は少なくないのです。
② ついで、BUTをみます。これも、フルオレセイン染色後、瞬きしてもらい、眼を開けた状態で、角膜上の涙液膜が何秒ぐらいでブレイクするか見るのですが、非常に簡単です。この時に、角膜上を広がる涙を見ていると、その粘稠度が分かります。水が不足してネバネバしているのか、水分十分でサラサラしているのか。密かにポイントと思っています。
③ 最後に、角膜・結膜上皮に障害があれば、フルオレセイン染色されるので、ほぼ同時に判定可能です。このとき、ブルーフリーフィルターがあれば更に容易です。ポイントは、角膜の障害よりも、結膜の障害が強いことかな。

この①、②、③は、1分もあれば判断可能でしょうか。これだけで、ほとんどのドライアイは検出可能と考えています。加えて、この所見が原因と思われる症状があるかどうかです。
明らかにドライアイ所見があっても、症状が何もないことは結構あり、そんな場合、それほど積極的な治療は必要ではないでしょうし、ドライアイ所見が軽くても、症状が強ければ、治療は必要でしょうから、症状の有無は非常に大きな要素となります。
実際、ドライアイ所見が強いのに、症状に乏しい人や、逆に、所見は軽いのに症状が強い人は多いのです。最初に述べましたが、あの12の症状は、ドライアイに特徴的な症状ではなく、パソコン端末作業従事者や、事務職の人、コンタクトレンズユーザーに多いようで、どうも、ドライアイそのものは、軽くても、複合要因でドライアイ症状が強く出ることの方が多いようです。だから、ドライアイの治療だけで、全てが解決するという事は少ない印象を持っています。


 ドライアイと言われたら、ドライアイの要素を持っているのは確かでしょうが、
 ドライアイと言われても、ドライアイ感はないこともあるのです。
 ドライアイ感があっても、ドライアイ要素が少ないこともあるのです。


 シェーグレン症候群のような重症のドライアイの場合は別にして、この世に存在する非常に多くのドライアイ感を持っている人の、その愁訴の原因分析は、それほど簡単でないことも多いのです。なのに、いったいどれほど多くのドライアイ感を持つ人が、正しい診断を受けることなく、意味のない市販の点眼をしていることでしょうか。調査したら、凄いことになったりして・・・
by takeuchi-ganka | 2008-07-06 09:56 | 涙について | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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